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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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Tomy's room Tomy1113さん
2009.12.05
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カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)
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<長くなったので、きのうの日付に前半を移しました>

ライザチェックは、「演技・構成点がカギ。トリノのときとは、違うルールになってしまったようだ」と言っている。

何を捨てて、何を追求するか。その見極めをした選手のほうが、今のルールでは強い。そもそもキム・ヨナ選手が、オーサー・コーチについたのは、トリプルアクセルを習得するためだ。ルールに助けられたとはいえ、キム選手が3Aに固執していたら、今の強さはない。

今回のオリンピックでは、4回転を跳ぶプルシェンコやランビエールが出てくる。だから、4回転がないと男子の金メダルはない――恐らく日本人の多くは、そう考えている。

そうかもしれない。だが、そうでないかもしれない。

プルシェンコもルッツを失敗するようになっているし、フリーのジャンプ構成は、前半に重点を置いたものになっている。しかも3回入れてよい連続ジャンプをロシアでは2度しか入れなかった。彼はつまり、「失敗している姿」を見せないように、彼としては確実なジャンプ構成で試合に臨んだのだ。そのレベルが高いのは、彼の身体能力が抜群に優れているからだ。だが、技と技のつなぎはかなりの手抜きだ。やたらと走っているだけに見える。事実、地元での試合だったにもかかわらず、演技・構成点は思ったほど出なかった(もちろん、次のオリンピックがバンクーバーではなく、ソチだったら、もっと点は出たかもしれないが)。

ランビエールは痛みを常時かかえている状態で、4回転は跳べるが、苦手のトリプルアクセルがほとんど決まっていない。

一番大切なのは、誰かに勝とうとして、今の自分の実力以上のジャンプ構成を組むのではなく、失敗しないジャンプ構成を見極めて、ミスのない「解答」をジャッジに出すことなのだ。理想(あるいは希望)と現実をごっちゃにして、自分の力を過大に評価してはいけない。ミスが少なければ演技・構成点も上がってくる。少なくとも、下げにくくなる。

難度の高いジャンプ、ジャンプで頭がいっぱいになり、音楽の表現がおそろかになると、とたんに点を下げられる。

その見極めがモロゾフの弟子以外の日本選手には不足している。鈴木選手は例外で、減点されたジャンプは次から外すなど、臨機応変に対応している。バランスよくジャンプが跳べる選手の強みでもある。

結果の出ない選手たちは、ただ「次につながる、次につながる」と言って、ミスの多い演技を繰り返す。「次」とはいつなのか? オリンピックに向けての調整だとは言っても、その前の試合で結果が出ないと、ジャッジの印象は悪くなってしまう。

オリンピックでは、難しいことのできる選手が勝つのではない。失敗しない選手が勝つのだ。

練習ではできていても失敗するのがジャンプ。練習でも確率の悪いジャンプが、最高に緊張するオリンピックで突然すべて成功するとでも? もちろん、その可能性だってある。100分の1か、1000分の1か知らないが。だが、そんな火事場のバカ力頼みでは、戦略とはいえない。

難しいことを失敗なくできれば、それはそれで素晴らしい。だが、あのプルシェンコでさえ、最初のオリンピックでは大技に失敗している。

安藤選手、織田選手は、大技に挑戦しないで、ここまでの結果を出してきた。もちろん大技の練習もしている。

「大技は持つ必要がある。だが試合で使うかどうかは別。ジャンプはあくまでエレメンツの1つ。総合力が試合を決める」とは、モロゾフの弁。

現行の日本選手に不利なルールと判定を、一般紙のインタビューで真っ向から批判したのはモロゾフだったが、その実、モロゾフが一番、現行のルールに選手を適合させている。

批判すべきことは批判する、だがその一方で、やるべきことをやる。

Mizumizuが一貫してモロゾフを評価するのは、彼が多くの日本人のように長いものに巻かれるタイプではなく、批判すべきことを批判するために敵が多いにもかかわらず、こうやってやるべきことをやり、結果を出すからだ。

安藤・織田選手に共通しているのは、ジャンプ以外のエレメンツの取りこぼしが少ないことだ。そしてジャンプは丁寧に、加点がつくように跳ぶ。

「理想追求型」で、ある程度の結果を出している数少ない選手がアボット選手だ。彼は昨シーズン、4回転を跳ばない試合では強かった。年が明けてから、さらに上のレベルを目指して、4回転を入れ始めた。

最初は一番悪いパターン。4回転も失敗し、他のジャンプも失敗する。

今季は、少しずつよくなっている。4回転が入り、かつ他のジャンプの失敗も少ない。あるいは4回転を失敗しても、他のジャンプの失敗が少ない。それでも、まだまだだ。昨シーズンのようにファイナルを制することはできなかった。

こういう状態だと、返って悩むかもしれない。ウィアー選手のように、4回転がダメなら、いっそさっぱり諦められるところだろう。アボット選手はウィアー選手やライザチェック選手のように顕在的・潜在的なエッジ違反もなく、ライザチェック選手が苦手とする3Aも得意な選手(そのかわりルッツで失敗が出やすい)。

佐藤有香コーチはどちらの決断をするのか。オリンピックでは、彼女とアボットの戦略に、Mizumizuは非常に注目している。

アボット選手は、もともと4回転なら跳べる選手なのだ。2季がかりで試合に入れようとして、それでもうまくいかない。

「大技を入れて、他のジャンプやエレメンツをまとめる」

というのが、どれほど「とてつもなく」高いハードルかわかると思う。

自分の今のレベルを冷静に見極め、ミスを防ぐ。確率が低いことはやらない。そのうえで、自分のもっている「他の選手にはない」長所をどれだけアピールするか。

それを見極めるインテリジェンスと決断する勇気が、日本選手には欠けている。ライザチェックは、4回転を捨て、その代わり、自分の長い長い手足を十二分に使った演技でアピールしている。4回転で体力を消耗しないから、最後のハードなステップもやりこなす力がある。

「あなたのもっている強みを活かしなさい」とライザチェックに言ったのは、そもそもタラソワだったというが、実に的を射ている。

モロゾフはスケート連盟を批判するとか、高橋選手から織田選手に乗り換えたとか、日本人は悪口を言うが、気がついてみれば結果を出しているのは、彼ばかりではないか?

