西荻のこけし屋
西荻駅前の「こけし屋」は、中央線沿線でもっとも古い歴史をもつフランス料理店の1つだ。西荻のランドマーク??といってもいいかもしれない。駅前にきれいなビルをもっている。「松本清張がここのフランス料理を気に入っていた」「丹波哲郎が朝食をとっていた」「開高健が常連だった」「増田明美がここのクレームブリュレのファンらしい」などなど、それなりのエピソードには事欠かない。だが、ブロガーの評価はさんざんだ。Mizumizuも一度、吉祥寺の東急の地下でここのケーキを買って「げっ」と思ったことがある。あれは久々に食べる、バタークリームの質の悪さが際立つ古臭いケーキだった。もう10年近く前の話なのだが、その「ハズレ感」が強烈で、ここの生ケーキは二度と買うまいと思っていた。だが、西荻のこけし屋の脇をとおると、1階のテラスレストランはそれなりにいつも人が入っている。週末は駐車場がいっぱいになることもある。そこで意を決して、入ってみた。駐車場に面したテラスをラティスで区切って鉢を置き、それなりの雰囲気を出している。中はレトロだ。天井も低い。こけしがカウンターにおいてあり、壁にはアートなモザイク壁画が飾られている。こういう大きな壁画は最近の店では見ないから、なんとなく貴重な感じがする。なるほど、昭和30年代、あるいは40年代ぐらいまでだったら、相当モダンな高級店だっただろうと思う。客層はやはり高めで、相当な熟年世代も多い。ただ、若いカップルや家族連れも入ってくる。とりあえず、ネットでさんざん叩かれてるコーヒーをおそるおそる?オーダー。それにエスプレッソ、ケーキは紫色のモンブランを頼んでみた。ケーキは以前、東急で買った当時に比べると、少なくとも見かけは、今風になってる気がした。結果は… 「コーヒーとケーキが好きな人は、行ってはいけない」と忠告しておこう。一体どうやったら、こんなまずいコーヒーを淹れられるのか、秘訣を教えて欲しいぐらい。冷えてくるとますますどうしようもなくなって、結局残してしまった。エスプレッソもいい加減にしてほしい。「本場イタリア・ミラノの本格的テイストを頑固に追求したこだわりエスプレッソです」なんて書いてある。オイオイオイ! ミラノどころかシチリア内陸部のえらく貧しい町のバールでだって、こんな後味の悪いエスプレッソを飲んだことはないゾ。後味の悪さは豆のまずさか、古さか、あるいは機器の保守が杜撰なのか。とにかく何か原因があるはず。どうにかして欲しい、マジで。知らない人がこんなものを飲んだら、エスプレッソに偏見をもってしまう。ケーキもお話にならない。胸焼けするのだ。生クリームがよくないのだろう。生地もバサついている。味を甘くすればいいってもんじゃないだろう。値段はお手頃だから、子供向けなのかな。そういえば、杉並を走るバスの後ろにはよく「パパおみやげ忘れないでネ こけし屋」とレトロな縦文字で綴った宣伝プレートがついているのを見る。杉並市民にはお馴染みの広告だろう。ロゴの少女の絵はアートでかわいい。ペコちゃんが不二家を支えてるように、この少女(名前はあるのかな?)がこけし屋を支えているのかも。ケーキもコーヒーもダメだが、そう思ってよく周りを見ると、喫茶だけの人はあまりいない。だいたいみんな1000円ぐらいで食べられるランチメニューを頼んでいる。してみると、ランチプレートはそこそこなのだろうか? だが、残念ながら、もう試してみる気になれない。ここは上野の精養軒のような存在かもしれない。精養軒も典雅な馬車のロゴが印象的で、その昔は文士が華やかに集ったらしい。だが、今どきの味にうるさい人が、わざわざ精養軒にフランス料理を食べに行くとは考えられない。こけし屋は変るべきか? 変らざるべきか? お客がそれなりに入っているのをみると、このままでいいのかもしれない。焼き菓子もたくさん売っている。好きだという人もいるようだ。「朝市」のようなイベントもそれなりに企画していて、それなりに人が集まるらしい。ただ、あの場所のよさと輝かしい??歴史を考えると、イベントではなくお店で出す味の研究に本気を出して、西荻のランドマークと呼ぶにふさわしい存在になって欲しいと思うのはMizumizuだけだろうか。