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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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2009.12.28
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今や世界一層の厚い全日本女子。この中でたった3人を選ぶというのは非常に残酷なことだ。特に中野選手。今回の五輪には個人的に行って欲しい気持ちが強かったのが、今季フタを明けてみたら、鈴木選手のほうが調子も成績もいい。全日本では僅差だったが、最終的には鈴木選手に軍配が上がった。ただ、中野選手も世界選手権に選ばれたということなので、こちらでメダルを目指して頑張って欲しい。

女子の印象を一言で言えば、やはり「減点されない選手が強い」。もっと言えば、「ダウングレードとエッジ違反を取られない選手が強い」ということだ。

今回結果の出なかった中野選手、村主選手に共通しているのは、シーズン前に3回転+3回転などの高難度のジャンプに意欲を見せていたことだ。

対して鈴木選手は、徹底したダウングレード対策。昨シーズンの国際大会でダウングレードされたジャンプを組み替えたり、1つ1つをきっちり跳ぶ意識を高めたりして、極力ダウングレードを取られないジャンプ構成で来た。

エッジ対策もすばやい。今季ルッツにwrong edge判定が下るや、ショートから外してループを入れてきた。基礎点は下がってしまうが、「加点・減点のマジック」を考えると、基礎点の高いジャンプを入れるより、減点されずにきちんと降りてこられるジャンプを入れるほうが強いのだ。ルッツにもフリップにも連続ジャンプをつけることができ、かつバランスよくジャンプを跳べる選手の強みだ。単独ループは最初に入れたときはダウングレードされたが、次からはきちんと回ってきている。フリーのルッツも2回を1回に変更した。こういうことが臨機応変にできるところが凄い。

驚いたのは2A+3Tの連続ジャンプをやめて、3Tからのシーケンスで2Aをつないで、3Tのダウングレードを防いだことだ。シーケンスは基礎点では連続ジャンプには劣り(後半の2A+3T連続ジャンプは基礎点8.25点、後半3Tから2Aのシーケンスでは6.6点)、加点は付きにくいが、1つ1つをきちんと降りてしまえば連続ジャンプよりダウングレードの危険性は少ない。これには、本当に驚かされた。ショートにもフリーにもダウングレードが1つもないというのは、素晴らしいの一言(実は、ちょっと怪しいと思ったジャンプはあったのだが・・・)。

・・・浅田選手もこの手を使えばよいのに・・・実は昨季の終わりぐらいから個人的には妄想していたのだ。浅田選手は連続にするとどこかでダウングレードを取られやすい。昨季からそれが目立ってきているし、今季はあからさまに取られている。今回2A+2Tの2Tさえダウングレードされた。今さら遅いかもしれないが。跳躍力のある浅田選手なら3Tにシーケンスで2Aをつけることも、2A+2Aのシーケンスにすることもできるだろうに・・・鈴木選手もシーズン途中で変えることができるのだから、ジャンプの組み換えが苦手な浅田選手とはいえ、シーケンスに変えることは難しくないようにも思うのだ。

鈴木選手の表現力も、国際大会ではまだまだ点が出てこないが、際立ったものがあると思う。フリーの最後のステップのなんと生き生きとしていること。あれだけビビットに踊れる選手は世界広しといえど、そうはいない。オリンピックでは、プレッシャーもないことだし、思いっきり伸び伸びと演技してほしい。

中野選手は、昨季からルッツとフリップが安定していなかった。ルッツとフリップに対するエッジ違反と回転不足。この課題が、全日本でも克服されていない。今回のフリーでは3つのジャンプに「!」マークで減点。こういう細かいところで違反を取られるとGOEで減点され(あるいは加点が抑えられ)、技術点が伸びなくなってしまう。ただ、後半にもってくるとファーストジャンプが回転不足になりやすい3F+2Tは前半に決めて、昨季までしばしば取られたダウングレードを防いだのはりっぱだと思う。とにかく、中野選手のやるべきことは、トリプルアクセルでも3回転+3回転でもなく、ルッツとフリップの安定。これだけだったのだ。

