2002年「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」で日本チームを初の優勝に導いたパン職人、
菊谷尚宏。
その彼が、今年10月北米ワイルドブルーベリー協会主催の「ワイルドブルーベリーレシピコンテスト」でべーカリー部門の優秀賞を受賞した。
こちらがその作品「カレ・ド・ミルティーユ」。「カレ」の名のとおり、全体は四角いのだが、切ってみると、ブルーベリーピューレとクルミがふんだん。
パン生地には自家製ルヴァン発酵種を使用。酸味が強いのかと思いきや、そこはさすが日本人ブーランジェ。
酸味はかなり控えめで、ほのかに香る程度。基本的には酸味の強いパンを好む非国民チックなMizumizuなのだが、これはこれでほのかさが深いとうなる。
ブルーベリーピューレも思った以上に味が控えめ。濃縮された味なのに上品。クルミもしかり。ナッツは歯ごたえのある素材なので、パンに入れると突出してしまうことが多い(それはそれで悪くない)のだが、このクルミはそれほど極端な主張をせず、パン生地のしっとり感を高める役割に徹しているよう。
こんなにびっしり果実のピューレとナッツが入っているのに、味が酸味だけに偏らず、ナッツの硬さがさほど気にならず、すべてがうまく溶け合っている。パンの生地にうっすらとした甘みも感じる。一口食べてのパンチはないが、ジワジワと美味しさがわかってくる。
パン自体も重からず軽からず、生地のふんわり感を残しつつ、噛み応えもあるところなど、まさに和洋折衷。すみずみにまで、「模倣をオリジナルに変える」日本人的感性を感じる。
素晴らしいです。