聖龍の末裔
昔から聖龍が住むといわれていたグランマース。確かに、ここは聖龍とその賢者についての古文書などが数多くある。中央広場に聖龍の像が建てられているのが、何よりの証拠だ。そして、中央広場から少し南へ行った場所の住宅街。ここでは一人の少女と、一体のヒューマノイドが暮らしている。ヒューマノイド、彼の名はアグル。やはり戦闘用に作られたものだろうか、ごついアーマーを着ている。そのほかの特徴といえば、背中から大きく生えている桃色の翼である。彼は過去の記憶を知らない、ましてや、誰に造られたか、どんな目的で造られたのかも、わかりはしない。そんな彼の傍に居る少女の名は、リース。外見上はまったく持って人間と同じだが、実は彼女もヒューマノイドである。ただ、戦闘用ではない。彼女は優れた情報収集力を持っており、この世のあらゆることを記憶しているという。人々のうわさでは、アグルは聖龍の末裔ではないかと噂されていた。しかし、本人は気にも留めず、寧ろ嫌がっている。なぜ自分が聖龍の末裔なのか。ただ蒼い龍の姿に変わることが出来るだけだ、と。だがそれが、聖龍の末裔だと思わせられるのだろう。だがある日をきっかけに、二人の運命は大きく変わっていった。 グランマースの一日はとても早い。何せ、農業が盛んで豊かな都市なのだから。「うーん・・・。んぁ?もう朝か・・・?」カーテンから赤い光が漏れている。カーテンを思い切り広げた。「リース、朝だ!早く仕事するぞ。」固まった身体をほぐす。翼も2,3回ほど羽ばたかせる。「よし、今日もばっちり。いい日になりそうだ。」深呼吸をすると、傍にあったメット、アーマーを着て下へと降りた。下ではすでにリースが起きていた。「あれ、起きてたんだ・・・。」「まぁね。今日はすごくすっきりした目覚めだったし。」へぇ、という顔をし、アグルは窓を開けた。朝の心地よい風が流れてくる。「へへ、よーし。今日も一仕事、がんばるか。」アグルたちの仕事は大抵人々の手伝いだ。他にすることがあるだろう、と町人から聞かれたりはするものの、この仕事がいいという。この仕事が慣れてしまったのだろう。アグルは窓を開けて、少しばかり呆けていた。と、そのとき。手紙が一通、ものすごいスピードでアグルの顔に引っ付いた。「わっわっ、なんだ!?」顔に引っ付いた手紙をとる。「ん・・・?こ、これは!?」「どうしたの?アグル」「こ、この手紙・・・・・。」二人は静まった。手紙の内容を見て、青ざめてしまった。この一通の手紙が、世界を揺るがすこととなった。