NYで味わう幻さんの極上カクテル
NYに行くか行かないか迷っていたころ、たまたまテレビを見ていたら、某番組でニューヨークで活躍する日本人ミクソロジスト山本幻氏を紹介していた。まだ30歳そこそこの青年で、アメリカに来て5年。ニューヨークに出てまだ1年だが、その前にニュージャージーでバーテンダーをやっていたとき、カクテル・チャレンジで2位に入賞した実力の持ち主だそう(現地での紹介記事はこちら)。オーガニックの果物や野菜に、日本酒(!)を使ったカクテルが今ニューヨーカーの間で評判だとか。う~ん、おもしろそう&おいしそう!テレビを見終わったあとに、ネットで検索して彼のいる店を探したのだが、わからない。だが、本人のメルアドはわかったので、ダメモトでメールしてみた。すると、すぐに返事が来て、ニューヨークのお店の詳細を教えてくれた。なんでも蕎麦とヤキトリを出す店のウェイティングバーを切り盛りしているとか。パリのカルティエラタンで、ヤキトリとスシを両方出す店を見たときもかなり驚いたのだが、さすがにニューヨーク、蕎麦とヤキトリを出す店に、バーもあるんですか。で、オリジナルのカクテルを出すって?とってもおもしろそう!ついでに、新型インフルエンザの様子など聞いたりして、「NYに行くかどうか、まだ決めてませんが、時間があったら是非うかがいます」とメールを締めくくった。NYでは夜はバレエとミュージカルで忙しい。もしかしたら行く時間ないかな、と思っていたのだが、おあつらえ向きに時間があいた夜があり、さっそく出かけた。偶然にもホテルから遠くない。そのお店とは…Soba Totto営業時間:5:30pm-12:00pm(年中無休、ただし、幻さんは日曜日休み)211E 43rd ST, NYタクシーでの行き方は簡単。2nd Aveと3rd Aveの間にある43rdストリートなので、3番街の43番通りで降りて、右(つまり2番街方向)に曲がって、数軒目。向かいには寿司店もあった。Soba Tottoに入ってみると、閑散とした43番通りとは別世界。平日夜から思いっきり活気があり、特に幻さんのいるバーは、グループも入って、押すな押すな(←電車じゃないんだけど・苦笑)の大盛況ぶり。入り口を入って左にカウンターとテーブル席のあるバーが独立した空間になっており、奥は普通の蕎麦屋の雰囲気でテーブルが並んでいる。すぐにバーには入れなかったので、いったん奥のテーブル席に座り、バーカウンターが空いたところで、移動させてもらった。この店のいいところは、蕎麦とヤキトリのメニューが豊富なので、食事をすることもできるし、真夜中までやっているので、夕食のあと立ち寄って、幻さんのバーでカクテル中心に飲むだけにもできるということ。お腹がすいていたので、蕎麦もヤキトリも思いっきり頼んだMizumizuとMizumizu母。だが、個人的には後者の「カクテル中心に飲む」ほうがお奨め。あまりいろいろ食べると、カクテルの味がわからなくなりそう。さて、そして、ウワサの幻さんのカクテルは…めちゃウマです!カクテルのフルコースもあるということだが(下の写真の料理の後ろに手書きで書いてあるのがソレだと思う)、とりあえず、メニューから桃のカクテルを2種頼んでみた。奥がピーチとスパークリングワインのカクテル。生の黄桃とスパークグワインを合わせ、黄桃を煮詰めたコンフィチュール(ジャム)を隠し味に使っているとか。手前が、ピーチと獺祭(だっさい)のカクテル。「なんでここに獺祭があるの?」と驚くMizumizu。獺祭というのは、山口県のド田舎にある旭酒造という小さな酒蔵が作っている純米吟醸。日本でも「知る人ぞ知る」通のお酒なのだ。なんで、そんなに詳しいかって? 高校が山口なんですよ、アタクシ。幻さんによれば、獺祭自体にフルーティな味わいがあるとか。NYに現れた本州の西の端のド田舎産純米吟醸は、生の黄桃と、ほんの少しのコンフィチュールで装って、完全にイキなニューヨークガールに姿を変えている。スパークリングのほうは、お酒全体に桃の果肉が散らばっているようで、口に含むと濃厚な果肉の味がぎゅっと迫ってくる。獺祭のほうは、もっとあっさり。も~、どっちも極上でしょう!カクテルもメニュー豊富なのだが、テイスティングということで、キュウイと焼酎のカクテルを造ってくれた。焼酎は、宮崎(球磨)の鳥飼という米焼酎を使っているとか。アクセントにウイキョウ(フェンネル)を加えているそうで、キュウイフルーツの青臭さをうまく引き立てつつ、どこかエスニックで個性的な味わいに仕上げている。フロリダ産のオーガニックストロベリーを使ったカクテルもあるというので、そちらもオーダー。やはりベースは獺祭で苺のコンフィチュールが隠し味。添えられたスペアミントの香りが野性的で、甘さの中にさわやかな刺激が入り込んでくる。どれもこれも、最高でした。次回はマンゴーのカクテルか、はたまたカクテルのコースか…まだまだ試したいカクテルが目白押し。幻さんのカクテルは、インターナショナルな街の、いい意味でちょっとスノッブな雰囲気に合う。日本で言えば、ガイジンが多く泊まる高級ホテルのバー。でもやっぱり、ニューヨークという坩堝の大都会で味わうからまた格別なのかも。幻さんは遠目で見たら修行僧みたいで、思わず「高野山でカクテル修行されました?」と聞きたくなりました(ウソ)。でも人懐こい笑顔は、「一休さんが、大人になったら痩せました」って感じが総論。そして、頭のてっぺんから指先まで、清潔感にあふれている。ニューヨークに出て1年で、ここまでバーを流行らせるとは、タダモノではありませんね。おまけにまだ30そこそこ。メールのレスの速さといい、上質の素材を吟味して作るカクテルの美味しさといい、立ち振る舞いや態度といい、やはり一流の人材はどこに行っても輝きを放つもの。幻さんのメールアドレスは、以下。gen@freshfruitmartini.com