以前、リモージュ焼きのソーサーを直してもらった文京区の修理工房 六屋。
またも割れ物がでたので、修理してもらった。
こちらは急須のフタ。2つに割れたうえ細かい破片に分かれてしまった。製造元に問い合わせても、フタだけの在庫はないと言われたので六屋に持ち込んだ。
漆などを使って接着させたあと、金粉を蒔き、十分に乾燥させたあと、サンドペーパーで研いで表面を滑らかにするのだとか。金の線をさっと描いただけのようにも見えるが、実は手間も時間もかかっている。
要はこの部分だけ磁器ではなく蒔絵になるので、食洗器や乾燥器にかけない、漂白は最小限にしなくてはいけないなど、それなりの扱いが必要になるのだが、割れ目が模様のように見え、おもしろい味わいが出た。
こちらはヴェネチアで買ったガラスのコップ。食洗器にかけてるうちに、見事に3つに割れてしまった。通貨がリラで、物価の安かった時代のイタリアお土産で、たいして高いものではないし、捨ててしまおうかとも思ったのだが、小さな家族経営のガラス工房で、「誰が作ったの?」と聞いたら、「オレさ!」と自慢げに胸をそらせていた小柄な老人の姿が脳裏に蘇り、捨てるのがしのびなくなった。
あの年老いたガラス職人は、もしかしたらもうこの世にいないかも・・・ そんなことを思ったら、直せるものなら直して使ってみようと。
実はこちらのガラスのほうが六屋のご主人は確信なさげだった。「うまく接着しないかも・・・」と言うので、「ダメならダメでいいですよ」と答えた。
だが、できあがったものを見たら、非常にきれいに直っている。うまくつかなかったらそっと飾っておくだけにしようかと思ったコップが十分実用に耐える。もともと日常的に使うためのコップなので、さっそくそのお役目に戻った。
不況のせいか、六屋には地方からも多くの修理依頼が舞い込むのだという。愛着のあるモノを直しながら使う・・・ そんな気持ちを取り戻すことができたのが長引く不況のせいならば、それはそれで悪くない。