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October 26, 2003
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前から二人の間で討論をしていてようやく出た答えを、今日彼は上司に伝えた。なんてことはない。ノリノリが現在働いている食品卸売り会社を辞めて、その会社のオーナーをしているレストランでマネージャーとして働くという決断だ。前からノリノリが考えていた転職先だ。実際その会社とレストランは同じ場所に位置しているので勤務先が変わるだけではなく、ただ所属先が移動するだけ。しかし会社からレストランへの移行は、会計役から現場のマネージメントに職種が変わるわけで今後のキャリアを大きく変える。不安はかなりそこにあったが、ノリノリは体育会系で毎日のデスクワークがとても辛いことも私は知っていた。身体を動かし、持ち前の人懐っこさで接客をすればきっといい方向に道が開くだろう、と信じることにした。

ここにはまた別の問題があった。

その食品卸売り会社は主にオーガニックスーパーで寿司のチェーンを出していて、日本人ばかりが働いているばりばりの日系会社だ。社長はレストランのオーナーだが、実質自称CEOのとある青年がその会社の経営を仕切っている。現在のレストランの社長は女の方だが以前彼女の旦那が社長だった。その青年が暴走族上がりで髪をモヒカンにして留学していた時に先代の社長と出会い、パンクなその青年をずっと引き連れその会社を大きくさせたのだった。そしてある日突然、その社長は自殺した。

先代の社長が自殺した4年前の当時、私はそのレストランでアルバイトをしていた。顔なじみだったのでとても驚きショックを受けたがそれよりも、奥さんの泣き腫れた横顔をお葬式で見た時は本当に辛かった。

問題はそれからだ。

奥さんはレストランに以前から従事していたので会社のことは余り分からなかった。知っているのはその青年だけだ。大黒柱を失った会社はその日から不安定になった。青年は、留学の前にも後にもきちんとした企業で働いたことはまずなかった。レストランで時折寿司を握り職人もし、また先代の社長について事業を立ち上げた彼は「オフィス」というものの認識はあまりなかった。スーパーマーケットで寿司を握る職人を集めて現場で握らせたり、また小さな調理場を借りて数人の寿司職人と大量のパックの寿司を作り、取引先のスーパーに卸すだけであったのであまり意識する必要はなかった。

ノリノリがやっと大学で財政専攻を卒業した時に青年は、事業拡大を見越してオフィスを立ち上げるからぜひ働かないか、と食事を餌にノリノリを誘った。ノリノリはそのレストランで5年ほどアルバイトしており、先代の社長にも恩があったので喜んで引き受けた。

当時の彼らの「オフィス」と呼ばれる場所は青年とノリノリしかおらず、静かでがらん、としていた。その頃取引していたのは全部で5件ぐらいだったから、卸すのも楽だったし寿司職人がいくら人のいうことを聞かない人々でも一応まとめるにはまだ難しくなかった。ノリノリは書類を全て整理し、従業員への給料や健康保険、寿司の売り上げの分析など等をこまめにまとめることにした。青年の口癖は「オフィスは金を作っていない。現場(職人)が金を作っているから現場の声が第一だ。」で、現場の職人達のわがままをいつでも聞くよう指示を受けた。

その後2年の間に青年の功績で、取引先のスーパーマーケットが30件程に増え、それと同時に寿司職人の数も200人近くになり、オフィスにも3人、人が足された。寿司職人はトップ以外中国・韓国・インドネシア・ベトナム系が多いが、オフィスは全員日本人だ。青年は「お前」とか「あんた」とかで人を使い、「あのじじい」とか「ばばあ」とかを使ってオフィスで堂々と人の陰口を叩き、事業が拡大しても規律を作らないで「アバウト」が良いと言うのはいいが寿司職人達のわがままを受け入れすぎていつでも全体がまとまらない、とそんなオフィスが出来上がった。200人の従業員管理が大変で、職人全員のわがままなどいちいち聞いていたら例外が出すぎて仕事がまとまらないし給料・保険管理も大変になるのだが、青年は、オフィスは金を作っていないのだから現場の言うことを聞け、という主張を変えなかった。

彼一人の権力で会社を仕切り、お金がある分人選を注意深くしないで気軽に人を雇い、人使いも荒く、新商品の企画も現場の従業員管理も全て「アバウト」に現場マネージャーに任せ、問題があったら彼の気分と判断で解決を下しと、オフィスの管理を重視せずに彼は事業拡大のみを必死に行った。上昇中の中小企業に良くあることだが、目先の利益に集中して中がすかすか、いわばそんな状態だ。そしてこれはアメリカにある日系企業には良くある話でもある。付け加えてオフィスの勤務時間は一日10時間以上だ。

そのうち青年は会社を仕切っているが上、自分をCEO(最高経営責任者)を勝手に呼ぶようになった。確かに彼が好きなように管理をしているわけだが、実際大きな経費や新しい調理場などを購入する時、その権限は社長のレストランオーナーの彼女にあり、彼女が経営に手を出さないのをいいことに打出の小槌のように資金を出してもらっていた。そしてそのうち、「これはおれの会社だから」「(社長じゃ)分からないから。」「(彼女が社長だけど)実際俺が社長みたいなものだから」と人に公言し始め、彼女に事業状態を語らず報告しなかったり、横柄な態度にでたりと感謝に欠ける行動を取り始めた。

そんなわけで、働いて少々会社が拡大した直後からノリノリの役目は「会社の事情を社長に伝えること」であった。その横柄な態度のせいで青年と女社長の仲はすこぶる悪く、しかしノリノリも決して青年の態度に共感できなかったので社長にもっといろいろ考えてもらうべく、青年が伝えない様々な事情を報告した。(いわばちくり。)もともとノリノリは社長とも仲が良かったので、世間話がてらにそんなことを話せた訳だが。

彼女は彼にはお給料とボーナスはたんまりとあげていたが、そのうち積極的に青年に経営を正したり、お金の行き先を確かめるようになった。そのうち会計士監査など第3者とも協議して、青年が要求する経費をきちんと明確にしたり必要性を問うようになった。「アバウト」なCEOが会社を仕切っていたので育ったのは全て「アバウト」な幹部の寿司職人や現場マネージャーが出来上がりそれが200人以上の従業員を仕切るようになり、目ぼしい信頼のおけるリーダーも(ノリノリも含め・・・)見当たらない。かといって地元では名のある日本食レストランの経営で手一杯の彼女はついに決断を下し、2週間前青年に解答期限付きの質問を突きつけた。

その会社をレストランと切り離し、青年が自分で買って自分の会社にするか。
その会社を買ってくれるスポンサーを探して、あらたな社長のもとで経営するか。
どちらの選択にもならなかった場合、解散するか。

1億円もするニュージャージーの調理場を勝手に購入することを決め、女社長にいつものごとくサインをねだっていた彼はこの質問に固まった。それからというもの、彼の態度は一変し従業員にも親切に接するようになり、毎日ため息ばかりなのだと言う。しかも彼はつい先々月奥さんの故郷スウェーデンに一軒家をローンを組んで買ったばかりなのだ。

ノリノリは裏事情は全く知らない振りをして、青年に転職の決断を伝えた。他の従業員から聞いた話だが、もしニュージャージーに新しい調理場とオフィスを買った場合、青年はノリノリをそのレストランに置いていくつもりだと言っていたそうだ。どちらにしても彼の中で決断も出ているなら話は早い。

これらの決断に対する社長と青年のミーティングは来週の月曜日に行われる。





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Last updated  August 4, 2004 05:58:27 AM
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