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カテゴリ:Gourmet (Sweets)
誰にでも「なつかしい味」というのがあると思う。Mizumizuの場合は「あわ雪」というお菓子がその1つだ。
子供のころ、静岡県から山口県に引っ越した。そのころ「広島みやげ」と言われて初めて食べたのが、「あわ雪」という卵白を寒天でかためたお菓子だった。ふわっとした口当たりと、口の中でじゅわっと溶ける風合いは初めての体験で、たいそう気に入ったのを憶えている。てっきり、広島の名菓なのだと思い込んだ。 ところが、広島に実際に行ってみてもこの「あわ雪」、あまりお目にかからない。「一体どこのお菓子だったのだろう」と思いつつなんとなく忘れていた。最近になってネットで調べてみたら、意外なことがわかった。広島にも確かに「あわ雪」はあるが、「作り手が高齢」とかでネット上に店舗情報も出てこない。どうやら、広島は広島でも一地方でひっそり(?)作っているらしい。 そのかわり、下関の「松琴堂」というお菓子屋が「阿わ雪」という名前で同じものを作っていた。灯台もと暗し。山口県に10年住んでいたのに、下関にあったとは知らなかった。ほかにもなんと愛知県にあった。静岡にいたころには食べたことも見たこともなかったから、なんとなく中国地方のお菓子と思っていたが、まあ、考えてみれば卵白に寒天、それにお砂糖だけのシンプルなお菓子だから、どこにあってもそれほど不思議ではない。 不思議ではないといいつつも、東京のデパートや和菓子屋ではなぜか見たことがない。楽天のポイントが期限近くなったので、いっちょ「お取り寄せ」してみるかと松琴堂から取り寄せてみた。 萩焼の銘々皿でいただくことにした。このひたすら白く、シンプルな形がいい。 味は、ひとことでいうと「砂糖の甘さ」(笑)。砂糖が貴重品だったころなら、「銘」菓だったかもしれないが、今となっては素朴すぎる甘味だ。だが、ふわっとした口当たりとじゅわっと舌の上で説ける独特の風合いはやはりなつかしい。どうして東京で作っていないのかな? どこにでもありそうなのに、なぜか探すのが難しい。 しかし、山口の老舗の和菓子屋は、なんだって昔の政治家を宣伝文句に入れるのだろう。松琴堂の阿わ雪の説明には、伊藤公(つまり伊藤博文)が「口中で消え行く感じが春の淡雪を思わせ、菓子の中でも王の冠たるもの」と云ったとある。山口市内には創業明治16年の老舗和菓子屋山陰堂の「名菓舌鼓」という、やたら高い求肥のお菓子があるが、それは時の総理大臣寺内正毅(って、いつの話だ?)が、「このようなおいしい菓子であれば、名菓舌鼓と改称した方がよかろう」といったことから舌鼓から名菓舌鼓に名前を変えたのだと宣伝している。 正直なところ、今となってはこれらの和菓子が全国区で指折りの味だとは到底思えないが、昔ながらの伝統の味と格式を変わらずに伝えているのは貴重だ。 下関から取り寄せたので、送料が922円もかかった(笑)。こりゃ高杉… いや高過ぎ。今度は愛知県から取り寄せようかな。一番いいのは東京で売ってるところを探すことなのだけど。どこかで売ってるのだろうか。ご存知の方はご一報を。 しかし、ちょっと不思議に思ったことがある。「あわ雪」が愛知と山口。「外郎」も東京では名古屋(つまり愛知)のものだということになっているが、実は山口にもある。ただの偶然かもしれないが、愛知と山口になにか和菓子のつながりでもあるのだろうか? まあ、外郎に関しては、宮崎や岐阜など全国にあるといえばあるので、特に山口と愛知だけを強調するのはあまり意味がないかもしれないが… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.09.03 13:10:48
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