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テーマ:たわごと(26878)
カテゴリ:自分でいること・欝など
先日携帯に「XX工務店ですか?違うかもしれないけど?」とやけに丁寧な間違い電話がかかってきた。「違うと思いますよ?」と答えると「あ、そうですか…すみません…」とその人はアメリカ人とは思えないくらい丁重に電話を切った。なんなんだろ、と思った瞬間、あ、と思い出したことがあった。
見慣れない市外局番をインターネットで調べるとウェストバージニアからだった。テネシーからはちょっと距離があるけど間違いない。あの人は多分、仕事の都合か何かでそちらの方に出向いていたんだ。確か、そういうことがある、と話していた…。 浮気はすぐばれた。ばれた時には既に終わっていたのだが、ある意味ばれてほしかったのかもしれないし、それを旦那がさっと感で受け取ったのかもしれない。携帯電話の請求書をオンラインビルに切り替えたのだが間に合わず、ペーパーで来たところをなんとなく隠そうとしたら旦那はいつも見ない請求書を突然見たい、と言い出した。大体テネシーから何回も電話がかかってきたり電話しているなんて異常なので追求され、うそもへたくそな私はあっけらかんと「知り合った人と電話してた」と答えるしかなかった。 *** その頃は旦那が12時間労働でほとんど家にいないで、帰ってきたら仕事の愚痴をいつも話していた。毎日親身になって愚痴を聞いて旦那の転職を願い、私達の幸せを願っていた。新しい家のローンの手続き、リモデルの手続き、生命保険の手続き、そして当選したグリーンカードの手続き、タックスリターン、など必要な手続きは私が全て請け負って、旦那に相談してもあんまり役に立たず、とにかく自分を頼りに初めてのことに次々と挑戦した。仕事帰りに子供を1時間のドライブで迎えに行き帰宅、夜の7時から晩御飯を作り始めて食べるのも8時がやっと、9時には寝かせて、旦那が帰ってくる夜の11時までが私の時間。週末も旦那が働いているので子供の面倒が必要だが、体の疲れがピークで一日動けず、でも子供は元気だから色々しなければいけないし、動かない体に鞭を打って子供の相手をしていた。 自分の時間に見つけた楽しみはオンラインゲームだった。完全に一つの別社会がそこに存在していて、人々は働き、お金を稼ぎ、遊び、旅行をして、私は仕事と子供との往復で遊びにもいけない状態であるのにゲームの中で広い世界を思いっきり旅行して、人々と話して遊んで、好きな方法でお金を稼いで買い物して、と現実にできないことを思いっきりできるところが気に入った。ゲームをしていくうちに色々な人々と知り合ったが、類は友を呼ぶ、とあるように私は数人の「話せる人」とであった。 敵を殺したり、木を切ったり、運動場を駆け回ったりとそんなことだが、現実問題を一切忘れて一緒に色々なことをしていくうちにそれが楽しくなって、家庭のこととかパーソナルなことも仲の良くなった人とはとことん話すことが増えた。音声で話していなくても相手の性格とかやさしさとか見えてきて、今の辛いこととかお互いの家族が抱える問題点とか、そんなことも話せるようになっていくうちにオンラインした時にその人がいないと寂しく感じたり、逆にいるととてもうれしく感じたり、そんな感情の変化が増えた。そして毎日毎日繰り返していくうちに感情が高ぶって、一人がぽろり、と「好意」について語ると私も一気にその人の気持ちに引きずられた。 自分にはまだ人を幸せな気持ちにさせる価値があったんだ…。 実際そんなことは忘れていた。子供と旦那と家庭の面倒で精一杯で、そんなことが起こる前の昔、私は人々をちゃかしたりかわいいことをして楽しい時間を作っていたことを忘れていた。親身に話を聞いたり、相手を楽しませて男女構わず皆に好かれるのが楽しかったり、そしてそれが自分の喜びだったりで、これからの人生子供と旦那をうまくやっていけるように頑張るしかない、と肩肘張っていた私に「好意」を語ってくれた人はぼこっと風穴を開けてくれた。その人を話をすればするほど昔の自分が蘇ってきて、私はまだ他の人に愛されるキャラクターであるのだ、と自信がでた。