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テーマ:旅先にて(461)
カテゴリ:Gourmet (European)
オリエンタル・バンコクには自称アジア屈指のフレンチ・レストラン「ル・ノルマンディー」がある。アジア全体での位置づけはともかく、タイでは最高級であることは間違いない。
というワケで一度行ってみることにする。メニューを部屋に持ってきてもらって、どんな料理があるのかチェックした。デギュスタシオン(その店のスペシャリテを少量ずつ出すコースメニュー)が中心のようだが、Mizumizuはこれは頼まない。単純に、食いきれないからだ。といってアラカルトはもっと量が多い。なので、パターンとしては2人で行ったら前菜を2皿頼み、メインを1皿撮って2人分に分けてもらう(それでもすごい量なのだ)。もうこの2皿でお腹はパンパンになる。 アラカルトを見ると、ミルク飼育の仔牛があった。日本では成牛があまりにウマすぎるためか、仔牛にはほとんど誰も見向きもしない。だが、ヨーロッパでは間違いなく仔牛のほうが親牛より高級なのだ。パリの2ツ星(当時)レストラン「ギー・サヴォア」で食べた仔牛の美味しさは忘れられない。夢よもう一度、ということでメインは仔牛にした。 メインがヘビーなので前菜はスープにしようと思っていたのだが、いざ店に行ったら、フォアグラのラビオリを強く薦められてそちらにしてしまった。 デザートはあまり充実していない。タイではチョコレートモノはダメだと分かっていたのでフルーツ系にする。「クレープシュゼット」と「パイナップルのフランベ」が目を惹いた。でもシュゼットはオレンジで別にタイは産地じゃないし、日本でも食べられる。わざわざ食べ比べするより、あまり日本にはないパイナップルのフランベにしてみよう。 午後7時半の予約で、時間キッチリに行ったら、なんとダイニングでウエイターが輪になって朝礼(朝じゃないけど)状態だった。なんだか、素人っぽいな~と思ったのだが、案の定(?)、ウエイターの面々は研修生レベル。とても緊張していて、英語もままならず、見ていて気の毒なほど。とにかく一生懸命なのはよく伝わった。 ミシュランの格付けは、星がつけば何でもかんでもビックリするほど美味しいというわけではないが、サービスの評価は確かだ。星つきレストランで一番感動するなのは、魔法のようにワインのコルクをあけるソムリエだったり、影絵のように音もなく歩くウエイターの優雅な動きだったりする。あの洗練だけは、日本は絶対にかなわない。日本人は味にお金を払うことには慣れているが、ウエイターの職人技には無頓着だ。水をついでいて、あっこぼした、なんてことは(日本ではしばしばあるが)パリの星つきレストランではありえない。 レストランからの眺め。チャオプラヤー川に浮かぶ屋形船。向こう岸の威圧感のある建物はオリエンタルと評価を二分しているペニンシュラ。 アミューズブーシュは卵の殻を上だけ破って中に詰め物をした、よくあるパターン。ツナのなんとかだって説明だったけど、シーチキンとどう違うのだ? とチラっと思う味だった。アミューズブーシュは感動的においしい小品が出てくることが多いので、ちょっと期待はずれ。 連れ合いがアルコールがダメな人なので、ワインはいつもグラス。1000バーツ(3300円)もする最高の赤ワインをチョイスしたのに、あまり美味しくなかった。ちょっと酸化したようなすっぱさがあった。酸味とは違うような気がした。どこかで熱にあたってしまったのではないかと思ったのだが、何をやるのもいっぱいいっぱいの感じの、素人っぽいウエイターさん相手に文句を言うのも弱い者イジメみたいで気が引けて、そのまま飲んだ。赤ワインの渋みや深みが感じられず残念。 このレストラン、ペリエが全部タダだった。このサービスを考えるとワインのハズレも許せる。 パンは美味しかった。アフタヌーンティーを試したときは、「タイには美味しいバターがない」なんて書いてしまったが、前言撤回。パンについてくるバターは間違いなくフランスの最高級バターでした。 