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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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Tomy's room Tomy1113さん
2009.12.26
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カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)
全日本男子フィギュアが終わった。

一言で印象を言えば、高橋大輔選手という人は、本当に、真から「華」のあるスケーターだということ。彼が滑ると他の選手はすっかりかすみ、ほとんど「前座」になってしまう。今季のショート「Eye」とフリーの「道」は、高橋選手のこれまでのプログラムの中でも傑出している。「フリーをまとめることさえできれば」という前提つきだが、フィギュアスケート史に残るエポックメイキングな傑作になるだろうに。一方で強く感じたのは、今季はやはり、競技者として本当に強いのは高橋選手ではなく織田選手だということ。

今回の試合で、Mizumizuが注目していたのは・・・

高橋選手のフリーのまとめ具合
「まともに滑れなかった」とモロゾフに酷評されたファイナルの次の試合、今季5回目の試合で、どれだけの演技が出来るか。もっと具体的に言えば、次のような優先順位になる。
1)体力がもつかどうか(実際には、スピンもステップもジャンプも、これにかかっていると言える、極言すれば、問題はそれだけなのだ)。
2)スピンとステップでのレベル取りができるか。ステップはレベル3を揃え、スピンもできればレベル3以上を揃えたい。世界トップ選手と比肩するだけのレベル取りに彼はこれまでしばしば失敗している。
3)スピンでのGOE(質の評価)での減点を防げるか。難しいポジションで回るあまり、軸が広がってしまったり、流れたりでGOEで減点されることがあった。これは非常にまずい。
4)ステップやスケーティング部分で、足がついていくか。ときどき変なところで躓いたり、エッジを引っ掛けたりする小さなミスが目立つ。
5)4回転を入れることは公言している高橋選手だが、練習での成功率を聞くかぎり、本番で決めるのはまず9割がた無理。となると、4回転を入れたあとの失敗パターン「次に難しいトリプルアクセルで失敗する」「後半のいつも跳べるジャンプで失敗する」をどれだけ防げるか。特に高橋選手の場合、後半の連続ジャンプのセカンドと単独のループが危ない。

織田選手
織田選手に関しては、高橋選手に比べると課題はかなり少なかったのだが・・・
1)4回転は成功するか否か。練習での成功率も高橋選手より高いし、昨シーズンの世界選手権で成功させている。もし、今回の全日本で4回転を成功させる選手がいるとしたら、それは織田選手だと思っていた。
2)4回転を入れたあとの失敗のパターンを防げるか。特に今季なかなか2つ揃って決められないトリプルアクセルをきちんと降りられるか。
このぐらいだったのだが、あとは強いて言えば
3)スピンをレベル3以上でまとめたい。

高橋選手に比べると、課題は非常に少ない――ファイナルで銀メダルの実績が示すとおり、完成度がもともと高いのだ。


小塚選手
小塚選手は、「理想追求型」の最も悪いパターンに、ファイナルのかかったNHK杯ではまってしまった。次々とジャンプを失敗した悪夢を払拭し、今回ジャンプを立て直せるかどうかに着目した。具体的には・・・
1)小塚選手にとっては、もうどう考えても「バンザイ突撃」でしかない4回転を外す勇気があるか。あるいはまだ固執するのか。
2)2度のトリプルアクセル。これも去年なかなか2つ揃えて成功できなかった。そして、後半のジャンプはちゃんと降りられるか。
3)ステップのレベルを2から3に引き上げられるか。

ファイナルフリーのプロトコルはこちら

http://www.isuresults.com/results/gpf0910/gpf0910_Men_FS_Scores.pdf

全日本フリーのプロトコルはこちら

http://www.skatingjapan.jp/

なので、見ていただければわかることだが、高橋選手に関して言えば、ファイナルよりは段違いによかったと思う。だが、厳しい言い方をすれば、それは「まともに滑れなかったファイナルに比べれば、だいぶまともに滑れるようになった」というだけで、あのジャンプのミスの多さで五輪でのメダルを期待するのは、かなり難しい。