村主選手の課題も3回転+3回転ではなく、ルッツの矯正、ルッツの矯正、ルッツの矯正。これだけだったのだ。昨シーズンの全日本でMizumizuを激怒させた、村主選手のwrong edgeに対する甘い採点。あのようなことをしても決して選手のためにはならない。今回ショートのルッツで村主選手は転倒したが、これは以前から指摘しているwrong edgeをかかえる選手の典型。つまり、エッジを気にして、踏み込みの間に不正エッジに入ってしまう前に離氷しようとするから、回転が足りなくなる。この現象はウィアー選手のフリップでしばしば見られた。男子のトップ選手でも、そうやって跳び急ぐと回転が足りなくなる。村主選手も回りきれずに降りてきて、最悪のダウングレード転倒になってしまった。

オリンピックシーズンに短期間でコーチを替えるのもよくない。新しいコーチは、どうしても選手のかかえる根深い問題に気づくのが遅れがちだからだ。ルッツの矯正は年齢的に難しかったかもしれないが、これまでできていない高難度の連続ジャンプに挑戦するよりは、ずっとうまく行く可能性が高かったはずだし、実際エッジ自体はかなり直ってきている。村主選手はケガがあったようだが、ケガも無理な挑戦が引き金になることが多い。

ただ、今回はジャンプ構成をきちんと国際大会基準にして、3サルコウも入れて、しかも成功させた(今季はなかなか成功させられなかったジャンプだ)。今季崩れてしまったジャンプを立て直せなかったのは、いかにも残念だが、これも人生。無念というなら、1度も五輪に出ることが出来なかった中野選手のほうが無念だろう。

村主選手の実績を世間が無視して、荒川静香ばかりを持ち上げても、Mizumizuは忘れるつもりはない。日本女子冬の時代に、1人でフィギュア界を牽引していたのは荒川選手ではない。村主選手だったのだ。ことにベートーベンの「月光」は、今でも心に残っている。蒼白い月の光が一瞬氷の上に差してくるような表現力。「ハートで滑る」といい続けた村主選手にしか作れない世界だった。

安藤選手は、今回もずいぶん体調が悪そうに見えた。単なる疲労であればいいのだが。ファイナルのときは右ひざを痛めていたというし、コンディションが心配だ。それにしても、安藤選手の衣装は毎回凄い・・・。資金が潤沢なんでしょうか?(苦笑)

浅田選手は、自爆や転倒がなかったのが最大の収穫。だが、問題は連続ジャンプにしたときのダウングレードだ。
今回は、ショート 3A<+2T
フリー
2A+2T<
3F+2Lo<+2Lo<
とダウングレードを取られた。

判定は厳しいと思うが、オリンピックではもっと厳しくされるかもしれない。ダウングレードされるところは決まっているのに、毎回同じことをして、ほとんどお約束のように取られている。これは「乗り越える」より「構成を変える」という方向で考えたほうがいいのだが、浅田選手という人は、ジャンプの組み換えが苦手な選手で、何がなんでも正面突破しようとする。

ここまで何度も試みてなかなかうまく行かない。後半の3Fからの3連続ジャンプなど、むしろ単独のほうが加点がついて点が出るように思う。あるいは連続も2回なら回りきれるのかもしれない。ショートの単独フリップは、どこからどう見ても文句をつようがなく、実際に加点がかなりついた。

自分では降りているつもりでも思わぬところでダウングレードされる。それが今の採点だ。ダウングレードされがちなジャンプは、可能なら避けるほうがいい。「基礎点重視」ではなく、「減点回避重視」のほうが、今のルールでは強い。

