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カテゴリ:手塚治虫とマンガ同人会
~山形マンガ少年~ 第三部 『熱い夏の日』 ●第8回 素質開眼 その2 第905回 2007年3月11日 「最近、自分行動がいろいろな形で周囲から評価されている」 井上はそう感じた。 「少年ブック」の赤塚不二夫マンガ教室での入選。「少年マガジン」「巨人の星」のテレビ放映記念主題歌募集の佳作入賞。そしていずれも誌面に井上の作品が掲載された。それを見た同級生からは 「マガジンに載っていた『井上はじめ』ってお前だよな?」と質問を受けた。 それらの影響もあって、美術部の部長にも選ばれることになった。 井上は美術部に所属していたといっても、虚弱体質の体で学校生活の一日をようやく過ごしていたようなもので、部活はほとんど欠席していた。それでも先輩で部長だった桑野博や刈田先輩がよく面倒をみてくれたから、美術部には籍を置いていたのだった。それが三年生でいきなり部長とは本人が一番驚いた。 井上は二年生の終わりごろから校内で目立ち始めてきた。少し壁新聞にエンタープライズ入港反対のマンガを描いたときには、あの大人しい井上が政治的な動きをしたのかと、校長の寒河江直らが問題視することもあった。 井上が目立ち始めることで、部員たちは井上を部長に押し上げることになっていった。 それからもう一つ、美術部顧問の教頭小林勇が転勤になることになり、井上は送別の額を贈ることを部員に提案した。そして部員からお金を集めて額を贈ったことで部長に推薦する決定打になった。 井上はまさか部長になるとは思ってもいなかった。しかし、同級生の寒河江や長沢純一らに押し切られた格好で引き受けてしまった。 「……部活にも満足に顔を出さないで、どうして部長なんだ」 そのとおりで、誰も美術部での井上の作品を見た覚えはなかった。作品をあまり描かない美術部の部長誕生だった。 いつも井上は優柔不断て、自分の考えや意思とは反対の方向や結果になってしまうのだった。 そんな矢先、同級生の美智江が井上に声を掛けてきた。 「はじめくん!お願いがあるからお昼が終ったら、私の話を聞いてよ、わかったァ?」 「……え~っ……」 井上はまた美智江に半強制的に用事を言いつけられるものだと思い、できるだけお願いは訊きたくはなかった。 「いいね!」 美智江はそう言って自分の席に戻った。 2006年 9月16日 土曜 記 2006年 9月17日 日曜 記 2006年 9月20日 水曜 記 (文中の敬称を略させていただきました) >~山形マンガ少年~ 第三部『熱い夏の日』 ●第8回 素質開眼 その2 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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