丁寧な暮らし

みるくの朝の散歩のときに、
カラスがいた。
とても近くで、あーあーあーと、
いわゆる警戒の泣き声をしたので、
私が、｢なんで？なんにもしないよ、あー｣というと、首をかしげた。
そのあとだ、
｢あ、あ、あ、わわわ、むちゃぷちゃ、｣と、低い声でしゃべりだした。
｢なあに？なにいってるの？｣ときくと、
また、ゴニョゴニョいったのだ。
私とみるくは、確かに聞いた。
そのあと、そのカラスから離れて少し行くと、小さいカラスがえさをさがして芝生をつついていた。
ああ、あの警戒音は、子供のカラスに教えていたのか、と。
振り向くと、さっきしゃべったカラスがじっと見ていた。
｢なんにもしないよ、大丈夫よ｣
そういって子供のカラスの横をゆっくり通った。
あのカラスは、やはりじっと見ていたが
今度は警戒音を発しなかった。
この、犬を抱っこしたへんなおばはんは、
大丈夫だな、と認識されたのかもしれない。
しゃべるカラスは、そのあと、散歩していたダックスとその飼い主にも話しかけていた。
今日も大変な暑さになる。
カラスも子供を抱えて大変だろう。
ただ、油断は禁物だ。
みるくは、老いて弱っている、カラスから見れば、絶好の獲物だ。よたよた歩く姿はカラスの本能に訴える。
野生で過ごしている彼らなのだということは肝に命じねばならない。