今回フリーでも高橋選手が織田選手の点を上回ったのは、演技・構成点を「爆上げ」したからだ。

フリー 
高橋 技術点79.98+演技・構成点88.3=168.28
織田 技術点85+演技・構成点80.7=164.7

こういう演技・構成点の付け方をみると暗澹となる。演技・構成点は基本的に主観点なのだ。1位と2位で8点もの差。これでは、エレメンツの質をあげようとコツコツ努力をしても報われない。去年の全日本の男子フリーで1位の織田選手と2位の小塚選手の演技・構成点の差は2.4点だった。

繰り返すが、点や点差が妥当か妥当でないかという論争は、まったく不毛なのだ。ファンであれ、ジャッジであれ、自分が評価する選手の点ならいくら高くても「妥当」あるいは「やや高め」程度に思える。自分が評価しない選手の点が高ければ、「高すぎる」「非常識」と感じる。

点差についても、「質や出来に差がある」のはわかるにせよ、その差を数字化して「2点差」なら妥当か「5点差」なら妥当か、「8点差」でも妥当かという話になれば、まったくの水掛け論だ。

ということは、オリンピックで、「素晴らしい振付で、素晴らしい演技をした」とジャッジが判断すれば、日本選手を低く、チャン選手や、あるいはライザチェック選手を「非常に高く」付けられても、文句は言えないということにもなる。

「道」に関して言えば、もちろん類のないほど素晴らしいプログラムだし、高橋選手ほどの演技性・パフォーマンス力を発揮できる選手は、ほとんど見たことがない。だから、88点という演技・構成点も妥当だと言えば妥当と言えてしまうが、それはあくまで「ホーム」での話。パトリック・チャンの本拠地であるカナダでは観客のノリも違ってくるし、同じような評価をしてもらえるかどうかわからないのだ。

素晴らしいパフォーマンスをしても、点が「変に低く抑えられている」選手はいくらでもいる。

今回の全日本では、「高橋選手を勝たせたい」という力学が働いたのは明らかだろう。そもそもシンボルアスリートがオリンピックに出ないのでは、話にならない。ショートで見てるファンが「はあぁ~?」とひっくり返るような点差で2位以下を引き離し、フリーでは演技・構成点を高くして、ミスが出ても逃げ切るというのは、キム・ヨナ選手やロシェット選手のパターンにそっくりではないか。

採点はこんなもの。なので、実際のところの選手の課題克服具合はどうだったか見てみよう。

まず高橋選手
1)体力――ファイナルより段違いによかったが、結論としては、やはり体力不足が後半のジャンプの乱れに出た。だが、その他は大きなミスもなく、情感もこもった素晴らしいパフォーマンスだったのではないか。正直に言うと、Mizumizuの予想を遥かに超えた出来だった。
2)スピンとステップのレベル取り。これも文句なし。国内大会で、ある種の「力学」が働いたことを考えると、このレベル認定をそのまま信じていいものか、若干不安はあるし、ショートのステップのレベル4は、「お手盛り」感があるが、あれだけアラの目立ったスピンを、ミスなくまとめてきた。素晴らしい。驚異的だ。
3)スピンでのGOEマイナス。ショートとフリーでまったくゼロではないが、これだったら問題はないと思う。Mizumizuが個人的にいつも非常に気になっていた、フリーのFCCoSpの最後の軸の流れも、今回はなかった。
4)変なところでの躓きやエッジの引っ掛けも今回は気にならなかった。よく気持ちをコントロールしていたと思う。
5)4回転を回りきれないのはわかっていたが、転倒しなかったのにはホッとした。続く2つのトリプルアクセルも素晴らしい出来。だが、やはり後半になるとジャンプの着氷が乱れる。心配していたループはやはり減点着氷。ルッツもダメ。連続ジャンプは3F+3Tをなんとか降りたのみ。気になるのは、ルッツを1つ連続にできなかったことよりも、片方のルッツについてしまった「!」。アテンションとはいえ、エッジ違反を取られたのは初めてではないだろうか。これは要注意だ。何度も言うが、今のルールは、「減点されない選手が強い」。
高橋選手はトリプルアクセルを前半に跳んでしまうかわりに、ルッツを2つ後半に持ってくる。トリプルアクセルは体力のある前半なので跳べるが、次に難しいルッツは後半跳べなかったと見るべきだろう。つまり、「4回転を入れるとはまる失敗のパターン」から今回も抜け出せなかったということだ。

