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カテゴリ:Travel
サミットを控えて、テレビで「ザ・ウィンザーホテル洞爺」の映像がよく流れるようになった。これを見ると懐かしさにとらわれる。
以前札幌と東京、半々ぐらいの生活を送っていたことがあり、札幌にいるときは、非常に贔屓にしていたホテルだからだ。札幌から洞爺湖までは、中山峠を越えて行くのだが、雪に閉ざされて行きにくくなる冬場をのぞけば、恐らく1ヶ月に一度は行っていた。山頂の巨大ホテルは、かなり遠くからも見える。まるで山がティアラをいただいているようで魅力的だった。 と言っても、宿泊したのは3回ほど。他はドライブを兼ねた食事がもっぱら。札幌から3時間ほどで行ける田舎の洞爺湖は夏のドライブには手ごろだった。そして、このホテルからの眺めは、絶景中の絶景といっていい。東に箱庭のような洞爺湖、西に彼方まで海岸線の続く内浦湾を見下ろす山頂にあるホテル。山の道は途中から、ホテルへ行くためだけのものになるという贅沢さ。道からは羊蹄山も見え、のどかな牧草地と森が一望のもとに見渡せる。これほどの眺めは、世界中探してもそうはないはずだ。だが、残念なことに、山の上なので、必ずしもいつもきれいに晴れ渡っているわけではないということ。運悪く曇ってしまうと、何も見えない。そして、そうなる確率のほうが高い。 それと、絶景には違いないのだが、高いところにありすぎて、部屋の窓を開けることができないし、眺めを楽しむテラスもない。遠くの景色を眺めるだけで、海辺のホテルのように、すぐそこにある自然と一体化したオープンなスペースで心地よい風に吹かれるといった贅沢はない。露天風呂はあるのだが、やはりいかんせん600メートル超の山頂なので、眼前に迫る自然の風景の美しさを堪能できるというものでもない。それに、共同の風呂場は長い渡り廊下を延々と歩かなければならず、部屋からえらく遠い(笑)。 だが、このホテルには眺めのほかにも大きな魅力がある。それが食事。フレンチの「ミシェル・ブラス」ばかりが取り上げられるが、Mizumizuたちはもっぱらベトナム料理の「カロー・ダイヤモンド」のお世話になっていた。ここのシェフの腕は東京でもお目にかかれないぐらいの高レベル。ことに、ホテル再開(再開というのは、一度バブル崩壊に絡んで閉鎖に追い込まれ、名前も経営陣も一新して再オープンにこぎつけるまで、ずいぶん長い時間放置されていたからだ)当初の力の入れ方は素晴らしかった。 残念ながら、徐々に当初ほどの繊細さはなくなっていったが、それでもフランス料理と中華料理の両方の影響を受けて発展したというベトナム料理の味は抜群で、札幌から3時間かけて足を運ぶ価値は十分にあった。加えて、カイザーのパンとジェラール・ミュロのスイーツ。ミュロは現在は撤退したようだが、パリのエスプリを感じられるケーキというのは、札幌ではほとんどなかったから(だが、札幌のスイーツのレベル自体は非常に高い)、ピスタチオやアプリコットを使った、甘く、重く、そして酸味のきいた独特なスイーツもよく買ったものだ。 スイーツといえば、忘れられない思い出がある。ジェラール・ミュロでいくつか生ケーキを買って、箱詰めにしてもらい、札幌へ持ち帰った。ケーキを詰めてくれたのは、見るからに不器用そうなお兄さん。慣れない手つきに不安を覚えたが、札幌に帰って不安が的中したことを知る。大きな箱にケーキをただ入れただけだったのだ。札幌までの道々、ケーキは自由に箱の中で動き回り、すべて転倒して悲惨なことになっていた。驚き、呆れた。東京ではケーキが動かないように間にシキイになる紙を入れたり、底をセロテープで貼ったりするのは常識以前の話だ。あまりに頭に来たので電話で大クレームした。平謝りに謝る年配の責任者。「返金する」というので、「そこまでしなくていい。ケーキの詰め方の基本ぐらいわかってほしいだけ」と言ったのだが、「いえ、返金させていただきます」と誠意を見せる。そこで完全に機嫌を直したのだが、待てど暮らせど返金はされなかった(苦笑)。