7月になり、いよいよ夏らしくなりました。
夏になると、餃子が食べたくなり、昨日は晩ご飯を餃子にしました。
餃子というと、ラーメンですが・・・
ラーメン屋さんでのラーメンは我慢するようにしています。
テキメンに太るから!
けど、最近、カロリー控えめの「ゆずラーメン」というのを提供してる
お店を見つけ・・・そこで食べることはあります。
昨日書いたブログの記事が悪かったのか、また電磁波の嫌がらせが
昨日の夕方から始まりました。
あ~あという感じですが・・・
けど、「悪」はいつかは、滅びると思っています。
この方の中に悪魔が棲みついているのですよ。
韓国のセウォル号を所持していたというあの宗教家のように
自分の教義を正当化し、影でこんなことをしているんだと思うのです。
いつか彼はカンダタのようになっちゃうなんだろうな・・・。
って・・・。
懐かしのショートストリーを。
* 最後の仕事 *花村実葉 作
何だか、手も足も、とても冷たくなっている。手足から次第に私の体は凍りついていくようだ。ああ、どうして私の体からぬくもりが消えていくのだろう。まるで、皮膚の一部に穴が開き、そこからみるみると血が流れだし今にも気が遠くなりそうだ。このベッドで私はたった一人死んでゆくのか・・。
しかし現実には何処もケガなどしていないし、病気になってさえいやしない。だのに、何と私の老体は冷え切って、今にも死神が手を差し伸べて来そうな、そんな気さえするのだ。
この夜更け、静まりかえった部屋のどこからともなく聴こえてくるバイオリンの響き。闇夜の世界からもうお前の人生はそろそろお終いにしないか? と悪魔のささやきが私の耳元をかすめてゆく。
私は、そろそろお終いにしてもいいよ、と力ない声でつぶやく。
そうすると、
そうか、それでは、俺が人間を死へと導く、ひと月のノルマが果たせることになるのだな。ああ、ありがとうよ! 俺はこの巷の今にも落ちぶれた生活の退廃した、仕事で失敗し、人間に裏切られ、生活に疲れ、孤独のどん底で愛に飢え、もがき苦しんでいる人間や、食べ物に飢え、物乞いをし、人間界に愛想を尽かした堕落者を虎視眈々と待っているのだよ。そんな人間を地の底から地上に向かって眺めているのだ。今にも死を選びそうな人間は決まって地べたに目を落としてふらついているからな。だから俺が悪魔だと知らずに、ふっと目があって、ニコリとすると、さも安心したように、まるで神の助けでも見つけたようにすり寄ってくるのだ。
そして、俺から血を吸い取られ、精気を失って、後は抜け殻だけになってしまうのさ。俺は、そんな人間のどす黒い血を吸ってこの長い永遠に終わらない命を絶やすことなく生き長らえている。
そうか、そうだったのか、悪魔よ。憐れな老人に死が訪れる前に、意識が遠のく前に私の願いを一つだけ叶えてくれないか・・。
私はこのかた、生きていてただの一度も誰からも愛されなかった。いや、愛したこともない。だからその寂しさを誰よりも分かっている。一つだけ、一つだけ、どこかの子供で親に捨てられ、孤独にうちひしがれ、生きる希望を失い路頭に迷っている子がいたら、どうか、その子を助けておくれ。私のこの暖かな膝掛けをどうかその子に・・。私は老いぼれて、このまま後は死を待つだけのほんの僅かな時間というものを楽しみたい。
ああ、なんとこの窓の、街灯に照らされた冬木立、欅の枝ぶりが美しいことだ。
今まで生きてきた人生を考えている・・。七十二年という歳月。赤ん坊の頃、私を産んだ母は何処かへ行ってしまった。まだ愛くるしい私を残したまま。母の愛を知らずに私は育った。長い月日。それから・・神様は何とか食べ物を私に与えてくれた。けして恵まれた人生ではなかった。