見た目とか全く抜きでオンラインで話すだけのキャラクターで人を惹きつけることができるのだと、自分の中身、というものに感動さえした。 彼も感動していた。感受性が強くてやさしい性格であるが為に強気な他のアメリカ人達に傷つけられることが多く、子供を心から愛しているけれどもパートナーへの感情は義務でしかなかった。結婚した頃のパートナーへの愛がまるっきり思い出せなくなって話すのも苦痛で、でも自分の子供が大切で彼を安心させたいが為に無理していた。お互いセックスとかそんなのは全く興味がなくって唯私達はオンラインの別世界でそんな周りへの感情の配慮も気にしないで画面で話したり、一緒に何かして時間を過ごせることがうれしくて、ひたすらゲームの時間を見つけては一緒に遊んだ。 電話で話したい、と言ったのは彼だった。 確かに旦那は殆ど家にいないから可能だったが、かなり戸惑った。深入りすればするほど終わりが痛くなる。終わるのは分かっているんだ、だからその痛さを心配する。メールで伝えても彼にはその感情は止められなくて、結局彼は私の名前で電話番号を調べて電話したい、と伝えてきた。 ま、いっか。 なるようになれ、っていうのは私のやり方だ。オンラインの出会いは現実とのギャップが非常にあるので色々な危険性について語ったが、相手の気持ちが強ければ強いほどそんな注意は一向に耳に入っていないようなので取りあえず相手の思うようになんとかやってみた。電話は実際は成功した。お互い相手の声が聞けて、最初の一回は緊張したがまた声が聞きたくなって二回目からはもっと気楽に話せるようになった。それもうれしくて電話がかかってくる度、どきっとして、うれしい気持ちで一杯になった。 なんだかんだ言っても相手は、押しが強い自分の意志をとにかくリクエストして通そうとする、アメリカ人だ。ここまで来たらやっぱり、会いたい、と言いはじめた。かなり年上の人だったしいまいち私は自信がなかった。家族でメインにバケーションに出るので彼らを飛行機で送り出して、仕事だからと自分はテネシーから車でフィラデルフィアに寄ってメインまで行くことにすれば会えるから、とかなり具体的な計画まで言い始めた。 微妙なタイミングで旦那は仕事を辞めた。転職活動も何もしないでとにかく仕事を辞めた。一緒にいる時間が増えたので一気にゲームをする時間が減り、それからは仕事中に電話がかかってきたがなんとなく疲れてきて、電話をとるのも億劫になってきた。そのうち「僕達の将来についてどう思ってるの?」「嫌いならそういってくれよ」とか、彼自身も「子供の為に結婚生活は続ける」とか言い張っているのに将来なんてありもしないのにそんな質問とか、好きだといっているのに「嫌いなら…」とわざと否定的なことを言って私に好きだと言わせる態度とか、ますます疲れてきて、あれほど「将来なんて考えない方が仲良く長くゲームで遊べるよ?」と伝えているのに何か結論を出そうそしていて、そんな結論が欲しいなら、と最後に伝えた。「将来がないんだから、結論が欲しいなら、もう止めよう。もう悩まなくていいよね?」 話すのを止めた一ヵ月後の携帯の請求書に彼の番号が載っていて、旦那がそれを見たとき不思議な気分だった。確かにその彼は私に自分の価値を思い出させてくれた、そして心の底からうれしかった、毎日が楽しくてしょうがなくなった。現実旦那は仕事を辞めて私と一緒にいて、夫婦の会話がもっと増えた。将来だとか嫌いだとか好きだとか、そんなことを話さなくても私のことを愛してくれていて子供との将来をあれこれ話し合って、一緒に食事を作ったりして、毎日を小さな幸せで歩み始めた。当然、旦那は起こったことに激しくショックを受けていた。私には言い訳も何もなかった。ただ、その人が自分を取り戻させてくれたことは事実だし、結局何か関係を持とうとしたわけでもなく終わったのも本当で、これ以上自分ではどうしようもなくて、なるようになるのをただひたすらじっと眺めるしかなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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