真実ではない報道に対する日本人の「危機管理意識」
<きのうから続く>浅田選手は最初から、今さらの感もあるがオーサー自身も「オファーはまったくなかった」と否定しているのに、「間接的にオファーを受けていた」「コーチのオファーを受けたことはあるが、断った」「真央側は、今年初めから絶えずコーチの提案を行っていた」。ここまでデタラメを書かれたら、浅田真央の事務所も早めに間違いを間違いと指摘する行動を取るべきだろう。もしそれができないとしたら、浅田真央本人の意思とかかわりなく、水面下でオーサーに接触していた人間が周囲にいたのではないかという「別の疑念」を招くことにならないか。http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/sp20100428f1.htmlOrser says he was asked to coach Mao(以下、一部抜粋)The Japan Times contacted Mao's agent, Mariko Wada of IMG, on Sunday and asked her to provide some clarity on the issue."Very surprising," she wrote in an e-mail of the initial reports. "We never contacted him and never thought about it."Orser did not respond to an e-mail requesting further elaboration.2010年4月28日のJapan Timesのこの記事のタイトルは、「真央のコーチを頼まれたとオーサーが言った」となっている。これに対して浅田真央のエージェントは、「驚いている。オーサー氏にコンタクトを取ったこともないし、考えたこともない」と全面否定。それはそうだろう。浅田真央がオーサーにつく理由はまったくない。次のオリンピックはロシアのソチだ。バンクーバーでここまでコケにされたかつてのフィギュア王国が、カナダ勢をバンクーバー五輪と同様に扱うワケがないのだ。師弟関係の解消が決まり、キム・ヨナの事務所が話を蒸し返したとたん、「(浅田サイトからの)オファーはまったくなかった」と全面否定したオーサーのほうはといえば、当時詳細を求めるJapan Timesからのメールには答えなかったのだ。このときにすぐに「噂は事実無根」と明言しておけば、何も問題なかったはずなのに、あのときは曖昧な態度を取り、今になって否定するとはどういう思惑があるのか。キム・ヨナとその所属事務所の印象を悪くしたいからではないのか? 「浅田真央からのオファー」説を蒸し返したのはキム・ヨナの事務所であって、キム・ヨナ本人ではない・・・と思っている方がいたとしたら、それは違う。http://english.yonhapnews.co.kr/culturesports/2010/08/25/37/0702000000AEN20100825004900315F.HTMLKim said she wasn't always happy with Orser during the four years. On Tuesday, AT Sports said Kim and Orser had been on "awkward" terms since May, after Orser received an offer to coach Japanese skater Mao Asada, Kim's biggest rival. Kim said Wednesday that wasn't the only reason for their separation but she didn't elaborate.この英語の記事は、いかにも韓国系らしく、「オーサーが浅田真央からオファーを受けたOrser received an offer to coach Japanese skater Mao Asada」ことを前提として書いている。それから関係が悪化したことについて、25日にキム・ヨナ自身が、「それが決別のただ1つの理由ではない」と述べたのだ。そう言いつつも「詳細は明らかにしなかった」。つまり理由は浅田真央からのオファーだけではないが、それも理由の1つではあると間接的に認めたことになる。そもそも本人がそう言ったから事務所がそう発表したと見るのが筋だろう。自分の都合のいいときに、自分にとって都合のいい話しかしない人々に対して、どういう対応を取るべきか。考えるべき時だろう。もちろん、今回も浅田選手の事務所はオファー説を完全否定している。http://www.youtube.com/watch?v=EiOscyG9vcMだが、国内メディアにいくら言ってもあまり意味はない。国内の人間はもうすでに「オファーはしていない」ことを知っているからだ。問題は海外のメディアに正しい情報をどう伝えるかなのだ。キム・ヨナが韓国の至宝なら、浅田真央は日本の国宝なのだ。こうした問題は、本人を矢面に立たせるのではなく、周囲が「でっち上げ報道をしている機関」に正規の手続きで、断固たる抗議をしなければならない。間違ったことを報道機関に書かれたら、間違いだと指摘する。当然のことではないだろうか? 摩擦を恐れて黙っていては、あとから摩擦はさらに大きな亀裂に発展する。物事は問題が起こったときに片付けなくてはダメなのだ。自然治癒を待っていても、治らない病に取り付かれた人間は世界にゴマンといる。どうも浅田真央の事務所は、浅田真央のブランド価値に無頓着なのではないかと思うこともしばしばだ。女子フィギュアは今や大きなビジネスなのだ。キム・ヨナの2009年6月から2010年6月までの年収が970万米ドルだったことが先ごろ明らかになった。フィギュア競技の選手としては常識外の数字だ。昔ながらの無防備なアマチュア選手とは違う。競技はあくまでアマチュアなのに、ごく一部の選手は破格の収入を得るプロ。これほどのマネーが動くキム・ヨナブランドのイメージダウンを避けるために事務所は死に物狂いになっている。今回の師弟関係解消に関して、事務所の代表である母親やキム・ヨナ自身が悪者になるのはどうしても避けたいのだ。巻き添えをくった浅田選手にとっては迷惑以外の何物でもない。だが、こうした問題は、「放っておけば、いずれ真実が正しく伝わる」ものではない。4月の時点で、せめて英語のプレスリリースを公式ホームページにのせておけば、海外の報道機関も浅田真央サイドの公式見解を確認できたはずだ。確認しないままデタラメの報道をしたら、それはまたそれで、公式見解をよりどころにしてすぐに抗議もできる。4月の時点の対応が控えめだったために、またもこの話が蒸し返され、いいように尾ひれをつけられている。You TUBEでキム・ヨナ選手の「疑惑の採点」にまつわる動画がアップされると、素早く削除される。ところが浅田選手を誹謗したような動画はいつまでもほったらかしだ。捏造報道に対しては、1つ1つ具体的な対応を取らなければダメだ。いずれ沈静化するのを待っているだけでは、またいつか蒸し返される。こんなくだらない話に無駄なエネルギーを使うのはいかにも面倒だ。だが、面倒だからといって放っておけばいつの間にか、「オーサーとヨナの決別は、やはり浅田真央が割り込んだせい」というトンデモな話が、無知な韓国人ファンの間で定着し、海外でも吹聴されてしまうかもしれない。オーサーがやっと顔出しインタビューで全面否定したといっても、それは一回限りのこと。放っておけばやがて忘れられる。一方的に火の粉をかけられているのに、かけた相手に配慮する・・・それが日本人のおかしな態度だ。それはかえって将来に禍根を残す。これは一種の危機管理なのだ。ブランド価値を高め、良いイメージを維持すること。高級ブランドはその宣伝戦略にしのぎを削る。人気スポーツ選手のマーケティングも同様に考えるべきなのだ。「練習妨害」報道のときも、浅田選手自身が記者からの「本当に妨害したのか」などという無礼な質問に答えさせられていた。選手にこうした負担を負わせるのは間違っている。周囲が素早く断固たる態度を取れば、防げることではないだろうか。