Quelli della Trattoria のスカンピのクリームソースのフェットチーネ
ホテルのお兄さんに教えてもらったトラットリア、Quelli della Trattoria (住所:Via Cavour 28, Siracusa)は味は最高だった。パスタを作ってる太ったコックさんの絵の描いてある下がり看板が目印ですぐわかる。しかもパスタ2つに水で42,000リラ(2500円)とお値段も格安。だが、ここカードが使えないので注意。お兄さんオススメのスカンピ(scampi、実際にはアカザエビのことだが、レストランでは手長海老と書いてるところが多い)のクリームソースのフェットチーネ(きしめんのような平べったいパスタ)は、イタリアで食したパスタの中でも3本の指に入るほど。クリームソースといっても重くなく、海老の風味にもまったく泥臭さがない。自家製の麺はモチモチで味わい深い。言うことないパスタだった。本当においしいパスタを出す店はこういうところにある。ミシュランはイタリアでは当てにならないし、有名シェフの店は高すぎる。だがこのトラットリアは、カメリエーレ(ウエイター)がよくなかった。最初に、他の席も空いていたのにわざわざトイレの近くの暗いような末席に座らされたときに、ちょっとアレッと思った(「こっちは?」と別のテーブルをさしたら、「ダメ」と拒否された)のだが、運ばれきたパンを見て、眉をひそめた。パン籠にちょっぴりしか入っていない。しかもバゲットの端だけを切ったような、皮ばっかりのパンだ。別のテーブルを見ると、みんなパンが籠からはみださんばかりに盛られている。実は日本人の「イタリアでのパンのマナー」はひどいのだ。パンは黙っていてもいっぱい籠に入って出てくるが、これは「お持ち帰り用」では決してない。ところが日本人の特にオバさんと来たら、食べもしないのに出されたパンを袋に堂々と入れて全部持って帰ってしまう人がいるのだ。お願いだからやめてください。過去にそんな目にあったのかもしれないな… このときは好意的に解釈した。別になくなったら頼めばいいことだ。キレッ端だけだというのも、たまたまパンがそこで終わったのだろう。おいしいパスタを食べてる間に、ちょっぴりしかなかったパンがなくなった。そこで、「カメリエーレ!」と、叫んで、身長175センチ、体重もそのくらい… のもち肌の20歳ぐらいのウエイター君を呼んだ。すると、「あとで」と言って、別のデーブルになにやらサービスに行き、そのまま無視している。なので、もう一度大きな声で、「カメリエーレ! パンを持ってきて!」と叫んだ。ようやくパン籠を下げに来るウエイター君。籠が再び運ばれてきたので、「ありがとう」と言いながら中を見ると…あれっまた小さなキレッ端が、たった2コしか入っていない。これは、完全にわざとですね。日本人には信じられない話かもしれないが、こういう子供じみたイジワルをするウエイター、ホテルの従業員、売り子はヨーロッパでは全然めずらしくない。何か買おうとして店のキャッシャーに行くとする。無教養と貧困と不幸を顔にはりつけたような「雇われ」店員は、不慣れなアジア人観光客と見ると、わざと仕事仲間とおしゃべりを始めて、えんえんと待たせたりする。ホテルでしつこく声をかけてきた従業員につれなくすると、チェックアウトのときにわざと他の客を先にしてこれまた長々と待たせたり、パスポートを返し忘れたフリをしたりする。日本も格差社会と言われて久しいが、さすがに、不慣れな外国人客にイジワルをして日ごろのうっぷんをはらすほどひねくれた「雇われ」はそうはいないだろう。日本人の職業人は基本的にレベルが高いし、それなりに職務を忠実に果たそうとする。ただ、同じ職場での下の立場の人間に対するイジメは相当のものだと思うが。「どういたしまして」しゃーしゃーと言って、身長175センチ、体重もそのくらいのウエイター君は行ってしまった。パンはすぐに食べ終わった(なにせちっちゃいのが1人1個しかないので)。なので、こちらもまたしつこく、「カメリエーレ! パンをお願いします」と大声で言ってやった。キッチンのほうからは、なにかトラブルかと、オーナーらしきシェフ(非常に痩身)が心配そうに顔をのぞかせた。この身長175センチ、体重もそのくらいのウエイター君は完全に「雇われ」で、オーナー家族の一員ではないね。周囲のテーブルも東洋人に運ばれるパン籠だけが、ほとんど何も入っていないことに気づき、さりげなくこちらを見ている。