サイトウ・キネン・ファスティバルに行くにあたって、信州そばでも食べたいと思った。いきなり行っていかにも観光客相手の店でハズレるのも嫌なので、ネットで検索してみた。
行きやすい場所で探しているうち、松本城からもそれほど遠くない場所に「
五兵衛」という店があるのを見つけた。「あらびき・きこうちそば」なる1日10皿限定の十割蕎麦があるらしい。予約が必要だというので、さっそく電話してみた。前日だったが、大丈夫だという。
お昼に行ってみると、15席ほどの店内はすでにいっぱい。外で待っている人もいる。これは期待できそう!
しばらく待って席があき、店内へ。そばのにおいが漂ってくる。お茶もそば茶。予約した旨告げて、新聞を読みながら待つことずいぶん…(笑)。ホームページにも書いてあるとおり、夫婦だけで営む小さな店なので、そんなに早くは出てこない。
「あらびき・きこうちそば」については五兵衛のホームページに詳しく書いてあるからそれを読んでいただくとして、「塩で召し上がってください」というのは、最初「ハアッ?」と思った。しかも「次に、当店自慢の”蕎麦つゆ”を付けてお召し上がり下さい。(くれぐれも蕎麦つゆには、最初から薬味など投入しないで下さいね)」
なんてウルサイことが書いてある(笑)。
「またまた意固地なこと言っちゃって~。蕎麦を塩で食べるって、何だよぉ」と思ったが、実際に運ばれてきた石臼びきの生粉打ち蕎麦を食べて、驚いた。本当に、塩のほうが美味しい。つゆにつけて食べてみたが、蕎麦本来の味が邪魔されるような気がして、ほとんど全部塩だけで食べてしまった。少しつゆでも食したが、塩だけのほうが断然味わいが深く、美味しい。薬味は全然不要。まったく使わなかった。
不思議な蕎麦だ。もちもちするのではなく、どちらかというと硬い食感。「蕎麦って元来こういう味なんだ」としみじみ感じられる野性的な味だ。これは蕎麦界のトリュフかもしれない。たくさんは食べられないし、いつも食べたいわけでもないが、少しで満足できる貴重な味。世に「こだわり」を自称する店は多いが、この蕎麦は本当に職人のこだわりの逸品だといって差し支えないだろう。また食べたいが、ここの普通のせいろもえらく美味しそうだった。韃靼蕎麦もあるらしい。他にも美味しそうな店もあるし、やはり信州・松本。本場の蕎麦処はすごいと脱帽させられた。