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カテゴリ:Gourmet (Sweets)
東京で最中の美味しい店といえば、皇室御用達の虎屋、銀座の空也、吉祥寺の小さざ・・・などが思い浮かぶが、本郷の壷屋もはずせない。 寛永年間に町民が開いた最初の江戸根元菓子店で、明治維新の折、お世話になった徳川家の終焉とともに一度は暖簾を下ろす決意をしたものの、勝海舟から、「市民が食べたいと言っているから続けるように」と言われて、店を再開したのだという。 保存料の類が一切入っていないので、日もちは3~4日。一口食べて、「美味しい~!」と叫ぶようなインパクトはないが、餡の柔らかな甘さがクセになり、何度でもまた食べたくなる味。 こちらが名物の「壷最中」。薄手の皮の中に、はみださんばかりの(というか、実際にはみだしている)餡が入っている。 白が漉し餡で、茶色がつぶ餡。茶色の皮のほうは、かすかにおこげの風味があって、何と言うか野性的な最中だ。 亡父もここの最中が好きで、亡くなる2ヶ月前だったか、オランダ人相手のパーティに持参していた。 同行しなかったので、オランダ人の反応は知らないのだが(父によれば、「好評だった」というのだが・・・ホントかなぁ・・・)、昔はガイジンが苦手な日本の甘味といえば、餡子が相場だった。今はみな少しは食べられるようになったのだろうか。 普通の円い最中もある。皮は壷形の最中より厚めで、餡の量も少ない。普通はつぶ餡を好むMizumizuなのだが、壷屋の最中に関しては、上品な漉し餡のほうが気に入っている。 こちらはどっしりした壷最中と対照的に、とても小さな「壷壷最中」。創業当時の品物を再現したのだとか。皮と餡のバランスで言ったら、個人的にはMizumizuはこれが一番好きかもしれない。サイズが小さいのもいい。 本場・上方の洗練された色とりどりの和菓子に比べると、上菓子(東京の和菓子)はどうしても見劣りするように思う。壷屋の上菓子も、一見ルックスが素朴すぎて、「大丈夫か?」と思わないでもないのだが、実際に口にしてみると、あまりに自然でとてもやさしい味。 写真は「鶴」だそうな・・・ うさぎかと思った(笑)。中の白餡の風味は、何度でもリピートしたくなる。これぞ手作り。 きんとん(と店の人は言っている)の下に餡入りの求肥餅が隠れている、凝った上菓子。これもMizumizuお気に入り。 この本郷の壷屋は、かなり「知る人ぞ知る」店だと思っていたので、ちょくちょくフランスの美味しいものネタを仕入れに(仕入れているだけでいっこうに行けないのだが)伺っているPARIS+ANTIQUEさんのブログに突然、ここの最中の写真が現れたときは、心から驚いた。 もともとこちらのブログと縁が出来たのは、「タルトタタン発祥の町ラモット・ブーヴロン」を個人で訪ねたあと、「こんなフランスのド田舎までわざわざ来る物好きって、きっと私だけだろうなぁ・・・」と思ってブログ検索してみたところ、パリから電車を乗り継いで訪ねただけでなく、タルトタタンの食べ歩きまでしたというド根性エントリーを見てビックリしたのがきっかけ。Mizumizuがホールでタルトタタンを買った、「Jack Lejarre(ジャック・ルジャル)」というお菓子屋も売り子のおば様つきで写真が載っていた。 なぜか不思議と嗜好が合い、「ヴェネチア一のレストランを紹介します」とあって、どこを選んだのかな? と思ったら、なんとMizumizuが一番贔屓にしている「マドンナ」だった。ヴェネチアには他にも高級レストランがあるのだが、値段がお手ごろで美味しいこのトラットリアが気に入って、いつもヴェネチアを訪ねると入り浸りになる。 ヴァポレットを降りたらリアルト橋をわたって、左へ。そして最初の角を右へ(ここの路地をふさぐように他店がテーブルを出していて、マドンナを探してウロウロしている観光客を強引に座らせ、ぼったくるらしい)。薄暗い路地の左にある、いつも混んでるマドンナ。しばらく行っていないが、贔屓だった店が相変わらず美味しいと聞いて、嬉しい気分になった。 本郷の壷屋にしろ、ラモット・ブーヴロンのジャック・ルジャルにせよ、ヴェネチアのマドンナにせよ、店の規模は小さいが、時代の荒波を超えていけるだけの「強い翼」を持っている。 グローバル化が進む世界の中で、小さくしぶとく生き残るための知恵。奇をてらうのではなく基本に忠実に、「美味しい」と言われた味を落とさずに続けていく努力だ。 壷屋は本当に小さい店だ。知らなければ(いや、知っていても)うっかりしていたら通り過ぎてしまいそう。店の中も薄暗く、古っぽく、雑然としている。あえて店のしつらいにお金をかけないというのも、品質勝負の店ではいい選択かもしれない。
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最終更新日
2010.01.10 01:28:12
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