ウエイター君はまたパンを持ってきた。「ありがとう」「どういたしまして」相変わらずちょっぴりしか入っていなかったが、もうそれ以上はさすがに必要なかった。味は最高だけど、ウエイターが最低の店だ。そう結論づけて、会計を頼んだ。42,000リラに対して、100,000リラ札しかない。おつりをもってきてもらい、「ありがとう」(←Mizumizu)「どういたしまして」(←身長175センチ、体重もそのくらいのウエイター君)と心のこもらない何度目かのお決まりの挨拶を交わす。おつりをウエストバッグタイプの貴重品入れに入れて店を出た…ところで、気づいた。そうだ、おつりをちゃんと確かめていなかった!つり銭ごまかしもイタリアでは日常茶飯事だ。58,000リラだから紙幣の数も多い。あわてて路上で、確認する。すると…なんと、小さなお札で8,000リラしかないではないか。やられた!あわてて店に戻ると、オーナーらしき人がキッチンから出てきて、ウエイター君となにやら話しているところだった。「ちょっと、あなた、58,000リラをくれなければいけないのに、8000リラしかなかったわよ。5万リラ忘れている」またまた(わざと)狭い店内の客全員に聞えるように言ってやった。ただし、抗議する口調ではなく、あくまで驚いた口調で。「え…」身長175センチ、体重もそのくらいのウエイター君は、差し出された札を見た。「本当?」心底驚いたようにこちらの目を覗き込む。ま~、したたかもん! わざとごまかしたくせに。もちろんそんなハラはオクビにも出さず、「本当よ、ホラ」とウエストバッグの中をべろ~んと見せた。身長175センチ、体重もそのくらいのウエイター君は、まだ信じられないといった顔で、オーナーらしきおじさんに何か言っている。店内、し~ん。隅に座らされた東洋人の、明らかに観光客が、さかんに「パン、パン」と言っていたのをみんな聞いている。「今度はおつりごまかしか」そう思いながら成り行きをうかがっているのは明らか。ウエイター君はオーナーらしきおじさんに、まだなにやら話していたが、おじさんのほうが、さっとこちらに50,000リラ札を出した。「ありがとう」とおじさんに言い、「気をつけてね」とウエイター君の肩を叩いて出た。まったく、なんつーウエイターだよ。テーブル差別+パン差別のうえにおつりごまかしかい? あんなの雇っていたら店の評判にかかわるわ。プンプンしながら、帰り道、Mizumizu母と2人で、「レイシスト・ウエイター」の悪口をまくしたてた。ところが!ホテルに帰って、部屋でウエストポーチをよくよく見たら、隅のほうから、別の50,000リラ札が出てきたではないか!「あれ~!」Mizumizu、思わず絶叫。バラバラときたお札をウエストポーチに入れたとき、たまたま50,000リラ札だけ別のところに入ってしまったのか?? それを暗い路地で見たから、気づかなかったのか!?「か、返さなきゃ」しかし、もう時計は23時近くになっている。それに、落ち着いて考えたら、このもう1つの5万リラは、本当に、身長175センチ、体重もそのくらいのウエイター君がもってきたおつりの一部だろうか? それもよくわからない。だいたい、あのあからさまな差別待遇は、許せないよね。よくよく考えると、また腹が立ってきた。わざとトイレ近くの隅の席に座らせ、別のテーブルもあいてるのに、「ダメ」だと拒否し、わざわざパンのキレッ端だけよこし、呼んでも、とりあえず無視し、再度呼んだらやっと仕事、しかもまたパンはキレッ端2個。3度目も断固としてキレッ端2個。気分悪いわ。食事代が42,000リラ。余計にこっちによこした(?)のが50,000リラ。おつりを、もしちゃんと払っていて、さらに5万リラをこっちによこしたとすると、食事代(2500円)をタダにして8千リラ(480円)の慰謝料(苦笑)を払ったということか?つまり、これは、天罰よね。「返しに行かなきゃ」の殊勝な心持ちは、あっという間に霧散した。翌朝、チェックアウトするとき、ホテルのお兄さんが、「Quelli della Trattoria 行った?」と聞いてきた。数々の(?)ウエイターとのトラブルにはまったく触れず、「うん、うん。すごく美味しかった。ありがとう」とだけ答えた。「よかったね」お兄さん自慢げにニッコリ。きっと後日馴染み(であろう)のあの店に行って、「日本人が来たでしょ? すごく美味しかったってさ」ぬぁんて、話しただろう。そのとき店のおじさんは、どんな顔をしたかな。