【フィリピン】外国人看護師の受入凍結、米に再考要請 12月15日(水)
米国政府がこのほど、外国人看護師の査証申請の審査手続きを来年1月1日から事実上凍結することを決めたことで、下院の専門委員会から米側に再考を促すため、政府の働き掛けを要請する声が上がっている。米国務省は現地時間の8日、2002年1月以降に提出されたフィリピンをはじめとする外国籍の看護師の入国申請について、次の発表が行われるまで、審査手続きを事実上凍結することを明らかにした。マニラブレティン紙によれば、これにより従来は60日間で済んでいた申請から発給までの手続きが数年間先送りされることになるという。フィリピンの下院労働雇用委員長を務めるサンボアンガデルノルテ州選出のバリナガ下院議員は、今回の米政府の決定が、自国の看護師を国際市場へ送り出しているフィリピンにとって大きな打撃を与えるとの見方を示す。その上で、「われわれにはこの問題に対処するための十分な時間が与えられるべき」と述べ、外務、労働雇用の両省に対し、フィリピン人看護師の質の高さやこれまでの米国の病院での就労実績を考慮しフィリピンを例外扱いするよう直ちに米政府に働き掛けることを要請した。同議員はまた、国内の看護教育施設における米国行きを意識した教育体制そのものへの影響も懸念している。フィリピン看護師協会の統計によれば、看護学校などへの入学者数は1999年で約2万人だったが、2003年は倍の4万人に達しているという。一方、米国看護師協会はこの決定について、外国人看護師の入国が制限されることで、国内看護師の訓練と育成に再び注力し、看護師不足の問題を解消できると期待を示している。当局の試算では、米国では2010年までに約27万5,000人の看護師が不足するとされる。ただ、ワシントンに拠点を構える民間シンクタンクのエコノミスト、レン・ニコルス氏は、フィリピンは長年にわたる重要な看護師輩出国であり、受け入れの凍結で米国の病院は短期的には痛手を被ると指摘している。■給与水準等しくブラカン州選出のシルベリオ下院議員は、フィリピン人看護師は国際労働市場において等しく扱われなければならないと主張する。その上で、今後需要が高まる国・地域として日比経済連携協定(EPA)が大筋合意に達した日本をはじめ、中東、ノルウェー、オーストリアを挙げ、米国の病院で得られる金額以下に給与を設定すべきではないとの考えを示している。同議員が示した資料によると、フィリピン人看護師の米国での平均給与は月に3,000~4,000米ドルになるという。(NNA)