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カテゴリ:手塚治虫とマンガ同人会
~山形マンガ少年~ 第三部 『熱い夏の日』 ●第10回 似顔絵 第907回 2007年3月24日 井上は自宅に帰ると早速似顔絵を描き始めた。 鉛筆をケント紙を取り出して下書きをする。 井上がモデルの先生の顔を思い出しながら、描き易い顔から描いていった。一年生の時に担任の先生だった工藤修一を描いた。どうも童顔になり、流行(はやり)の巨人の星の星飛雄馬に似てしまう。次は新任の先生の二宮美夫を描いた。これも巨人の星の登場人物にどこか似てしまう。 「どうしてオレは巨人の星を意識してしまうのだろう」 と、井上は自問自答するのだった。 先ずは下書きを完成させて、明日は美智江にチェックをお願いすれば、彼女のことだから「これはダメ、そこはこうしなさい」と言ってくるだろう。そう考えると気楽に鉛筆を走らせることができた。 この日は、春というのに夏のように朝から陽射しが強かった。 井上は三日間掛かって、美智江から依頼された似顔絵の下書きを完成させた。 寝不足の井上は七時になってようやく起きた。遅くても七時二十分には自宅を出ないと遅刻をする。着替えを済ませ、顔を洗って、食事を急いで済ませると、似顔絵の原稿を丸めてビニール袋に入れてカバンの中に入れた。 教室に着くと井上は美智江に声を掛けた。 「……はよう」 「はじめくん、いまなんて言ったの?朝からシャキッとしなさいよ~。そんなんじゃ今日一日生きていけないよ!」 「……お、お、おはよう。これ下書き……」 井上は似顔絵の下書き原稿を美智江に渡した。 「ハイ、おはよう!どれどれ……」 そう言って、美智江はビニール袋から原稿を取り出した。 井上は自分の席に腰を掛けた。美智江の席は一番前で、井上の席は美智江の席から二列後ろだった。美智江はすぐに井上の隣席に座って、下書きについて感想を話した。 「はじめくん!この二宮先生はそっくりだわ!工藤先生は星飛雄馬みたいだわ、もっと大人っぽく描いて。それからこの先生は現物よりカッコ良すぎるからもっと崩していいの」 そう言って一人ひとりについて率直に意見した。 「…………」 「はじめくん!メモしないで大丈夫?わかっているの?」 「…………」 井上は黙って美智江の意見を頭の中に記憶した。 (文中の敬称を略させていただきました) >~山形マンガ少年~ 第三部『熱い夏の日』 ●第10回 似顔絵 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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