カテゴリ:小説
「美味しい?」 「ああ。イケルね・・この味・・いいワインだ」 「毒が入っているのよ・・中に・・」 男は一瞬ためらい女を見た。 「・・まさか、僕を殺す気なの?」 「そうよ」 「喉の辺りが苦しくなってきた・・」 「あなたが憎いから死んで貰うわ・・」 「僕が君に何をしたと言うんだ?」 「あなたは私を鳥をいたわるように愛してくだすったわ」 「だろう? じゃ何故?」 「あなたの目は梟のようにやさしかったわ・・」 「君だけを見ていたんだ・・だのに何故なんだ?」 「それは、あなたの愛を永遠にする為よ」 「僕が死んだら、愛が永遠になるの?」 「ほら? だんだん苦しくなったでしょう?」 「ちょっとだけ・・・」 「わたしも飲むわ」 「ダメだ君は飲んではいけないよ。死ぬな、 僕だけで沢山だ。君は生きる道を選びなさい」 「えっ、私はあなたを殺そうとしているのよ。私が憎くない?」 「憎いモノか。君に殺されるなら本望さ」 「ああ、何と嬉しいことを。あなたの愛は本物だったのね・・」 「当たり前じゃないか・・」 女はワインを飲み干した。 「ああ・・死んでしまうよ・・」 「実はね、永遠に死なない薬を入れたのよ、 年を取らない薬なの・・」 「えっ・・」 「ノーベル賞を貰うはずよ。さる方から戴いたの」 「さる方? 僕は死ぬんじゃないの?」 「死ぬもんですか・・」 「えっ、一生死なないの?」 「そうよ。ずっと、その若さのままよ」 「なってこった。永遠の命なんて欲しくないよ」 「限りある命だから生きていることが尊いんじゃないか」 「でも年を取らないって素敵でしょ? 白髪にもハゲにもならないのよ」 「何を言っているんだ、僕は自分がどういう風に年を取っていくかを この目で確認したいんだ。永遠の命などある訳がないじゃないか」 「分かったわ。けど、もう飲んでしまったわね・・」 女はそう言うと、もがき始めた。 苦しみ、暫くすると、女の足は魚の尾びれになった。 そして、喋ろうとしても、魚のような口なのでぱくぱくするばかりで 話すことができない。 男はそのままだ。 どうやら、まだ実験段階の薬だったらしい。 女は、もがきながらアシカのような足取りで庭の噴水の池に飛び込んだ。 男は女を追い池に飛び込んだ。すると身体はみるみる硬くなり 男の身体は石の像になってしまった。 魚になった女と石の像になった男のお話・・。 その状態が永遠に続くものなのか誰も知らない。 2008年3月4日の即興小説 ****************** ちょっと、面白かったでしょう? 自画自賛ですが・・・今はPCにイタスラが続いてこまってるところですが・・・ ドンマイドンマイ・・・
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