ここまでやるか? ローマのレストランPassetto、ランチで邦人カップルに695ユーロ請求
ロイターを始め、日本の新聞社も何社か報じた、ローマの老舗レストランのぼったくり事件。ロイターの記事は以下。[ローマ 2日 ロイター] イタリアの当局は、日本人観光客カップルの昼食に約700ユーロ(約9万4000円)を請求したローマの老舗レストランを、詐欺行為にあたるとして閉鎖した。このカップルは、ナボーナ広場近くのレストラン「パセット」で、パスタとロブスター、ワイン、ジェラートを注文したところ、579ユーロの食事代と115ユーロのチップを請求され、驚いて警察に届け出ていた。警察に抜き打ち検査を命じたローマのアレマノ市長は「このレストランは、決して再び営業をすべきでないし、営業許可も取り消されるべきだ」と述べた。一方、同レストランのオーナーは、苦情には驚いているし、チップはカップルの意思で置いていったものだと話している。さらに地元紙に対し、カキ12個とロブスター2キロ、ワイン、スズキ1.5キロを注文し、店を出る前にはウエーターと写真を撮ったと語り、食い違う主張をしている。同レストランは、チャーリー・チャップリンやグレース・ケリーも訪れたことがあり、149年の歴史を誇っていた。朝日、毎日でも同様の記事が出たが、どうもわからないのは、なぜこの邦人カップルが、そんな高い料理を注文したのか、警察に届ける前に、なぜ支払いに同意したのか、ということだった。そこで、イタリア語の新聞報道を探して見たら、こちらに記事があった。これを読んだら謎が解けた。Quando la coppia di fidanzati è arrivata nel locale, nessuno ha dato loro un menu dove poter scegliere cosa mangiare. È stato invece mandato un cameriere che parlava in inglese. Ed è stato lui che con modi gentili e affabili li ha convinti: «Fidatevi di me, faccio io». E così il menu del pranzo non è stato scelto dai ragazzi, che quindi non conoscevano il costo di ogni piatto. Però hanno mangiato ed apprezzato.この記事によれば、邦人カップルに誰もメニューを持ってこなかった(オイオイ!)。そのかわり、英語を話すやさしげなウエイターがやって来て、「私を信用してください。私が(メニュー選びを)やりますから」と言ったという。つまり、メニューは客が選んだのではなかったのだ。客のほうは、一皿がいくらするのか、わからないまま食べたということだ。しかし、料理はおいしかったらしい。Meno piacevole è stato invece il conto. Totale: 695 euro. In un primo momento i due turisti hanno pensato a un errore, ma i dubbi sono venuti meno quando sono tornati in possesso della carta di credito: sulla ricevuta risultava che al totale era stata addirittura aggiunta una «piccola» mancia di 115,50 euro, prelevata senza la loro autorizzazione. Di fronte alle proteste, il ristoratore è rimasto irremovibile ribadendo che quelli erano i prezzi normali del locale. Ma la coppia non si è rassegnata e uscita dal ristorante ha raccontato l'accaduto alla polizia.ところが、請求書を見て楽しい気分は吹っ飛んだ。トータルの請求金額695ユーロ(約9万)。カップルは間違いではないかと思ったのだが、クレジットカード払いにしてみてどうやら単純な間違いではないことに気づいた。というのは、695ユーロの中には115.5ユーロがチップ――元来、客が同意しなければ上乗せできないもの――として勝手に上乗せされていたからだ(つまり料理は579.5ユーロ、チップが115.5ユーロ。料理代の20%だって…! アメリカのレストランチップの最大パーセンテージじゃないの。イタリアでは聞いたことない額だ)。もちろんカップルは抗議した。だが、レストラン側は、この金額はここらの相場だと言って取り合わなかったという。それでカップルはレストランを出て、警察へ駆け込んだという次第らしい。なるほど、そういうことでしたか。しかし、ナボーナ広場で10万近いランチが「相場」とは、バカにするにもホドがある。ナボーナ広場は美味しい店が多く、Mizumizuも何度も行っているが、1人1万円払ったことはない。もちろんあまり高級なものや高いワインは頼まないということもあるけど。それでも十分満足できる量と質の料理が楽しめた。やはり、どんな老舗有名レストランでも、メニューを見ないで値段も聞かずに、「おまかせ」にしてはいけない。日本でも寿司屋など、時価の店もあるけれど、慣れない外国では危険すぎる。しかし、この店、ホームページを見ると、相当りっぱで、いわゆるボッタクリレストランには見えないし、たぶんウエイターもものすごく感じが良くて、お人よしの日本人はすっかり信用してしまった、ということだろう(ありがち)。