演技構成点での、露骨すぎる順位調整
たとえば、チャン選手の超高止まりの演技構成点について、「スケートがよく滑るから」「ひとかきでの伸びが違うから」などと、スケートの技術の素晴らしさを持ち上げての説明がされてきた。だが、グランプリファイナルで演技審判がチャン選手に与えた演技構成点を見ると、 スケートの技術8.71つなぎ 8.54パフォーマンス8.50振付 8.86音楽の解釈9.00と、「解釈」が一番高いのだ。音楽性に定評のある高橋選手(不調だったが)でさえ、8.25点。それを見事にぶっち切っている。チャン選手のスケートの技術の巧みさは褒める解説者が多いが、音楽表現をことさら賞賛している解説者はほとんどいない。Mizumizuにはチャン選手の表現は、わざとらしい顔芸やワンパターンな上半身のポーズを含め、「老けた劇団ひまわり」とでも言うのがぴったりに思える。にもかかわらず、チャン選手はいつの間にか、世界で比べる選手がいないくらい音楽の解釈に優れた選手に上り詰めたということだ。ここまで来ると、チャン選手を貶めたくてワザとキチガイじみた高得点を出しているのではと疑いたくなるくらいだ。実際、こうして高下駄を履かせれば履かせるほど、一般のファンはウンザリし、元来素晴らしい選手であるチャン選手の世界的な評判は下がっていく。選手を仕分けして勝者をコントロールしようとしているISUに対する、従順なるジャッジの嫌がらせですか?ソニア・ビアンケッティ氏は、転倒しても当たり前のようにチャンに与えられる破格の演技構成点について、「ISU規定のどこかに、お尻で直に着氷したジャンプを演技構成点で過大評価すべしという新しいルールがあるに違いない! そうでなければ、スケートカナダのショートとロシアカップのフリーで3回も転倒したチャンに何人かのジャッジが与えた8から9という得点を誰が説明できるだろう」と痛烈に批判した(全文はこちら)。日本では、ジャンプで転倒しようがパンクしようが世界一の得点を出すキム・ヨナについて、「尻もち加点」などと揶揄する声があったが、同じことをとうとう、オリンピックでジャッジまで務めたフィギュア界の重鎮が発言した。日経新聞の小塚選手のインタビューによれば、ジャッジは「目が合うと対話をしているようで、点をあげたくなる」と言ったらしい。そんなことで選手と対話をしているような気分になるとは、ずいぶん単純な感性のジャッジだ。おまけに点というものは、「あげたくなる」からあげるものらしい。さかんに解説者が、「目ヂカラ」だとか「ジャッジへのアピール」だとかが大切だと解くわけだ。だが、この感覚はそもそも間違っていないか。選手は何よりまず観客のために演技をする。それを公平に審査するのがジャッジのはずだ。そういえば、「ジャッジに愛されている」選手がいて、そういう選手は点が出るのだという。ジャッジの寵愛を受けるかどうかで出る点が変わるなど、いつからフィギュア界はハーレムになったんですか! 説明つかないデタラメ採点をしているから、こんなワケのわからない説明になる。どこまで適当なのか。いい加減にしてほしい。ソニア・ビアンケッティ氏は同じ記事の中で、「スケーティングで『自分は何を得られるか』ではなく、『自分は何を与えられるのか』に立ち帰らなければ、(フィギュア)の魔力は戻ってこない。スケーターはジャッジではなく、観客のために演技をすべきなのだから! スケーターは自由を制限するルールや規定すべてにうんざりしている。自分を表現したり、観客とコミュニケーションを取ったりする時間もない。そして、ISUがあくまでこのことを無視しつづける限り、近い将来私たちが観客を呼び戻すことはまずできないだろう」と強い口調で警告している。確かにヨーロッパでのフィギュアの人気低迷は、テレビの画面からもハッキリわかる。客をリンクに近くカメラに映りやすい席に固めて、そこそこ入っているように見せていることもあるが、カメラが切り替わるとそのほかの席はガラガラ。日本ではフィギュアの人気は最高潮に達しているが、それは素晴らしい選手が身を削るようにして頑張っている姿が感動を呼んでいるからだ。だが、採点には誰もが疑問をもっているし、ウンザリしている。このまま、真面目にコツコツと努力している多くの選手や一般の素人ファンを嘲笑うような恣意的な採点を続ければ(続けるだろうが)、フィギュア人気はすぐに凋落するだろう。全日本で安藤選手のフリーに出た66.08点という演技構成点は、明らかにキム・ヨナ選手の去年のトリノワールドのフリーの構成点65.04点を意識している。66.08点という点は、過去の安藤選手の点としては高いが、去年のトリノワールドの夢遊病者のようなキム選手の演技の点から比べれば低いぐらいだ。あちらは世界選手権、こちらは国内選手権。今ごろになって国内大会で慌ててキム選手と同等の格付けにしても、国際大会で同じように出してもらえるのか。日本スケート連盟の「ロビー活動」のお手並み拝見といったところか(断っておきますが、もちろんこれは皮肉です)。