しかし、私には才能があった。長年その才能のお陰で油絵を描き、私は食いぶちを得ていた。二十七で結婚もした。妻は、モデルと情事を重ねた私に愛想を尽かして出て行った。それから何度、幾たびも女を好きになり愛想を尽かされて、その度に私の肉体は削られ、今ではこの通り無惨にもやせ衰えてしまった。しかし、不思議なことに病気だけはしなかった。神は私に絵を描く才能と健康な肉体だけを与えて下さった。それは神に感謝しなければ、と今は思う。
しかし、私には愛が無かった。私の人生は愛を探す旅だった。目の前に現れた風船のような愛をひとたび捕まえようと手を伸ばすと、赤々とした風船は私の手には決して捕まるまいと、ふわりと手からすり抜けてゆくのだ。仮に私がその風船を捕まえたとしたならば、風船は、ぱちんとビックリしたような音を立て弾けてしまうに違いない。今まで幾多のモデルを勤めた女たちは、自分の美しさを描いて貰う楽しみをこの画家の筆に託しただけのことだ。だだ自分を愛していただけのことだ。それを自ら確認したいだけのことなのだ女という生き物は。いや人間というものは所詮、自分のことしか考えていない生き物なのだ。自分がどれだけの人間か、どれだけの才能があるのか、どれだけやさしい人間か、どれだけ人に愛されているか、どれだけ財産があるか、どれだけ稼ぎがあるか、どれだけ他人に認められているか。人間というやつは所詮そんなものだ。
ああ、だから、生まれ代われるものならば、私は海になりたいのものだ。潮のよせては返す波音。飛沫。碧く深い、深海の地球の肌に触れた海水となって、私は永遠の命を生きながらえたい。時には魚や貝と戯れたい。深い深い海の底で。
お前にはもう死が迫っているというのにまだそんな欲望があるのだな・・。一つは可哀想な子供を助けたい? もう一つは海水になりたいのだと? この悪魔の仕事は、人間を死へと導くことなのだよ。人は死ぬと肉体は朽ち、肉体に留まることが出来なくなった魂だけがこの世を彷徨う。俺に出来ることなど何もない。あるのはただ、青ざめた顔で地面を眺めている人間の血を吸い、死へと導いてやることだけだ。こんな因果な仕事を好きでやっている訳じゃない。俺もかつては人間だった。微かな記憶では、俺は人間だった頃、自ら死を選んだ。ある時、事業に失敗し、建物の高い所から飛び降りた。何の仕事だったかそれは覚えていない。自殺を選択した者は悪魔へと生まれ変わる決まりだ。それがこの世の掟だ。理由は知らない。だからこの世には悪魔がゾクゾクと増えている。何しろ自ら死を選ぶ人間が増えているのだからな。
そんなことしなくても、いずれ皆死んで行くというのに可笑しなものだ。
お前の希望を叶えてやる訳にはいかん。それに俺は、この悪魔である仕事が大層気に入っている。不思議なことだが、今にも死にそうな人間を見るとわくわくする。血が騒ぐというのか、人間の不幸が俺の喜び、いわゆる幸せなのだよ。
そうか、私の望みをお前は叶えてはくれないのか。それでは、私はまだ死ぬ訳にはゆかぬ。今気が付いた。私にはやらねばならない仕事が出来た。今さっきまで死を待つばかりの老いぼれだったが、私が海の滴となる前に、もう一度気力を取り戻し、やらねばならない仕事が出来た! そこにある絵を売って、ひもじい思いをしている子供達のために、母のぬくもりのする毛糸の膝掛けをプレゼントしてあげよう! そうだ、それが私に残された最後の仕事だ。
しなびたベットから老人はゆっくり起きあがると、壁側にあるイーゼルまでよたよたと歩いた。そして、白い布をさっと取り払った。
現れたキャンバスには、一人の穏やかな微笑みを浮かべた女性が描かれていた。
老人は筆を執ると、パレットに絵の具を絞り出し、油壺にオイルを入れ、ゆっくりと筆を入れ始めた。 夜は白々と明けようとしていた。
了