織田選手
1)4回転は回転不足のまま転倒。非常に悪い結果だった。
2)だが、それ以外のジャンプは全部降りた。課題のトリプルアクセルも2つ決めた。強いて言えば、4回転の直後のトリプルアクセルが低くなっていたように思う。だが、「お休み」をうまく入れた後半では、逆にジャンプの高さを取り戻し、結果、すべてのジャンプに加点がつく、超・超素晴らしい出来。
4回転を入れるとはまる失敗のパターンに、まったくはまらなかったのだ。高橋選手とはここが違うし、この差は、ハッキリ言ってとてつもなく大きい。プルシェンコを除く、現世界のトップ選手が、ほとんど全員このパターンから抜け切らずにいるのが現実なのだから。
3)スピンもステップも文句なしのレベルを揃えた。

小塚選手
1)4回転はさすがに外してきた。遅きに失した感はあるが、「基礎点の高いジャンプで点を稼ぐ」という理想が、幻想だと気づいたのは収穫だろう。4回転というのはただの1つのエレメンツに過ぎない。武器になるか足を引っ張るか、きちんと見極めなければ、プログラムはキズだらけになってしまう。今回は目に見えてプログラムの完成度が上がった。
2)2度のトリプルアクセルを見事に決めたのは最大の成果。だが、後半のジャンプはダブルになったりシングルになったり、おまけにフリップにアテンションが付いた。小塚選手は、今季は確か2度目?。エッジ違反判定は今年、どうも厳しくなっている気がする。これも気をつけないといけない。
3)ステップのレベルはSlStがショート、フリーともレベル1。これはいけない。ショートはちょっとしたアクシデントのせいかもしれないが、フリーが大問題。これも体力不足が原因かもしれない。どちらにしろ、まだステップのレベルが揃えられないというのには、頭を抱えてしまう。

要するに、競技内容としての完成度が高いのは、どう考えても織田選手なのだ。フリーの「チャップリン・メドレー」は、織田選手の欠点を補い、長所を目立たせるようよく練られた作品だと言える。

だが・・・まあ、これは主観もあるかもしれないが、高橋選手の「道」が始まると、すっかり色褪せる感がある。「道」は振付もシングル選手のフリーとしては革新的だが、やはりパフォーマーが天才なのだろう。

モロゾフはファイナル後に、安藤選手の「クレオパトラ」を自画自賛した。計算高いモロゾフらしい上手いプロパガンダだ。つまり、プログラムというのは「評判」で印象が変わってくる。ファイナルで安藤選手のフリーの演技・構成点は、キム選手にかなり接近した。そのタイミングを見計らって、「評判」をさらに高めようとしているのだ。

モロゾフは、「高橋選手がフリーを滑りきれないことはわかっていた」とも言っていた。そうだろうと思う。実際、ファイナルのフリーは体力がまったく持たずに傷だらけ。だが、「道」に対して、自作の「チャップリン・メドレー」が優れているとは、間違っても口にしない。というより、できないのだ。短所を補い、長所を際立たせるという振付の熟練度では文句のつけようもないにもかかわらず、結局のところ、織田信成の演じる喜劇王の物語は、高橋大輔の道化師の物語には及ばない。私見では、大人と子供ぐらいの表現の力量の差がある(織田選手のファンの方、ごめんなさい)。

う・・・文字制限・・・続きは明日





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最終更新日  2009.12.27 11:35:24



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