|
カテゴリ:Gourmet (Sweets)
パティスリーだけでなく、ショコラティエにも巷でささやかれる話――パリの名店の東京店は味がよくない。その店のスペシャリテは、パリから空輸でもってきてるハズなのに、「やっぱりパリで買うもののほうが美味しい」。
同感なのだ。 原因はよくわからない。輸送中の温度管理がうまくいっていないのか、あるいはバンバン売れるようなものではないし、長持ちするものでもないので、店頭に置いておく間にいたむのか。 なので、最近はなるたけ日本人ショコラティエの店に行くようにしている。 新丸ビルにある「パレドオール」はお気に入りの店の1つ。以前「リヨンの血をひくショコラティエ」というエントリーで紹介したが、パリの有名店ではなくリヨンの天才・ベルナションの薫陶を受けたというのに惹かれて買ったのだ。 ベルナションは、他のチョコレートメーカーからクーベルチュール(製菓用チョコレート)を仕入れてブレンドするのではなく、自社でカカオ豆を輸入し、クーベルチュールを自社製作するところからやっている。昔ながらの伝統にこだわるショコラティエだ。 インターナショナルな都市パリが日本の東京なら、リヨンは京都。良くも悪くも、フランスらしい頑固さのある街。 三菱地所開発の新丸の内ビルディング(新丸ビル)は、よく三井不動産開発の東京ミッドタウンと比較されるのだが、和のテイストにこだわった東京ミッドタウンの内装より・・・ ヨーロッパ風でありながら、モダンジャパニーズの洗練をさりげなく忍び込ませている新丸ビルの内装のほうが好き。 高い天井にアーチというのはいかにもヨーロッパ風なのだが、天井の化粧ボードは曲線的な装飾ではなく、スクエアなデザインが施されている。吊り下がっている照明器具は重々しいシャンデリアではなく、すっきりとしたシンプルな形の小さなペンダント。それをいくつも長々と吊るし、地震がきても照明の傘が動かないように補助線で留めてある(写真では見にくいが)。そのラインもデザインになっているのが、洒落ていると思うのだ。 アーチは重々しい石ではなく、半透明のプレキシガラスを中から乳白色に照らしている。 三辺アーチでないところが、返ってモダン。このアーチをくぐって「パッサージュ」と呼ばれる細い通路に入り、両脇の店舗をひやかして歩く。床はチークカラーのヘリンボーンフローリング。ヘリンボーンで張るというのはカネかかるのですよ(急に業者みたいなこと言うMizumizu)。 しかし、この素晴らしい内装のビルの宣伝文句が・・・ 「ヨーロッパの街並み、素敵な時間、」って・・・ いつまでたっても、脱亜入欧・・・(苦笑)。 コピーライターの感覚が古すぎる。 新丸ビルのパッサージュは確かにヨーロッパ風だが、それ以上に強烈なモダンジャパニーズだ。「間」を大切にし、極力すっきりとまとめた空間は、デコラティブなヨーロッパの美意識とは明確な境界を描いている。 無理に、というかやや強引に「和」を取り入れなくても、十分すぎるくらい「日本」なのだ。 「ショコラティエ バレドオール」の店内も、直線的な日本風のインテリアと、シャンデリアに代表されるようなデコラティブなアイテムがモダンに共存している。 まあ・・・ 最近よくある内装といえば、そう。 週末の午後だというのに、客が少ない・・・(心配)。実は近くの丸の内ブリックススクエアに「カカオ・サンパカ」というスペイン王室御用達ショコラテリアがこの9月にオープンした。そちらは連日行列ができてる。チョコレート目当ての客を奪われているのかもしれない(本当に、新しモノ好きの日本人)。 縦に区切られた窓から、並木の道を眺める。こういう風景に、たまらなく今のトーキョーを感じる。 パレドオールは、最初のうちは純粋に創作チョコだけでやって行こうとしていた感があったのだが、なかなかそれだけでは大変だったのか、イートインのカフェコーナーを設け、戸外にもテーブルと椅子を並べて飲み物(野外席はドリンクのみ)を出している。 室内席で、チョコレートモンブランを注文。一番上にマロン風味のチョコレート、その下はヘーゼルナッツ(ノワゼット)の香り高いミルクチョコレート。そして薄い板チョコで区切った(食べていくと出てくる)下にはヘーゼルナッツがざくざく。 とてもリッチで、食べ応えバッチリ。味も絶品とまでは言わないが、これぞ正統なチョコレートケーキという感じ。上に添えられているカールした極薄チョコレートも、パリッとはじける食感がいい。 ランチタイムには、1000円でコーンスープとパニーニ、コーヒーとチョコレートがつくセットメニューが食べられる。 しかし、またここで一言。 なぜに、これがパニーニ(Panini)!? パニーニとはパニーノというイタリア語の複数形。日本語では「サンドイッチ」と訳されることが多いが、ふつうイタリアでパニーニと聞いたら、こちらのサイトののIl Paniniの写真のようなモノをイメージする。 パレドオールで出してる、四角い食パンを焼いて中にチーズやらハムやらはさんだものは、イタリアでは単に「トースト」と言う。 たぶん・・・ トーストというと、日本では食パン焼いて、バターやらジャムやらつけて食べるイメージなので避けたのか・・・な? あ、ちなみに肝心の味は、注文して食べた連れ合いによれば、たいしたことなし(苦笑)だそう。 カラメルノアール(キャラメル風味のガナッシュにビターチョコレート)のボンボンショコラにコーヒーがついてくる。 この場所で1000円で、パニーニ(トースト)と野菜、スープ、チョコレート添えコーヒーがついてくるというのは安いと思う。 しかし、やはりパレドオールのイチオシは・・・ ベルナションのスペシャリテそのまんまの「パレドオール」2種と秋のスペシャリテ「和栗」(写真一番手前)。 パレドオールはノワール(ビターチョコ)とラクテ(ミルクチョコ)の2種類がある。いずれもガナッシュをチョコレートでコーティングしたもの。和栗も和栗を使ったガナッシュをチョコレートでコーティングした派生商品。 1つ300円ほどで、日持ちは1週間ほど。 しかし、このチョコレートは本当に繊細だ。「20度以上になるときは、冷蔵庫の野菜室に」と言われるが、たとえ野菜室でも冷蔵庫はやめたほうがいい。あっという間に香りが飛んでしまう。といって、ヒートアイランド東京。秋でも日中の室温は、平気で20度を越える。すると、柔らかくなってしまい、風味が落ちる。 一番美味しく味わう方法は、「すぐ食べること」。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.24 00:58:42
[Gourmet (Sweets)] カテゴリの最新記事
|