フリーでは2つともフリップを連続にするのではなく、1つを単独にして、そのかわり3Tから2Aへのシーケンス、あるいは2A+2Aのシーケンスへの連続ジャンプの組み換えというのは、考えられないのだろうか(←くどい?)。セカンドに3トゥループや3ループをつけるのは、ダウングレード判定が厳しくなっている状況では、あまりに危険なので、シーケンス作戦が今からでも間に合う最も現実的な戦略だと思うのだが。今回はフリーでトリプルアクセルを1回にした。あれを2度入れて体力を使うと、後半の3フリップも低くなってダウングレードされてしまう可能性が高いように思う。

3A+2Tの3Aのダウングレードは、もしかすると3A+3Tを練習しているうちにファーストジャンプをきっちり降りるという意識が弱くなったのかもしれない。フリーの単独のトリプルアクセルは認定されているのだから、単独なら降りられると見ていい。あとは、回りきってセカンドにつなげるという意識がもてるかどうか。去年成功させているので、不可能ではないと思う。とにかく、3A+3Tはもう練習でも避けるべきだ。3Aを回りきって2Tにつなげる。ショートの課題はそこ。高いレベルの連続ジャンプに挑戦してはいけない。そうすると、また足元の小さな欠点克服ができなくなってしまう。

ダウングレード判定は、甘く見てはいけない。キム・ヨナ選手にしても、本当のところ、セカンドの3トゥループが回りきれているのか、Mizumizuはかなり懐疑的だ。またフリーではルッツやサルコウが不足気味になることがしばしばある。女子の3回転ジャンプというのは、だいたいがギリギリなのだ。キム選手だけが絶対的な例外だというのは、ただの思い込みに過ぎない。

ダウングレード判定は、スペシャリストによっても違ってくる。キム選手に対して、昨シーズン初めてフリップのエッジにE判定をしたのも、今季のファイナルでセカンドの3トゥループをついに(?)ダウングレードしたのも、スイスの同じ審判だ。ファイナルのショートでキム選手がフリップのエッジに神経質になり(と荒川静香が言っていた)、失敗したのも、「あのジャッジ」という警戒感があったのかもしれない。

選手にとって判定に不公平感が生じるのはどうしようもない。キム選手のように選手本人があからさまにジャッジングを批判するのはスポーツマンシップに反すると思うが、あの陣営に今さらそんなことを言っても仕方がない。とにかく、日本選手としてできることは、「自分がダウングレードを取られないようにすること」だ。

だがしかし、全日本女子の演技は、みな素晴らしかった。ことに、ショートでの浅田選手の可憐さと上品さは、命の洗濯をさせてもらうかのよう。まさに、氷上に咲いた一輪のピンクのバラ。衣装は目を惹く胸元のディテール――花形の髪飾りとお揃い――に加え、スパンコールを散りばめた繊細なレース使い。あれはほっそりとしたウエストをもった女性にしか似合わない。初舞踏会の初々しさと可愛らしさ、胸はずませる躍動感が、どこまでもエレガントに表現できていた。

細い選手は往々にして体力がないが、浅田選手のスタミナは群を抜いている。動作が限りなく華麗で、どの瞬間をどう切り取っても美しい。しかも、これまでなかなか取れなかったスパイラルでのレベル4、ロシア杯に続いてレイバックスピンでのレベル4を取った。もちろんフリーの荘厳な世界も感動的だ。

「アウェイ」で戦うバンクーバー。ショートもフリーもオーケストラでジャンジャン音を鳴らすことで、タラソワは浅田選手を守ろうとしている。フリーは繊細なピアノ曲にしてもよかったはずなのに、北米で観客からさんざん冷遇されたロシア選手を見ているタラソワは、音楽の壁を作ることで、浅田選手が自分の表現する世界に集中しやすいようにしたのだ。

「下から湧き上がってくるような感動」を、今回はファンの皆さんも味わえたのではないか。





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最終更新日  2010.01.03 03:41:19



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