今年は徳佐のりんごがにわか全国区に?
山口でりんごといえば、徳佐。徳佐といえばりんご。 山口市内の町中からくねくねとした山道をドライブし、トンネルをいくつか抜けると、田園風景のひろがる高原に出る。そこが徳佐だ。澄んだ空気の中、涼やかな風にのって、まっすぐになった道を走ると、やがて道路沿いにりんご園が見え始める。昔から知っているりんごの村だが、特においしいりんごの産地というイメージはなかった。小さなりんご農家が並んでいる、田舎の中の田舎。ところが、今年は「異変」が起きた。テレビで徳佐りんごが好意的に紹介されたのをきっかけに、小規模農家に注文が殺到。徳佐りんごの創始者家族の経営する友清りんご園には、関東地方からも注文がひきもきらず、はやばやと贈答用りんごが予約も含めて完売するという「騒ぎ」になった。このにわかな人気に、一番驚いたのは現地の農家のよう。毎年の固定客をもっている、小規模経営の園には、「ありがた迷惑なこと」だったらしい。徳佐のりんごが特においしいというイメージをもっていなかったMizumizuも、叔母がテレビを見て、徳佐のりんごが食べたいと言っているとMizumizu母から聞いて、「は?」となってしまった。もともと関東出身のMizumizuにとっては、りんごといえば、長野や青森。わざわざ山口のりんごを重宝する理由も見当たらず、山口に住んでいたころも、むしろ徳佐のりんごより長野・青森のりんごを買っていた。子供のころ、りんご狩に行った記憶もあるが、すっぱくて硬いイメージしかなかった。 「またまたテレビの過剰演出じゃないの?」と思ったりもしたのだが、よく考えれば、贈答用の徳佐りんごは、ほとんど食べたことがない。そこで11月の頭に、徳佐までクルマを走らせてりんごを農家から直接買いに行った。友清りんご園に行ってみたが、贈答用はすでに予約にすべりこむことすらできず、りんご園直営の店で、名月とふじを試食した。寒冷な空気の中で食す、徳佐のりんごは・・・おや、しゃりっと噛むと、さわやかな歯ごたえといい、野性的な酸味の中の、ほのかながらぎゅっとしまった甘みといい、口の中に幸福感がひろがるではないか。え? 徳佐のりんごって本当はおいしかったのか? 贈答用は売り切れでも、家庭用に小分けしたりんごなら入手できた。古いイメージで、過小評価していたが、これは見直さなくては。徳佐のりんごは野性的で、どこかに寂しげなイメージがある。それがどこから来るのかよくわからない。あまり揃っていない外見のせいかもしれない。 硬めの果肉に閉じ込められた、密度の高い酸味の甘みの混在のせいかもしれない。みずみずしい・・・というのとは、少し違う。だが、しゃりしゃりと噛むと、じんわり広がる味わいは、深みがあり、洗練とはまた違った野の個性がある。友清りんご園のような有名な農家の予約はすでに終了したが、徳佐のりんごそのものは、まだこちらで、入手可能のよう。地名こそ違うが、こちらも徳佐と地理的にほとんど変わらない。 送料を考えると、あまり遠くの方に強くお奨めはできないが(失礼!)、ほとんど地元で消費され、あまり広く流通することのない徳佐のりんごを、一度お試しになってはいかがだろうか。