消費税についてちょっとばかし思うこと
日本経済は全治3年、景気の回復を待って消費税アップを国民にお願いしたい。率は10%が適当ではないか――麻生総理の発言だが、いよいよ上げるのか、という気分で聞いた。前々から財務省は上げたくでウズウズしていたわけだし、国の財政が非常に悪いのはわかっている。高齢化社会を迎えて負担増はやむなし、とまあ、国の主張は一応筋は通っている。消費税を上げるべきか否かについては、いろいろな意見があるし、短絡的にどうこう結論付けるつもりはないのだが、この税金について、あくまで零細企業経営者として思うところをちょっとばかり書いてみたい。専門的な話ではない。ちょっとした「実感」を交えた経験談といったところだ。Mizumizuが起業したのが、2004年。それまでは「青色申告」の個人事業主だった。個人事業主をやめようと思った理由の1つが、「1000万円以上の売上のある個人事業主にも消費税がかかる」ことになったためだ(それまでは下限が3000万以上で、そこまでの売上がない身には関係なかったのだ)。この税制改正をMizumizuは申告のときまで知らなかった。いや、話は聞いていたのだが、まったくもって無知なことに、「自分は直接のクライアント(当時はエージェントだった)に消費税5%を請求していない。もらってないんだから、払わなくていいんでしょ」と勝手に思い込んだのだ。ところがそうは問屋がおろさなかった。青色申告を手伝ってくれる申告会というのがあるのだが、そこに相談に言ったら、「5%上乗せして請求してるかどうかなんていうのは、あくまでお宅とお客の間の話。売上が1000万以上あるなら、消費税は払わないといけない」と来た。「え~、だって、もらってないんですよ。去年まで払ってない消費税を払うとなったら、負担増じゃないですか。売上が1000万あるたって、全部が自分の所得じゃない。フリーランスの人に仕事を頼んでるし、言ってみれば、その人に払う分をこちらがいったん受け取ってるだけなんですよ」と抵抗したが、「それがぁ?」という顔をされるばかり。先方からすれば、1000万円以上の売上のある個人事業主は消費税がかかるという、シンプルでわかりきった税制改正に、手前勝手な理屈で意固地に抵抗してるMizumizuが世間知らずに思えただろう。「来年からはエージェントさんに請求したらいいんですよ」で終わり。エージェントを通していたとはいっても、それはあくまでおカネの流れがそうだっただけで、Mizumizuは基本的に、クライアントと直接仕事をしていた。つまりクライアントから見ればMizumizu=エージェントだったということ。ただ、請求だけは会社をもっていないMizumizuからではなく、仕事上の知人のつくった株式会社を通して出していた。当然その株式会社をもっていた知人にもコミッションのようなものをMizumizu担当の仕事の売上から払っていた。消費税がかかるのでは、知人の会社を通す意味はほとんどなかった。そもそもそういう形態をとっていることで、こちらの取り分が減ってしまっていたのだし。おまけに知人は、会社の名前だけを貸して「ボクは社長だよ」と言ってるだけの役立たずで、こちらの仕事を手伝うわけでもなく、しかも非常にガメつい性格だった。たとえこちらがどんなに忙しく働いていようと、「何か手伝うことある?」などとは思いもせず(なにせ、社長サンだし、手伝って自分の取り分のお金が増えるわけでもないと合理的に考えてるってワケ)、自分は昼間からテニスに行って平気なヒト。もう潮時だと思い、自分で株式会社を立ち上げた。起業までのいきさつはこんなところなのだが、会社を設立した当初は、5%別にかける消費税はそのまま税務署に行くのだと思っていた。つまり、いったん5%の消費税をお客さんからお預かりして、まんま税金として納めるのだと。ところが、税理士によればそうではないという。経費に使った分で払った消費税を引いた残りを納めればいいそうな。どういう理屈そうなるのか、どう計算するのかは、専門的な話になってよくわからないのだが、とにかく、聞いたところでは、それはそれなりに筋が通った話だった。それと消費税の計算は結構複雑で、税理士にまかせないと無理そうだな、というのもはっきりした。それで、個人事業に毛が生えただけの零細企業であるにもかかわらず、税理士を頼むことに。会社なので、そうした経費に加え、たとえ赤字でも「均等割り」とかいう法人税がかかってくる。また、個人の収入は今度は給料扱いだから、個人の所得税も別にかかる。個人事業主時代にはない負担だが、なんといってもゴーツクでボンクラの知人と縁が切れたのが嬉しかった。会社勤めのサラリーマンが一番大変なのは、実は社内の人間関係だったりするが、Mizumizuとしても、ウマの合わない人間と仕事するのは大変な苦痛だった。仕事相手は一緒に働いてみないとわからない。会社の名前を借りられるということで、自分で会社を作るリスクもないなどと簡単に考えていた自分が馬鹿だったと、彼の仕事の能力と性格を知ってから後悔したのだが、あんまりすぐに会社が変わるのも、クライアントへの印象が悪くなると思ってかなり我慢してきたのだ。クライアントとはずっと同じ形態で仕事をしていて、すべてお付き合いの長いお客さんばかりなので、自分で起業したからといっても会社の名前が変わった程度で、向こうからすれば特に何も変わりはない。