自由が丘の「モンサンクレール」もあまりに有名なパティスリー。昨日ご紹介した「アテスウェイ」と方向性が似た、非常に「イン」なスイーツで、長いこと人気を博し続けている。
実は自由が丘は荻窪からも、距離的にはそれほど遠くはなく、あまり渋滞していなければ、クルマで40分ほどで行ける。「セラヴィ」のような有名ヒット商品もあるが、Mizumizuがオススメしたいのは秋のお楽しみ、「タルトタタン」。
タルトタタンというのは、フランス中部ソローニュ地方にあるラモット・ブーヴロンという小さな町でホテルを経営していたタタン姉妹が作ったお菓子のこと。ある日、りんごのタルトを作っていて、焼く時にうっかりタルト生地を入れ忘れてしまった。型の中にりんご、砂糖、バターだけを入れて焼いてしまったというわけ。仕方なく、その上に生地をかぶせてみたら、意外にも、底にたまった砂糖がキャラメリゼのようにりんごを覆い、りんごのタルトとは違う、美味しいお菓子ができあがったのだ。これをパリの「マキシム」がデザートとして紹介し、一挙に広まった。
りんごのタルトより「りんご感」が強い。実はMizumizuは、物好きにも、このタルトタタン発祥の町を訪ねて、町一番というタルトタタンを買ったことがある。シャンボール城で名高いロワール川流域からそれほど遠くなかったので、シャンボールに行ったついでに足を向けたくなったのだ。
クルマで湿ったソローニュ地方の森を抜けて走った。ラモット・ブーヴロンは本当に小さな町で、目抜き通りもすぐにわかり、目指すパティスリーも名前だけで、通りを走っていて一発で見つかった。こんなことは東京ではほとんど考えられない(笑)。
タルトタタン発祥の町で一番という評判のタルトタタンは、意外にも甘さも酸味も控えめな、やさしい味だった。りんごのカタチも残っているし、自然の風味が豊かに感じられた。生地も厚めで素材そのもののもつ美味しさを大切にしていた。
自由が丘の「モンサンクレール」のタルトタタンは、紅玉の酸味が非常に強く出ている。ここまで酸味を前面に出すのは、日本では冒険だったと思う。ちょっと沈んだ、きれいとはいえない色合いで、りんごのカタチはほとんど姿を消しているが、そのかわり洗練された不思議な歯ごたえと舌触りが楽しめる。すっぱいケーキが嫌いな向きにはオススメしないが、りんごのお菓子好きなら間違いなく評価してくれるはず。
モンサンクレールのりんごのスイーツはどれも美味しい。りんごのタルト「プティポンム」もリピートしたくなる味。