Mizumizuの前菜はフォアグラのラヴィオリ、黒トリュフ風味。トリュフはあまり風味がなかった。まあ、季節柄仕方ないわな。フォアグラ味のラビオリというのはユニークだと思った。とても美味しい。ソースはゴルゴンゾーラの香りがした。…って、イタリアンじゃないの? これ(苦笑)。 連れ合いのザリガニを使った一品。ペンネ仕立てなのが、やっぱりイタリアンしてませんか? メインの仔牛。……ギー・サヴォアほどではなかったが、まあまあ。肉質はみずみずしくジューシーなのだが、ちょっと豚肉のようでもあり(笑)。そもそも量が多いわ。これで半人前ですからね。やっぱりラヴィオリじゃなくてスープにすべきだったかも。ソースもオーソドックスすぎて、古い。それと付け合せがフェットチーネだというのも、「なぜ?」という感じ。正統派のフレンチというより、イタリアンとのフュージョンになっている。フランス料理もイタリア料理も愛する者としては、肉とパスタが1つのお皿で共演というのには違和感がある。付け合せはジャガイモのピューレにしてほしかった、せめて。 こちらはコースを選らんだ方用のワゴンデザート。個人的にはワゴンデザートから何種類か取ってもらうスタイルは嫌いなので、頼まないのだが、脇から見てる分には美味しそうで、目を楽しませてもらった。ドームのようなケーキはどうやって切るのだろう? Mizumizuデザートはパイナップルのフランベなので、ウエイターが眼の前で作ってくれる。やっぱりデザートはこれでなくちゃ。このレストランにいる唯一プロといえるウエイター(?)の白人さんが腕を振るう。けど、火をつけるのに100円ライターはいけませんね。火力もちょっと弱くありませんか。 ホテル・オークラの迫力あるクレープ・シュゼットのフランベに比べると、とってもこじんまりしていた。やっぱり、えらいぞ! ホテル・オークラ。 出来上がった焼きパイナップル。芯が少し硬く、周りはしっとりと火が入っている。バニラ風味のソース(他にアニス風味、黒コショウ風味とあって、選ぶのだが、バニラにしてみた)も香り高い。酸味と甘味が渾然一体となった素晴らしい食感と味わい。アイスはダメでした。 「どう?」 とお兄さんが聞いてきたので、 「完璧、素晴らしい」 と褒めちぎった。 デザートを食べると、もうコーヒーも紅茶も入らない。支払いをすませて帰ろうと思っていたのだが、ミニャルディーズを出してくれた。 それがなんと、ドライアイスの煙が下から出てくるという、よくわからない(苦笑)演出。 写真左がチョイ煙ってるでしょ? これが下のドライアイスの煙。のっているのはプティフールとショコラ。しかし、どうにもお菓子自体がダサい。それにあまり美味しくない。タイの焼き菓子ってどうしてダメなんだろう。 朝食にもどっさり焼き菓子が出るのだが、どれも味がイマイチ。日本が美味しすぎるのかもしれないが。 帰りにチョコレートのお土産までくれた。もういいっちゅーの(笑)。帰りは白人のウエイターさんと女性のフロント係がエレベータまでエスコート。感じよく頑張っていた。けど…… 結論:タイではやっぱり、タイ料理を食べよう。 前日に予約をしたのだが、席は入り口から2番目。奥の落ち着いた席はすべて白人。入り口に一番近い最悪の席には中国人かタイ人のおじさんとその愛人風の女性。つまり日本人ではないアジア人。予約の順番で、偶然だったのかもしれないが(経験的カンから言えば、偶然ではない。有色人種を末席に固めてるのだ)、人種で序列をつけているようで、こういうのもちょっと気に入らない。ヨーロッパでは返って、こういう経験はない。 だが人気は確からしく、レストランは平日というのにお客でいっぱいだった。味やサービスが傑出して優れているというより、あまり競争相手がいないんだな、という印象。 おわり お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.06.27 18:14:28
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