カテゴリ:小説
1月のニューヨークは今年初めての雪が降り積もってる。 ホテルの窓から眺めると道路やビルの屋上は銀世界。 彼女は、空港に向かうため、たった4時間しか寝ていなかったが、前日から支度してあったスーツケースをチェックし、バックの中のパスポートやサイフを確認した。部屋に忘れ物は無いか、ipad 携帯のコードなどを隅々見回し、鏡に自分自身を映し微笑んだ。さて、このホテルともさよなら。 フロントでチエックアウトを終えると、周りには多くの旅行者がこんな早朝から行き交っている。まだ朝の5時半だと言うのに。イエローキャブで空港に向かうためホテルの入り口から外に出た。すると、黒人の大男がタクシー案内をしているようで、彼に促され目の前のイエローキャブに乗り込む。しかし、彼女のスーツケースがあまりに大きかったので、そのタクシーのトランクには入らず、どうやら、別のタクシーにしてくれと促している。 仕方なく彼女はその車から降りて、黒人の案内人の指示で二つ後ろのイエローキャブに乗り変える。乗り換えた車のトランクには、入ったようだ。黒人の大男のOKのサインが出た。タクシーは出発した。「ニーアークエアポート、プリーズ」片言で喋る。何の匂いだろう? 匂う。 変な匂い。日本でもタクシーに乗ると、運転手の匂いに参ることがある。酷いときは運転手におならをされたこともある。空港からホテルまでの乗り合いタクシーでは誰かがおならをしたようで一時匂いにマイッタ。しかし、今は彼女と運転手だけなのだ。その匂いは糞の匂いのよう。誰かお客がその匂いのものをタクシーに残していったのだろうか? 気になりながら、バックからマスクを取り出して口と鼻をふさいだ。それでも匂う。 参ったな。空港まで1時間くらいするだろうか? 我慢するしか無い・・・そう思っていると、大概陽気な黒人のタクシー運転手も静かで、そのうち、マイクで誰かと喋っている。「スメール」・・・と言っている。匂う・・・と。「え?彼も匂うって、こっちが参っているのよこの匂いに」と内心思いながら、運転手と彼女は無言だった。ニューヨークの早朝のまだ夜が明けぬ光の景色を眺めても彼女は匂いのモトが気になる。参ったな、楽しかったニューヨークの最後のオミマイがこの糞の匂いになるなんて・・・頭の中はそれでいっぱいだった。早朝だったからか、30分で空港に到着。匂いに苦しんだので、75ドルを支払い小さくサンキューを言うも、黒人の彼は無言でうなずいただけだった。 タクシーから下りると、外の空気は新鮮だった。航空チケットを機械で受け取りスーツケースを手荷物所で預け、厳しい税関を通る。アメリカはチェックが非常に厳しい・・・しかし、なんなく終わり搭乗口付近の椅子に座り、ふっと、足を組んだとき、履いているショートブーツのカカトが白く粉が吹いているのが目に付いた。 ナニコレ? 脱いで、ブーツのカカトの匂いを嗅ぐ。臭い!糞の匂いでは無いか! 見た目は白い粉が吹いている感じなんだけれど、糞の匂いなのだ。マイッタ! 匂いの元はわたしのブーツにあったのだと、笑いがこみ上げる。というか、苦笑い。何とか飛行機に乗る前で良かった、と安堵し、洗面所で、ブーツのカカトと裏の隅々を手洗いの洗剤を付けて何度も洗う・・・洗っても洗ってもなかなか匂いが落ちるのにしつこく洗い、ようやく落ち着く。空港には出発時間の3時間も前に到着・・・早すぎたのだ・・・けれど、ウン(運)が付いたのだきっと・・・。そう思うと、可笑しくて・・・飛行機に知らずに乗っていたらと思うと胸を撫で下ろすのだった。 タクシーを乗り換えたとき、糞の水たまりにブーツのカカトを浸けてしまったのかも知れない・・・いろいろ考えたけれど、それが一番正しい結論だった。あのタクシーの運転手は言っているだろう、「今朝、すげー糞の臭い匂いのする日本人らしき女の客を乗せたんだよ」って! これは小説仕立てにしましたが、わたしの体験談。ちなみに雪は降ってはいなかったですが・・・。苦笑い の顛末だったのでした・・・。けれども、運が付いたと思っています! ちなみに明治神宮でも、鳥の糞を二か所に掛けられ・・・(笑) 雪の写真はネットから・・ 12月にキンドル電子書籍で出版した本は「amazon.co.jp キンドル本」で購入できますので どうぞ宜しくお願いします。日ごろブログで書いているものとかなり異なりますが 癒しの内容となっています。 こちらの方は英語版ですが、27編の物語となっております。よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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