プーさんが気になるお年頃
KCCに向かうバスには日本人観光客が結構乗っていた。最近はいろいろなところで紹介されているし実際に評判もいいんだと思う。コンドミニアムに滞在していなくてもホテルのお部屋で食べられそうなフルーツやドリンク、ランチ・プレートもあるし、間違いなくMade in Hawaiiのお土産も調達できる。でも過大な期待はするものではない。割と規模が小さかった。(ミニミーが勝手に想像を膨らませ過ぎたの意。)
バスの中でひときわ目立っていたのが日本人観光客の母子。ママは膝の上に3歳くらいのボクを乗せていた。「車内が混み合っているから2人で一人分のシートを使うなんてなかなか気が利く」 と感心したのもつかの間、混雑のために景色が見えなくなって退屈したボクはバスの中のポール(金属製のつかまる棒)をよじ登り始めた。ミニミーはすぐ横に立っていたからボクに押されたり蹴られたり手を握られたり(ミニミーはそのポールにつかまっていた)。ママは「やめなさい。」とは言うものの、その言葉は心からやめさせようと思っていなさそう。最近そういうタイプ親御さんが多いような気がする。ママも知ってか知らずか、ミニミーに謝りもしなかった。
普段から日本人の躾、特にお子ちゃまの躾の廃退について危惧しているミニミーだったけれど、ここはハワイ。そんなことは気にしないようにしよう。いらいらするためにハワイに来たんじゃない。
ファーマーズ・マーケットを堪能し、ワイキキに戻るためにKCCの前でバスを待っていたらあの母子が近づいてきた。またミニミーと同じバスに乗るらしい。バスに乗ると私たちは空いている席にばらばらに、彼らは優先席に座った。ご存知優先席は運転手さんのすぐ後ろにあって、進行方向ではなくバスの中心に向かい合う一列のシート。さすがに帰りは疲れてしまったのか、ボクはおとなしくママの膝のうえに座っていた。
「ママ、ママ。」 ボクの声が聞こえてきた。「どうしてあのおばちゃんのオナカはあんなに大きいの?」 ママの声は聞こえない。「ママ、ママ、ママ、どうしてあのおばちゃんのオナカはあんなに大きいの?」 どうやら向かいに座った外国人女性の豊満なオナカが気になる様子。「ねぇ、ママ、どうして?」「ママ、ママ、ママ、どうしてあのおばちゃんのオナカはあんなに大きいの?」「ねぇ、どうしてぇ?」 ボクの声はどんどん大きくなったけれど、ママは窓の外を凝視して完全にボクを無視していた。
「プーさんのオナカみたい。」 最後にそうひとこと言ってボクはあきらめた。
思い出しても顔がゆるんでしまうノン・フィクション。みんなでバスを降りてから大笑い。一部始終をいずれ成長したボクに見せてあげられたらおもしろいのに。そういえばミニミーも子どものころお年寄りを指さして「あの人もうすぐ死ぬんでしょ?」 と言って母を困らせたって聞いたことがある。子どもってもおもしろい。
「出会った笑顔編5」(最終回)もあります。