カテゴリ:小説
本日は、いつものように読み切りです。 即興小説 『バスルーム』 わたしは子どもの頃、母がバスルームで体を伸ばして お湯に浸かっている姿をたびたび観ていた。 母はシャボンのお風呂に入っていつまでも出てこなかった。 それを何十年経って、母の年齢を超えて老人となった今 ふっと、その時のことを思い出すのだ。 母は幸せに満ちていた。 わたしも幸せだった。 幻のようだ。 その母のお陰で、わたしは磁石の研究を重ねた。 人間の文明に関わる磁石。 モノとモノが惹きつけ合う磁力について・・・わたしは研究をした。 母はある日、車の中でのけぞり、空を見ていた。 その空の風景は1本の樹木と繋がっていた。 母は樹なのだと思った。 枝葉がニョキニョキと母を包んだ。 ある日、母は死んだ。 死んだ母を樹の下に埋めた。 ある日、あるとき、ある朝、わたしは、樹を観に行った。 すると、樹は母になっていた。 母は樹になっていた。 何故、母は樹になったのだろう? これは磁力の問題か? わたしには、大いなる謎だった。 それは、バスルームに関してのわたしの思い出である。 読んで頂きありがとうございます~♫ ご感想をお待ちしています。
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