五輪王者となった羽生結弦に必要なのは、グランプリシリーズの勝利ではなく休息
【送料無料選択可!】YUZURU 羽生結弦 写真集 【初回入荷限定特典付き】[本/雑誌] (単行本・ム...価格:1,944円(税込、送料別)大人で賢明なコストナー選手は、グランプリシリーズでしっかり手を抜いた・・・じゃなくて、不調だったが、五輪までにはきっちり調整をし、ちゃんと高い演技構成点を出している。グランプリファイナルに出られなかった彼女が、五輪ではファイナル女王をあっさり上回る。グランプリシリーズは、彼女にはもう不要だったことが、この事実からも明らかだ。若手が世界に名を売るためには、グランプリシリーズは格好の場だが、ある程度実績を出したら、あるいはベテランの域に達したら、ほとんど意味はない。逆に、どこかで調子を落とせば、それをきっかけに演技構成点を下げる口実にされかねない。キム選手は出場機会をできるだけ減らすことで、体力を温存して怪我のリスクを避け、かつ点を下げる理由をジャッジに与えなかった。先日のオープンフィギュアでチャン選手は90点超の演技構成点を出した。五輪とほぼ同水準の点をもらったから、グランプリシリーズは全休しても、ワールドで同様の演技をすれば、当然同じぐらいの点が出てくる。他の選手がグランプリシリーズで消耗している間に、しっかりコンディションを整え、一発勝負にかけるだけだ。もともと何回練習試合をしようと、本番というのは常に誰にとっても一発勝負なのだから。羽生選手も、本当は同じなのだ。彼にはもうグランプリシリーズは必要ない。昨シーズン、ヤグディン以来となる、ファイナル・五輪・ワールド制覇という偉業をなしとげた後となればなおさらだ。怪我でフィンランディア杯の出場を取りやめたが、本当は次のグランプリシリーズも大事をとるべきだ。長期的な視野に立ち、かつ羽生選手の弱点が何かということを考えるならば。そして、そのうえで、本当に彼に五輪二連覇という偉業をなしとげてもらいたいならば。五輪王者がそれなりの演技をすれば、ちゃんと演技構成点は出てくる。だが、無理して試合に出て、そこから調子を崩せば、逆にマイナスの評価がつき、「羽生選手はオリンピックイヤーだけの一発屋」にされかねない。仮に彼の類まれな精神力が、怪我の痛みを一時的に補ったとしても、生身の人間が何年もそれを続けられるワケがない。昨季の日本ワールド試合後、いかにも痛そうに腰を押さえている羽生選手の姿は、とても19歳の若者には見えなかった。佐野稔以来、久方ぶりに出た日本男子でワールドトップを争える選手として注目された本田武史もキャリアの後半は、痛み止めを飲みながらの試合出場だった。高橋選手もあの怪我、小塚選手も深刻な故障で力強いジャンプが跳べなくなっている。次は羽生選手の番だろうか? 同じことを繰り返してほしくない。いくら能力の高い選手でも、本当にいい演技が出来るのは、年に何回もないのだ。五輪後に日本で開催されたワールドにソトニコワ選手は来なかった。コストナー選手は参加はしたものの、フリーのジャンプの出来はひどいものだった。だが、スケート連盟もスポンサーも、是が非でも羽生選手にはグランプリシリーズに出てもらいたいところだろう。奇しくも今日、高橋選手が現役引退を表明したが、今季は浅田選手もいない。集客は羽生選手頼みだ。「選手本人が出たがっている」などと言って、よほどのことがない限り休みを与えないであろうことは目に見えている。羽生選手の大活躍でフィギュアスケートファンになったという人も多いだろうから、やはりどうしたってそうしたファンは王者・羽生結弦の大活躍を見たがるだろう。羽生結弦の人気は本当に凄いとしかいいようがない。初DVD「覚醒の時」(フジテレビジョン・ポニーキャニオン)はオリコンのDVD & Blu-rayランキングで首位を獲得。スポーツ選手として史上初の快挙だという。カレンダーもバカ売れだったし、展示会やら写真集やら、羽生選手の人気を当て込んだ企画は枚挙にいとまがない。多くのファンはフィギュアの試合そのものを見たいのではなく、贔屓の選手の試合での演技が見たい。それが本音だ。だから、高橋大輔、浅田真央に続いて羽生結弦の名前まで消えてしまえば、その大会の視聴率はガタ落ちになるだろう。今の日本フィギュアを覆い尽くしている商業主義は、実際のところ、プラスの面も多くある。引退した選手がテレビで活躍の場を得ているのも、商業主義のもたらした恩恵だろう。メディアが煽るから世間の注目も集まる。注目が集まれば、選手の金銭的なメリットも増える。それも事実だ。全日本選手権に多くの観客が押し寄せるようになったのも、メディアの後押しがあったからこそだ。だが、最高の舞台である五輪で日本選手を活躍させるという、競技としての本来の目標を思うとき(そのためにフィギュアには多額の税金も投入されている)、オープンフィギュアに始まり、グランプリシリーズ参戦、ワールドを経て最後は団体戦(国別対抗戦。2015年もまた日本で開催予定)まであるような日本選手の過密スケジュールは、利よりも害が増えているのが実情であり、何より日本選手のソチでの演技の出来がそれを証明している。