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カテゴリ:Gourmet (Sweets)
いわずと知れたパリの天才パティシエ、ピエール・エルメ。パリに行くと必ずサン・ジェルマン・デ・プレの彼の店を訪ねたものだ。
地下鉄のマビヨン駅を東方面から出て、ボナパルド通りを左へ。エルメの店は間口が狭くて中が細長い、典型的なパリのペストリーブティックで、いつもお客でいっぱい。新作の時期には、それを目当てに行列もできるほどだった。 エルメを出てサン・ジュルビス通りに出たら、すぐ左へ歩く。すると教会が見えてきて、その前がちょっとした広場のようになっている。ここのカフェで飲み物を注文して、持ち込んだエルメのケーキを食べる。パリではカフェに別の店で買った物を食べても別に問題はない。ただし、紙皿とフォーク&ナイフは持参していた(笑)。 パリのエルメは、チョコレートはあくまで濃く、しかも何種類かの違ったテイストを必ずミックスさせていた。その組み合わせはいつも新鮮な驚きに満ちていた。日本にもおいしいチョコレートケーキはあるが、チョコレートの組み合わせの妙という意味では、エルメの右に出る人にはまだお目にかかったことがない。 フルーツ系は日本人にとっては香料があまりに強く、ナチュラルな風味に欠けていると感じることが多かった。 そういう優雅な(?)パリでの日々もすっかり遠くなってしまった。最近は仕事に追われまくり、パリどころか最寄の駅ビルにすらいけないような状態(苦笑)。おまけにこのユーロ高で、ただでさえ物価の高いパリに行ったら、おそらく、カフェでコーヒーを飲むのも二の足を踏むんじゃないかと思う(再苦笑)。 さて、そんなエルメだが、東京にいくつか店はあるものの、パリのブティックのような賑わいはどこにもない。以前はパンもやっていたのにやめてしまったし、ケーキの数も心なしか減っている。海外の有名パティシエも東京では苦戦することが多い。だんだんと生菓子の数が減り、チョコレートだけになる、なんてことも多い。レシピを渡して、ブランド名だけでやっていけるほど東京人のレベルは低くないのだ。 新宿の伊勢丹に行ったついでに、エルメの店があるのに気づいた。例によって(笑)あまりお客がいない。サン・ジェルマン・デ・プレでの賑わいを知っている人間からすると、ちょっと寂しいものがある。ひさびさにどうかな、と思って生ケーキを買ってみた。 やはり、さすがの実力。チョコレート系は文句なくおいしい。スクエアなフォルムにスクエアなゴールドリーフのアクセント。シンプルなルックスだけれど、味は複雑。エルメの真髄である「チョコレートの組み合わせの妙」が堪能できる。ナッツの食感もアクセントになっている。パリのチョコレート系より若干あっさりとしているかもしれない。 こちらは日本のピエールエルメの定番。表面のオレンジピールの若干の苦味とレモンの酸味がなんともいえない。何層にもなったチーズの味わいも密やかに複雑。ただ、パリだったらきっと、もっと酸味をきかせるハズ。日本人向けにおとなしくなっている感は否めず。 おいしいことは間違いないのだが、やはり問題は種類の少なさと1つ700円以上という値段だろう。あまりお客さんもいないし、「このケーキっていつ作ったもの?」などと余計な心配までしてしまう(苦笑)。ピエール・エルメをありがたがって食べなくても、日本人の有能なパティシエはいくらでもいるということかもしれない。 ただ、やはり「どっか違うな」と思わせるものがあるのも事実。それは意外なアクセント使いだったり、種類は同じでも少し味わいの違う素材の配合だったりする。ほんの「ちょっとした」違いだ。この違いにこの金額を払ってくれるお客がいるというのも、また東京の寛大さなのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.03.02 00:25:10
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