オリエンタル・バンコクで最も優雅な空間は・・・
オリエンタル・バンコクで最も優雅な時間が過ごせる場所、それは断じて、宣伝先行のオーサーズ・ラウンジ(ここで「泊まれない人」相手に、割高でたいしておいしくないアフタヌーン・ティーを出して儲けている)なんかではなく、ゲスト・オンリーのファシリティである「プール」だと思う。プールサイドには常に複数のボーイが控えていて、ゲストのさまざまな要望に答えている。プールは2つあるのだが、外部の人間の目にさらされないメイン・プールの美しさはまた格別。プールに敷き詰めたタイルは、10センチx10センチの安っぽい浴用タイルなんぞではなく、わずか縦横1センチほどの細かなモザイクなのだ。色調はブルーとゴールド。泳いでいると水を通した太陽の光を受けて、プールの底に敷き詰められた深い藍色の色彩の中の黄金のモザイク片が燦然と煌く。プールはとても深く、ほとんど足がつかない。だから子供は浅いサブ・プールのほうに行く。プールサイドはゲストでいっぱいでも、プールのほうはあまり混まない。だから極めて静かな、他人の気配のほとんどない、孤独ですらある時間が身体をつつみこみ、水の中の思考を深い思索へと解き放ってくれる。ここにはなぜか日本人は滅多に来ない。プールサイドでゴロゴロというのは、よっぽど日本人の体質に合わないようだ。日本人観光客の「名所・旧跡至上主義」はいつまで続くのだろう? ツアーだと体力を無視したようなスケジュールで、あちこち引っ張りまわす。ああいう旅行でみんな満足なんだろうか。疲れるだけじゃん。一方、白人は長々と、本当に長々と長椅子に横たわっている。よく退屈しないなあ、ってぐらいノンビリしてる。直射日光に肌をもろに晒して焼いている人も多い。大丈夫なんでしょうか。皮膚がん、怖くないの? 背中が日焼けでズル剥けになってる人も多い。あんまり気にしてないみたい。痛くないのかな。どうやら「日焼け」というステータスは彼らにとって何モノにもまさるらしい。一度だけ日本人と思しき男性に会った。彼はゴーグルになんと水泳キャップまでかぶり、ガンガンに真剣に泳いでいた。ホテルのプールまで来てあんなにマジメに泳ぐのは日本人しかいないだろう。律儀にキャップまでかぶっているのを見たのは、あとにも先にもこの1回だけだった、当然ながら(ちなみに、ゴーグルは必携)。Mizumizuのお気に入りは、パラソル付きの寝椅子よりも、この天蓋付きスペース。海辺のリゾートではないので、澄んだ青い海はないけれど、この植物に囲まれた天蓋付きの台に寝転んでいると、都会ではなく自然豊かな島に来ているような気分になれる。木々をわたる風の音はワイルドですらある。軽い食事もできる。この日はランチをプールサイドですませた。メニューはポメロ・サラダとトムヤムクン。ポメロというのはブンタンの一種らしい。果肉はグレープフルーツに似ているのだが、味はずっと淡白。少し苦味もあり、朝はこれのツブツブの果肉入りの生ジュースが出て、たいそう気に入ってしまった。そのポメロを使ったサラダというのが、また絶品。ポメロの果肉と一緒に、海老やフライドガーリックやアーモンドや、さまざまなものが入っている。全体的に上品で淡白な味なのだけれど、材料の取り合わせが絶妙。外部の人でも「ザ・ヴェランダ」で食べられるので、機会があればお試しあれ。トムヤムクンやサラダを頼むとライスも自動的についてくるのがタイ風(らしい)。