このふざけた店、もちろん「初犯」なワケがない。今回はやりすぎてしまっただけだ。こういうふっかけは必ずエスカレートするもので、最初は数千円、それから1万円ちょっと、うまくいくと大胆になって数万円… となっていく。これまでに、何人被害者がいたのかね?こうした詐欺レストランはちゃんと相手を見ている。おとなしい日本人は格好のカモ。今回は男女の新婚さんらしいし、男性側には見栄もあるから、相当高くふっかけても黙って払うと踏んだんだろう。それがおとなしいハズの日本人が警察に駆け込み、警察も動いちゃったので、営業できなくなった。長い歴史のあるレストランなのに、たかが10万ばかりですべてがパー。バカだね、このイタリア人オーナーは。「まあ、いいや…」などと諦めずに、警察に掛け合った日本人カップルは、えらいじゃないの。これで次の被害者が防げた。不当だと思うことをされたら諦めずに行動を起こす、というのが大事なのだが、日本人はとかくこうした目に遭うと、「自分がだまされた」というのが体面にかかわるとでも思うのか、泣き寝入りすることが多い。特にオヤジ世代はそう。日本ではやたら威張りくさっているくせに、欧米に行くと急にウンウンと犬みたいに従順になっちゃう。このカップルは、年齢はわからないけど、たぶん若い世代じゃないかと思う。一部の日本の新聞には、レストランのオーナーが「サービス料だけは返す」と言っているとあったが、イタリアの記事にのっているレシートを見ると、サービス料ではなく、明らかにTip(Mancia)って書いてあるじゃん。それを勝手に20%にして請求したら、それだけで詐欺よ。で、この詐欺オーナー、ロイターの記事では「チップはカップルの意思で置いていったものだ」と言ってるそうだが、レシートみたらTip額が印刷されてるじゃん。客の手書きの書き込みじゃないし、そもそも20%ものチップを払うなどという発想は日本人にはありません。イタリア紙によれば、カップルの訴えを受けて警察が調べたところ、2人が払わされた値段は、店のメニューと一致しなかったことが確認された(これって、日本語の新聞には書いてなかった気がする。オーナーの言い分は書いてあったけど。なんで?)。また、このレストランは衛生基準を満たしておらず、「不潔な環境、機能していない冷蔵庫」などの問題点があったという。魚介を売りにしてるのに、冷蔵庫が機能してないって… クワバラ、クワバラ。どこが名店なんだろう??しかし、頼もしいのはローマ市長のGianni Alemanno氏。不衛生なうえに、詐欺まがいの行為を働くような店には、二度と営業許可は与えない、とキッパリ。無知で大人しそうな人間と見れば、騙してタカることしか考えてないようなアホもいるが、Alemanno氏のように正義感の強いマトモな人間はもっとたくさんいる。イタリアというのは、そういう国だ。過去のエントリーでも何度も書いたが、「こういうとき、日本人は助けてくれないでしょ」という場面で、Mizumizuは何度も普通のイタリア人に助けてもらっている。ともあれ、こうした被害を防ぐには?もちろんメニューの値段をしっかり確かめることだ。支払うときにおかしいと思ったら、もう一度メニューをもってきてもらって確認してもいい。ただ…セコンド(メインの皿)に頼む魚介の料理の値段の確認は、本当に難しい。メニューに100グラムでいくら、キロでいくら、というような書き方がしてあることが多いのがイタリアなのだ。たとえば、「舌平目のムニエル、100グラムでいくら」と書いてある感じ。当然、一瞬すごく安く見える。個体の大きさがそれぞれ違うからと言われればそれまでなのだが、日本人にはとてもわかりにくい。ロブスターなどは、殻つきの重さで計算されるし、しかも、目の前で量ってくれるワケじゃないから、結局は「おまかせ」になってしまう。一番ぼったくりがしやすい料理なのだ。シチリア旅行のエントリーでも書いたが、イタリアに住んでいてイタリア語にも堪能な日本人でもダマされる。Mizumizuも何度か頼んだことがあるが、妙に高いな、と感じたことが1度ある。といっても、1万とか、そんなものだったが。でも、それ以来、危険なので、この種の魚介料理は頼むのをやめている。めちゃくちゃ美味しいなら別だが、魚料理に関しては、日本が世界最高ですよ。イタリアもかつては安かったが、今ではレストランも日本より高いぐらい。世界最高の魚料理が食べられる日本国の国民が、わざわざ調理もかなり適当なイタリア国で、値段の不透明な魚介料理を食べる必要はありません。しかも、今はユーロ高だし。ただ、魚介を使ったパスタ(今回のレストランのようなぼったくりは除く)やスープ、それに値段のはっきりしてる魚介をつかったアンティパスト(前菜)なら、怖がることはない。要は「重さで値段が提示されているものに注意」ということだ。そういえば、ローマのヴェネト通りで、ガラスで囲まれたテラスがお洒落なカフェについつい入ってしまい、あまりの高さにビックリしたことがある。しかも、その店、イタリアでは税金は内税のくせに、TAXなどと書いて、何パーセントか忘れたが、料金をさらに上乗せし、その下にTIPを客に書き込ませるシステムにしていた。TAXがサービス料でしょ、と解釈してあげて、TAXの部分にマルをして、TIPは「0」と思い切り書き込んで、愛想笑いが不気味なウエイトレスにわたしたら、「Brava!(えらい!)」などと、あたかも、こっちがチップをはずんで書き入れてくれたかのように(おそらくは周囲のアメリカ人とおぼしきカモ客に対するカモフラージュ行為かと)、わざとらしく叫んでいた。Mizumizuはイタリア語を話すし、TAXが内税だということぐらい知ってると気づいたのだろう。「このあたりでのチップの相場は…」などとは言ってこなかった。ま、後ろ暗いことをしてるのだから、当然だけど。追記:このエントリーを書いてから、通訳として被害者をサポートしたローマ在住の日本人の方のブログを偶然見つけた(こちらから)。こんなに親切な日本人がいるとは、感激!