なんどでも通いたい、湯布院の夢鹿(むじか)
金鱗湖にほど近く、観光客でごったがえす湯布院の目抜き通りのすぐそばにありながら、緑豊かな木々に囲まれて、一種の隠れ家的雰囲気を漂わすレストラン、夢鹿(むじか)。地元でとれたフレッシュな野菜をふんだんに使い、フレンチ仕立てながら和のしとやかさを一品一品に加えた飽きの来ない味を提供してくれる。インパクトはあっても、一度で十分という美味しいレストランもあるが、ここは、創意工夫はもちろんあるものの、家庭料理に近い味でもあり、何度でも通いたくなるリーズナブルなレストラン。ある日のランチ。丁寧に作られたカナッペ。さわやかなドレッシングと素材の組み合わせがとても繊細で上品。それでいて、素朴さも感じさせる味わい。スープの美味しいレストランは信頼できる。夢鹿のスープは、いつも丁寧に作られている。メインの肉料理は、ミルクポークを選んでみた。とろけるような食感が、ヨーロッパで食べたミルク飼育の子牛や子羊を思い出させた。こちらは連れ合いの頼んだ魚料理。デザートのアイスクリーム。特にどうということはなかった(笑)。これに珈琲もつく。 ある日のディナー。野菜がとにかく新鮮。これに価値を見出すのは、案外新鮮な野菜を食べられない東京人のせいだろうか? さっぱりとしたドレッシングに、かぼすが添えられているのがいかにも九州に来たと思わせる。九州に来るといつも思うのだが、レストランで使われている器がいい。唐津、有田、伊万里・・・こうしたビックネームだけではなく、九州には大小の窯元が目白押しだ。伝統に裏打ちされた感覚で選ばれた器は、海外ブランド物に侵食された東京のレストランに慣れた人間からすると、非常に新鮮に映る。九州に来て、豊後牛の美味しさを知った。夢鹿では、和牛と豊後牛を分けて出している。とろけるような食感がお好きな方は、価格は高めではあるが是非とも豊後牛をお試しあれ。この夜のデザートはクレームブリュレとレアチーズケーキだった。どちらも普通に美味しい。木をふんだんに使ったインテリア。豪華なレストランではない。素朴で落ち着く雰囲気だ。湯布院に行くと必ずといっていいくらいに寄るレストランになった。顔なじみになった給仕役のおばさんと話すのも楽しい。くつろいだ家庭的な空気の中で、またあの新鮮な野菜と九州産の美味しい肉料理が食べたい。