カテゴリ:社会
2012年度からの介護保険制度の見直しを議論していた政府の審議会が意見書をまとめた。焦点となっていた財源や給付の効率化については、両論併記や結論先送りばかりが目立つ。高齢化は今後、急速に進んでいく。介護需要の急増に耐えられる制度改革は不可欠だ。
厚生労働省の試算では、65歳以上が払う介護保険料は今の月額4160円から12年度には5200円に上がる。これを緩和するため財政難の市町村を支援する基金の取り崩しや、年収320万円以上の高齢者の自己負担引き上げなどを打ち出した。 だが基金の取り崩しは急場しのぎで安定財源ではない。年収320万円以上の自己負担を2割に引き上げるだけでは保険料は1人当たり月20円しか下がらない。しかも審議会は反対意見に押され、当初掲げていた介護計画作成の有料化や介護の必要性が低い人の利用料引き上げについて明確な方向を示さなかった。 介護の必要性が高まる75歳以上の人口は現在の約1400万人から、25年には約2200万人になる。介護費用は毎年約3200億円ずつ増えていく見通しで、このままでは制度が持続しないのは明らかだ。 公費投入を求める声も強いが、保険制度を維持するなら公費が5割を超えるのは望ましくない。経済的に苦しい人への配慮は必要だが、これからの高齢者は元サラリーマンで一定額の厚生年金や企業年金をもらえる人が増える。保険料引き上げのほか、サービスを利用した際の自己負担を、所得が多い人に限らず2割にすることも考えるべきだ。 2010/11/30付 日本経済新聞 症状が軽い人の支援は海外に比べても手厚い。そうした人の自己負担を上げるとか、保険の対象を重度の人に限る選択肢もあろう。買い物や調理などの生活援助は給付対象から外し、介護保険と別にそのあり方を考えてもよいのではないか。介護予防のために支援が必要なら、自治体が独自に行うことも考えられる。 意見書には40歳から64歳までの保険料を、給与水準の高い組合に多く負担させる案も出ているが、取りやすいところから取るのは問題。介護を社会で支えるには若者に過重な負担とならないよう配慮しながら20、30代に担い手を広げることを考えるべきだ。その場合、介護が必要になれば年齢や疾病の種類にかかわらず給付対象にするのは当然である。 財源なくしてサービスはない。負担先送りは保険への信頼を失わせる。民主党政権は持続可能な介護保険実現へ本気で取り組んでほしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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