テーマ:本のある暮らし(3309)
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正月、久しぶりに百人一首にふれた。
家庭用ゲーム機のなかの味気ない札だったけど、百人百様それぞれの想いの散らばるさまに、ふたたびみたびのことながら、新しく気づいたかの魅力を感じた。ひと昔、パソコンゲームの百人一首に凝って、すべての札を諳んじれたのはもちろん、決まり字(一首に絞れるまでの出だし部分)の一字ごとに下の句を絞り込めたりもできた。 今はもう多くを忘れてしまい、時間をかけないと思いだせない歌がたくさんある。時間をかけても思い出せない歌はもっとある。 でも、忘れない歌もある。 正月明け、ジョギングしていた人と短歌の話しになり、百人一首に話題が及んで、お互い記憶につかえて出てこなかった歌のいくつかを、協同作業でかろうじて記憶の奥から取り出せて、そうそう、それそれと話がはずんだことは、新年早々の楽しかったことになった。 そんなことがあったから、百人一首をなるべく忘れずにいたいなぁと思い、図書館の蔵書検索で「百人一首」で検索をかけて、新しい本を調べてみた。 これなら電車の中やあちこちで簡単に読めるなと、さっそく借りたのが『百人一首』(谷知子著 角川ソフィア文庫)。オールカラーで紙質も良い。一頁に一首、尾形光琳の図と並べて簡単に紹介してある。 http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=321307000112 ところで。 姫の頁がいいなと、たまたま開いたところの歌。 めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かげ かの源氏物語の著者、紫式部の歌。 宮中で逢った友達のほんの一時の出逢いと別れを詠んだ歌、とされているが、私は違う解釈を押しつけたくて仕方ない。この歌は、そんな日常のひとコマを歌ったものではない。 歌会では、ながながと時間をかけて一首を読み上げるのが通常だったらしい。 「めぐり逢ひて~」 詠む女性と挨拶をかわす程度の面識ある男性は、俺のことを詠むのかとドキっとする。 「見しやそれとも 分かぬ間に~」 ひそかに想いを募らせて、陰からコソコソとチラ見していた男は焦り出す。 「雲隠れにし~」 ストーカー癖のあったその男、これはヤバいとその場を逃げだす方法を考え始める。 「夜半の月かげ~」 『なぁーんだ、びっくりさせるなよ、ホッ』と、句末にいたって安堵の胸をなでおろす。 というように、時間軸を据えて恋愛感情主体で読めば、これは紛れもなく「三十一文字の恋愛サスペンス」、さすがは稀代のストーリーテラー!、と私は勝手に解釈している。 オチの「夜半の月」はもちろん月にすり替えて、許してあげているのである。男は『しかし、やってくれるじゃないか。そうくるなら……』とつづくのは想像に難くない。成就しない段階での探りを入れる会話として、粋な誘いのお手本である。現代の日常会話にアレンジして積極的に用いるべし。 (以上、超勝手な解釈です。念のため m(..)m) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.01.16 17:13:16
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