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カテゴリ:手塚治虫とマンガ同人会
~山形マンガ少年~ 第三部 『熱い夏の日』 ●第38回 漫画集団 第970回 2007年9月27日 手塚治虫と同行スタッフの大村、佐藤が山形空港からタクシーで三十分ほどで山形市の県庁近くにある山形新聞放送会館に着いたのは夕方になろうとしていることろだった。 手塚らは今夜から開催される「花笠祭り」の特別ゲストとして招かれていた。 手塚の他に文藝春秋らで活躍しているコママンガを描いているマンガ家たちが所属している「漫画集団」のメンバーが十数人いた。 彼らは既に特急列車で着いており、山寺や山形市周辺の観光地を周ってからの参加だった。 手塚らが案内されたのは会館内の来賓室だった。 ドアを開けると漫画集団の会長を務める横山隆一らが着物姿で談笑していた。 「やあ、手塚クン。相変わらずの売れっ子だねえ。キミだけ単独行動だよ!ハッハッハッ……」 横山隆一が言って、手塚を迎えた。 手塚はベレー帽に手をやり、お辞儀をしながら、 「先生たち、遅れて申し訳ありません。なんとか間に合うように努力したのですが、遅筆がたたり今頃になりました」 と、謙虚に言った。 それはマンガ界の大御所たちへの尊敬と賛美でもあった。 このメンバーには少年マンガや劇画を描く者はいないから、手塚にとっても気楽なメンバーであることが正直な気持ちでもあった。 「手塚クン。早く着替えな!?」 と、着物を持ってきたのは手塚の盟友馬場のぼるであった。 山形の夏の夜は暑かった。 駅前から七日町、十日町、そして県庁前の山形新聞放送会館までのいわゆる山形市のメイン通りには、花笠祭りを見ようとする見物客が溢れていた。 商店街では花笠祭りを彩るように飾り付けをしていた。 それが街並みをいっそう華々しくしていた。 車道には、踊り子に扮した数百人の山形市民が、浴衣にタスキをして大きな花笠を振り回して見事に踊った。 ヤッショオ~ッ、マカショ~ッ、シャンシャンシャン!! 花笠音頭に合わせて、観客も踊り子もいっせいに相槌を入れた。 その声は山形の夜空に響いた。 横山隆一や馬場のぼるら漫画集団のメンバーたちは、飾り付けたトラックの荷台のステージに乗り込んだ。もちろん浴衣姿だった。 「フクちゃんの横山隆一先生」、「ブウタン、バクさんの馬場のぼる先生」、「アトミックのおぼんの杉浦幸雄先生」とマンガ家が描く作品名と作家名が短冊に見せた大きな看板がトラックを飾った。 「鉄腕アトム 手塚治虫先生」 子どもも大人もその短冊を見てどよめいた。 そして大きく頭を揺らしてトラックステージの手塚を探した。 しかし、誰も手塚の姿を見つけることはできない。 観衆たちは騒ぎ始めた。 「手塚先生がいない!?」 「鉄腕オサムはどこにいるんだべ~」 声があがるたびに、トラックステージの馬場のぼるが応えるよう観衆に言った。 「そこそこ下で踊っているひょっとこ被りの人だよ~ッ」 そしてトラックの傍で踊っている手ぬぐいを被った男を指した。 手塚治虫はベレー帽の替わりに手ぬぐいをかぶり背中を猫背にして踊った。 それはとても恥ずかしそうだった。 2007年 7月 9日 月曜 記 2007年 7月13日 金曜 記 2007年 7月17日 火曜 記 この回の物語は作者の創作です。 イラスト・たかはし よしひで (文中の敬称を略させていただきました) ~山形マンガ少年~ 第三部『熱い夏の日』 ●第38回 漫画集団 「山形マンガ少年」まとめてご覧いただけます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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