カテゴリ:主人の肖像
ちょっと間があきましたが、ようやく12月3日の出来事の続きを書きます。
かなりふてくされながらメトロの地下道に入った私と、ディノ。 ホームが近づいてくると、急に主人の顔が曇りだし 「あの人に会っちゃうの、嫌だなぁ」 という発言が聞こえてきます。
「あの人」というのは、よくこの駅のホームに居る初老の女性の事。 フランスには様々なタイプの物乞い(ただ座っていたり、近寄って声をかけてきたり、何か芸をしていたり)が居るのですが、彼女は「近寄って声をかけてくる」タイプ。 ディノは女性に甘いからか、それともおしゃべりだからか、この女性と顔見知りなのです。 でも実は共通の話題がない為いつも表面的な挨拶しかできないのに、電車が来るまで彼女にかかりっきりにならざるを得ないので(しかもこの時間は電車が少ないし)、「あの人に会うかも」と思うとちょっと憂鬱になってしまうそう。 (この辺、クールで冷たい都会人ですね私と一緒) その女性は笑顔と愛想がとても良くて優しいので、いったん話が始まってしまうとそんな気分はディノから吹き飛ぶのですが。
この日もホームの椅子に座っていると、彼女がこちらの方に歩いてきました。 でも私達に気付いてか(遠慮しているのかも?)それとも気付かなくてか、こちらを見もせず通り過ぎていきます。 あぁ今日は挨拶しないのかなと漠然と思っていると、なんと憂鬱がっていたはずのディノが急に立ち上がり、彼女の方に歩み寄って声をかけました。 そしていつも通り、2人で何かの話をしています。
どうしよう、と一瞬考えてしまった私。 というのも今から1年半ぐらい前、私との結婚が決まったばかりだったディノはこの女性に 「ぼく、もうじき結婚するんです!」 とつい、気合の入った報告をしてしまったらしいのです。 (ディノ、舞い上がっていたの?? もちろん、その女性はとても喜んでくれたそう。) そしてその半年以上あと、私は 「ぼくの妻です」 と、彼女に紹介された経緯もありました。
・・・このまま私だけここに座っているのもよくないよね、よし!
立ち上がってディノ達に合流して挨拶すると、その女性は優しい満面の笑みで迎えてくれます。 (とても気のいい方なのだと思う。)
ちょうどそこに、電車がやってきました。
ディノと握手をしてから、私にも手を差し出す夫人。 私も手を出して握り返します。
・・・そこまでは良かった・・・・・。 私がその後見たのは・・・・・
小柄な体から、にこにこした顔を持ち上げてくるその女性の姿。 ・・・これは、どう考えてもビズをしようとしているのよね・・・・。
ビズに対するアレルギー(?)が急に甦り(たぶん)顔をこわばらせつつも・・・・私はなぜか(本当にたまーにだけど)Noとは言えない日本人!! なので・・・ビズをしました・・・・私はどうしても顔と体がひいてしまったので、向こうが一方的に私の頬に唇を合わせてきただけだったけど・・・・。
やってきた電車に乗り込むと、ディノに対する怒りがふつふつと沸いて来る。 落ち込み気味の毎日だからこそ、せめて今夜はリラックスしようと思っておでかけしたのに、食事前も後も待たされるし、親しくもなくしかも(失礼な言い方だけど)いわゆる「物乞い」の人からは、私の苦手なビズを受けるし、これは一体なんなのよーーーー!! あまりの腹立ち具合に、車内で思わず悪態をついてしまいます。 (なんだか斜め向かいの男性がこちらを見たような?)。
私のあまりの怒り具合に珍しくディノも逆ギレし 「なんで、ぼく達の会話に加わりに来たんだよ! あのまま座ってりゃ良かったのに!! みにかーがこっちに近づいてきた時、ぼくはムカついていたんだ!!! 2度と『こっち』に来るな!!!!」 と、謎の抗議をしてきます。
・・・・後になって言われてみればその通りなのだけど、私達の前を素通りしようとする彼女を追わずには居られなかったディノ同様、私もあそこで一人だけしらんぷりしている事ができなかったの。 2人とも偽善者・・・。
家に帰ってからもぷりぷりしていた私達だけど 「もう(あなたなんかとは)今夜しゃべらない!」 とお互いにタンカを切ってからは、ディノはテレビに、私はネットに熱中し、気付いた時にはお互いの腹の虫が治まっていたのでいつもの関係に戻ってから就寝できました。 理不尽にイライラしてしまう時は、お互い別の事に集中するのもいいみたいですね。 (勉強になりました。)
その翌日ディノと、知り合いのある日本人女性についての話をしていました。 内容はといえば、その女性がとても控えめな性格でなかなか『イヤ』と言えない事についてだったのだけど、私が冗談で 「そう、私みたいにね」 と言うと、ディノが真顔になりました。 そして・・・・・
「ううん、みにかーはもっとひどいと思うよ。 昨日、ビズを拒まなかったのにびっくりした。 ぼくですら、ビズからは逃げたのに」 と言うではありませんか!!
夫よ・・・ようやく分かってくれましたか・・・・そう、私はNoとは言えない大和撫子なのです。
前夜の出来事を思い出し、あまりいい気分でなくなってしまった私は自分を慰めようと 「(まぁ、でも)あの女性は『物乞い』行為をしているけれど、いつも身ぎれいにしているよね。 (だから、私もあのビズにこだわるのはよそうっと)」 と言うと、ディノは・・・・
「でも、彼女からイヤなニオイがするのは残念だよね」 と返してきました。 ・・・・そうなんだ・・・がっかり・・・・私はもう、自分で自分をどう慰めていいのか分からないよ・・・・。
以上、色々な意味でありえないくらいイケてなかった外出の記録でした。 もーやだ、この人と出かけるの・・・・。
(写真は、この間の日記にもアップした「ピザ・ピノ」です。この日記に「ピザ・ピノ」のふだんの様子をアップしていますので、比べてみてください。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.12.08 08:45:47
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