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  ひらめきハート満天丘  花村実葉         

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2014.10.29
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カテゴリ:小説
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『不思議な鏡』



ある朝、町の広場に鏡がありました。



そこに背の小さな男がやって来ました。

背の小さな男は鏡に自分の姿を映しました。

背の小さな男は鏡の中では背の大きな男になっていました。

男はなんだか嬉しくなって、元気よく仕事に出掛けて行きました。



次にやって来たのはとても太った男でした。

とても太った男は鏡に自分の姿を映しました。

とても太った男は鏡の中ではやせた男になっていました。

男はなんだか嬉しくなって、ウキウキして仕事に出掛けて行きました。



次にやって来たのは頭がはげ上がった中年男でした。

頭がはげ上がった中年男は鏡に自分の姿を映しました。

頭がはげ上がった中年男は鏡の前ではふさふさの髪を持った男になっていました。

男はなんだか嬉しくなって、飛び上がって仕事に出掛けて行きました。



次にやってきたのは顔が醜い女でした。

顔が醜い女は鏡に自分の姿を映しました。

顔が醜い女は鏡の中では整った顔立ちのとても美しい女になっていました。

女は驚き嬉しくなって、ワルツを踊りながら仕事に出掛けて行きました。



次にやってきたのは皺だらけの老女でした。

皺だらけの老女は鏡に自分の姿を映しました。

皺だらけの老女は鏡の中では皺が全くない若い女になっていました。

女はなんだか嬉しくなって、胸を弾ませ頬を赤らめ散歩に出掛けて行きました。



次にやってきたのはとても美しい姿をした女でした。

とても美しい姿をした女は鏡に自分の姿を映しました。

とても美しい姿をした女は鏡の中ではとても醜い女になっていました。

女は一つため息をつきました。

けれど、美しすぎて男に言い寄られ、他の女たちのねたみをかっていたので醜いのもいい

かもしれないと思い、スキップをして仕事に出掛けましたとさ。


『続・不思議な鏡』



 広場にある不思議な鏡は町中の大変な評判になりました。

 次々と皆が鏡をのぞき込んで一喜一憂するのでした。

 しかし、この鏡をのぞき込んだものは、不思議と自分の姿を見て満足するのでした。

 そんな不思議な鏡を

「この鏡はきっと高く売れるに違いない」

 と一人の欲張りな男がやってきて持ち去ってしまいました。



 町中の人々は、一体誰が持ち去ったのか悲しみました。

 毎日、人々はその鏡をのぞき込んでは、自分のコンプレックスから解放され不思議と明

るい気持ちになる鏡を、なくてはならないものに感じていました。

 それで鏡に自分を映す楽しみを持っていた人々は、みな元気がなくなってしまいました。



 鏡を持ち去った男は外国の秘密ルートで大金持ちに交渉をしました。

 そして一生働かなくても贅沢が出来るほどの金額で交渉が成立しました。

 男はひざを叩いて飛び上がって喜びました。

 今まで盗みをして生計を立ててきましたが、これほどの報酬は全く初めてのことでした。



 男はこの鏡を手放す前に一度じっくり見ておこうと思い立ちました。

 持ち去るときは素早く袋に入れてしまい、鏡を見ることはなかったのです。

 男は鏡を袋から取りだし鏡の前に立ちました。

 そこに映っていたのは背が高く端正な顔立ちの紳士でした。



 男は鏡の中の自分の姿を見て大きく首を振りました。

 そして涙を流しました。

 自分がしていることがこの鏡に映し出される紳士にふさわしくないことを感じ取りました。



 男は考え直し、決まった交渉を断り、鏡をもと広場へ戻しました。

 それは町中の人々が寝静まった夜中の2時頃のことでした。

 男は月明かりの中で、その鏡にもう一度自分を映しました。

 そこにはやはり背が高く端正な顔立ちの紳士が映し出されていました。



 翌朝、沈んでいた町の人々は不思議な鏡がまた戻っていることに驚きました。

 そして喜び、町行く人々はまた鏡の前で立ち止まり、自分の姿を映すのでした。

 人々は鏡の中の自分に満足し、そして今日も元気に仕事に向かうのでした。

                           めでたし。めでたし。

                      (2002年の作品です)                   


                       了

     

  (この作品はフーコー短編小説傑作選16に収められています)





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Last updated  2014.10.29 12:09:39
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