以前からの仕事は以前どおり順調に来て、会社はちゃんと回り出した。「弥生会計」を覚える必要があったが、これも税理士の助けもあり、難なく覚えられた。で、消費税のことだが、感覚としては「お客さんからもらっている5%分の消費税に比べて、税務署に払ってる消費税の額は案外少ないな」という気がするのだ。あくまで「感覚として」なのだが…… 具体的な数字は忘れてしまっているが、たとえて言えば、消費税として100万もらっているのに、払っているのは50万ぐらい、というような感覚だ。じゃ、その差額の50万はどこに行ってるのだろう? もちろん経費として払った分を取り戻してる、というような意味合いに考えれば、最終的には税務署に行ってるはずなのだが、どうもこの差額部分が、「こちらに残ってる」あるいは「払っていない」という気がするのだ。だって、そうじゃありませんか? サラリーマンが何かを買う場合、たとえばスーツなんかならほとんど仕事上の経費といっていいと思う。だが、その分は別に自分が払った消費税が戻ってくるわけでも、給料を多く請求できるわけでもない。5%から10%に消費税が上がるとしたら、給料は別に連動してないから、サラリーマンにとっては、そのまま負担増だ。だけど会社の場合は? 消費税が倍になって、100万だった年間のお客からもらう消費税額が200万になったとしよう。経費にかかる消費税は50万から100万に倍増。そうすると引き算は? 5%のときは50万だった。それが10%になると、「もらっておいて払わない――理論上は「払わない」わけではないのだが、こちらの感覚として――消費税」が100万に倍増する。どーも、「会社に残るお金が増える」気がするのだ。わかりますか?さらにもっと。消費税はお客さんからもらったあと、しばらく銀行にプールされることになる。消費税を納めるのはもらった後、まとめてなので、その分は会社の銀行口座に入り、当然ながら金利がつく。ウチのようなたいした売上のない会社の消費税分の金額につく金利なんて知れてるが、これがトヨタみたいな大企業になったら? はっきりいって膨大だと思うよ。お客からもらって銀行口座に入り、税務署に向かってに出て行く前に、税金といってもらったおカネに金利がつくのだ。大きい会社になればなるほどそれは大きくなる。ウハウハだろう。だから、トヨタの経営トップなんかが重要なポストを占める財界からは、消費税アップを求める声がやまないのではないかと邪推してる。ふつうに考えたら、トヨタみたいに、庶民相手に車を売ってる会社は、消費税が上がると車が売れなくなって損なハズだ。だが、おそらく消費税アップで見込める、表に出ない収入アップのうまみが蜜の味なんだろう。消費税が上がって車が売れなくなったら、現場の下々の営業マンのオシリを叩けばいい。上でも書いたが、こういうお得感は個人のサラリーマンには皆無。収入の低いフリーターにも、まさしく負担増以外の何ものでもない。じゃ、誰もかれも会社にすればいいかというと、そういうわけでもない。朝日新聞が、「税金を回避する方法」としての起業を上げていたけど、実に表面的で一方的――特に「経費扱い」に関して、起業した人の理屈だけを鵜呑みにして書いていて、税務署側の所見は取材していないのがまずい。経費に対する解釈はそれほど単純ではなく、規模な小さい会社なら単にお目こぼしにあう場合が多いだけであって、税務のプロがその気になって調べればいくらでもイチャモンつけられる。何年も経ったあとから追徴課税されるケースだってあるのだ――な記事だった。会社を作るのは、確かに簡単だ。司法書士を使わなければとても安くあがる。Mizumizuも一切を自分でやったので、安くあがった。だが、会社を維持していくのはそれなりに大変なことなのだ。5年たつとほとんどの会社――軽く半数以上――がつぶれているという現実がそれを表している。そして、消費税は大きな会社にとってはうまみが多く、収入の低い個人になればなるほど、負担が大きくなる税金だというのは間違いない。誰もが同じ額を負担するから公平な税なんてのは、嘘っぱちの屁理屈。ヨーロッパの消費税ともいえる、付加価値税は日常的な食品になんかつかない。低所得者にちゃんと配慮している。ところが、日本の場合は、えらい複雑な計算で会社の払う消費税を決めてるぐらいアタマのいい人たちが作った税なのに、「食品といっても、たとえばマクドナルドなどを非課税にするか課税にするか、判断が難しくなる。レストラン扱いで課税にしてしまうと、スーパーの食料品売り場のハンバーガーとの整合性をどうするかとう問題になる」なんて理屈をつけて、食品だろうと贅沢品だろうと、わけ隔てなく同じ率をかけている。けど、考えてみれば、単に基準を決めればいいことで、食品非課税なんて簡単にできるはずだ。消費税が導入されたとき、「消費税を廃止します!」と声高に叫んでマドンナと称するオバサンたちがいっぱい当選したが、アノ人たちは今いったい何やってるんだろうね。「廃止できるわけないよ」と横目で見ていたが案の定だった。結局いったん決まってしまえば、長いものに巻かれてしまう「よき市民」なのだ、日本人は。そして、庶民は貧乏でも、多くを望まず明るく楽しくお暮らしなさい、というのがお上のお達し。もちろん、おカネがあれば楽しい人生というわけでもないし、貧乏でも明るく生きてる人はいっぱいいる。ただ、消費税が貧乏人をますます貧乏にする税金であることは、確か。