どうやら忘れていたらしい! というのは、再度電話して、「返金というお話だったのに…」と言ったら、先日と同じ声が出て、「あっ!」だって。まったくやれやれだ。その後「このたびはケーキが転倒し、ご迷惑をおかけしました」という、マジメに書いているのかふざけているのかわからない(たぶんマジメに書いているんだろうけど)謝罪の手紙とともにお金が返って来た。 「ザ・ウィンザーホテル洞爺」のロビーでは、高級ホテルの必須条件「生演奏」ももちろんある。ハープだったり、ピアノとヴァイオリンの二重奏だったり。ロビーはバブルスタイルとでも呼びたくなる豪華さ。とてつもなく高い天井、広々とした空間にイタリア製の重たげなシャンデリア、アラバスターのフロアランプ。風のない夜は外に松明が焚かれ、幻想的な雰囲気に。 泊まってみての印象はと言えば、一番安い部屋(と言っても、朝食なしで4万5000円ぐらいしたと思う)はかなり狭い。もともと会員制のホテルだったせいもあるかもしれないが、土地のない場所柄でもなく、廊下などの共有スペースは無駄なくらい広いので、非常にバランスが悪く感じた。だが、ベットやソファなどの備品やバスルームの快適さは言うことはないし、ベッドメイキングは3回ぐらいやってくれただろうか。とにかく部屋を空けて帰ってくるたびに、キチンと整えられている印象で、その手際のよさには舌を巻いた。 従業員の態度は、特に目立って良くもなく悪くもなく。それなりに訓練はされているが、といってベテランの味のあるホテルマンもいなかった。ソツなく事務的に仕事をこなすが、特にハートフルでもない印象。 そうそう、手荷物を女性スタッフに持たせるのは日本の新しい伝統なのだろうか? 華奢な女性が重そうに手荷物をもって案内してくれたのには困惑した。たまたまかもしれないが、京都の某高級ホテルでも同じことがあった。海外では一度もないことだ。力のある男性のボーイに持たせるべきだと思うのだが、日本人男性客は若く非力な女性スタッフに手荷物をもたせて平気なのだろうか。全体的に従業員の洗練度は東京の一流ホテルには及ばない。一番気になったのは、スタッフがゲストを黙ってなんとなく「じぃ~」と眺めてることがあること。観察されているみたいでいい気持ちはしないし、だいいち田舎臭い。こういうのはだんだんよくなってきたように思うが、サミットでは大丈夫なのかな、とチラッと思わないでもない。 写真は最上階のレストラン近くの女性用トイレ(苦笑)から。ここのトイレは世界一眺めのいいトイレじゃないだろうか(再苦笑)。実は再開当初は図書ルームが近くにあり、そこからこの絶景を誰でも眺めることが出来たのだが、しばらくたつとスイート宿泊客専用のスペースになってしまった。Mizumizuが宿泊したとき、ちょうどそうなって間がなかったのか看板もなく、知らずに入ろうとしたら、女性スタッフが体を張って立ちふさがった(再々苦笑)。別に知らずにちょっと入ったからって眺めが減るわけじゃなし、ああも露骨な態度に出るかね、と呆れた。「あんたたち、金持ちのスイート客じゃないでしょ。入っちゃダメ。しっしっ」というカンジ。職務に忠実なのは結構だが、こういう所作が田舎者丸出しなのだ。 滅多にお目にかかれない絶景、周囲の豊かな自然、美味しい食事、バブリーな施設、スタッフはどこか垢抜けないにしても、国際的な名声を得るにふさわしい条件はそろっているホテルだ。サミットを機会に、ポロモイ山のティアラが世界に向かって輝くことを期待せずにはいられない。バンコクのチャオプラヤー川沿いの高級ホテルには多くやってくる、アラブのお金持ちを取り込むにも、最適だと思うのだが。アラブ地域担当営業スタッフとして雇って欲しいくらい。それくらいこのホテルには惚れこんでいる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.07.03 22:35:13
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