特に今季の織田選手のプログラムは、実によくできている。ショートはスピードにのって、「怒り」を表現する。フリーではうってかわって、楽しさと哀愁を込めたチャップリン・メドレー。

織田選手の表現力について、モロゾフは必ずしも褒めていない。表現できる幅が広くないから、このフリーのプログラムを選んだと言っている。織田選手の個性にはまっているから、「無理して作っている」印象がない。

また、フリーはプログラムにかなり余裕がある。そのスカスカ振り(苦笑)は、キム・ヨナ選手のフリーからアイディアを拝借したのではないかと思うくらい。

曲の転調をうまく使い、観客を飽きさせない。「お休み」しているところも多いのだが、そこはマイム的な動作で雰囲気を出す。

それと「ポーズの美しさ」の多用。織田選手はもともと日本人としてはプロポーションがよく、身体のラインはきれいなほうだ。そこで、バランスのとれたポーズを随所に入れる。手をどこに置き、足をどう上げるか――ポーズの美しさは、バランスのよさだし、「感性」や「センス」はさほど必要ない(踊るとなると、話は別だ)。それは教えられれば、ある程度誰にでもできる。

キム・ヨナ選手に似ていると思うのは、たとえばステップのループ(ジャンプのループではない)の部分。軸足は深いエッジにのり、スピードをうまくコントロールして、緩急をつけてクルッと回る。非常にきれいで、見ごたえがある。

織田選手はよく教えられたとおりに、こなしていると思う。

だが、それは褒め言葉でもあるが、けなし言葉でもある。ファイナルで2位という素晴らしい成績を挙げた織田選手には申し訳ないし、これはあくまで主観的な印象論だが、高橋選手のように、すっと音楽の世界に入ってしまう天与の才能というのは、織田選手にはあまり感じられない。

だが、今のルールは、優等生が天才に勝てるルールなのだ。ジャンプ以外のエレメンツでもレベルをきちんと取る。小さなミスを防ぐことが、大きな点差につながってくる。

Mizumizuはもちろん、採点が公平などとは思っていない。「思惑」だらけの判定・点数だと思っている。パンドラの箱の開いたあとの世界は、思った以上に酷い。だが、今からではもうルールは動かせないし、組織の裏で何があったか、なかったかなどは、外部の人間にはわからない。

言っても無駄なことに文句をつけるのは、時間の無駄だ。今から出来ることが何なのか、考えるほうが先だし、そもそもそれしかできないのだ。

今季の点の出方を見ると、1つや2つの試合で一喜一憂するのが、いかにバカバカしいかわかったと思う。

フィギュアがいつからホームアウェイ形式になったのか知らないが、今季は特別その色彩が濃い。カナダでオリンピックが開催されるということは、カナダを拠点にしている選手には有利になる。これもMizumizuが予想したとおりだ。

メダルに向けて明らかにお膳立てされている選手はいる。だが、そのこと自体は他の選手やコーチにはどうしようもない。オリンピックは商業的なイベントだし、フィギュア(特に女子)は、金メダルが莫大なカネになるウインタースポーツでは数少ない競技の1つなのだ。

点を出さないジャッジに、出せと強要することはできないが、選手がいい演技をすることはできるはずだ。ジャンプやエレメンツのミスを出さず、自分の良さを迷いなくアピールする。そのために邪魔になる、不確実な大技は捨てることだ。もちろん、「できる」自信があるなら入れていい。その結果の失敗なら、仕方がないではないか。問題は「見極めること」なのだ。

それにもう1つ、「結果」や「メダル」を気にしていては、それはできなくなるということ。

モロゾフは、昨シーズンの終わりに何と言っただろう? 「このままでは、(オリンピックで)日本選手はメダルなしだ」。もし、モロゾフがいなかったら、いや、モロゾフがいても、この「予言」が本当になるかもしれない・・・グランプリシリーズの結果を見て、思わなかっただろうか?

どの選手にも弱さと強さがある。キム・ヨナ選手の3ルッツ+3トゥループは、予想よりはよいが、今回はショートではセカンド3Tがダウングレード、フリーではダブルで2回とも決まらなかった。2A+3Tの3Tも、だいたいいつもギリギリなのだが、今回は文句なくダウングレード。

ロシェット選手は最初の連続ジャンプがアキレス腱。あれが決まらないと、ガタガタっと崩れてしまう。

一方、安藤選手はあえて「深化」と呼びたいぐらい、表現力を磨いてきている。今回の『レクイエム』は、今季の女子の中で、Mizumizuが最も好きなプログラムだ。女性らしい美しさと上品さに、溢れる泉のような豊かな情感。

最後のステップは、足遣いより、むしろ一瞬一瞬のポーズに見惚れてしまう。しかも、試合ごと、見るたびごとに、深みが増してくる。まさに安藤選手でなければ演じられない世界。

選手の夢の舞台であるオリンピックまでもう2ヶ月。日本選手は、「メダル、メダル」という欲にとらわれずに、自分の魅力を十二分にアピールする演技をバンクーバーの舞台でしてほしい。







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最終更新日  2009.12.06 18:14:53



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