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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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ゴロワのブログ GAULOISES1111さん
Tomy's room Tomy1113さん
2011.04.13
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カテゴリ:Essay

キャサリン・サンソムという英国外交官夫人の著作に、「東京に暮らす」がある。日中戦争の直前まで日本で暮らし、教養人の女性としての視点で日本人の特性や生活習慣などを描いたエッセイだ。

彼女が例えば民俗学といった、特定の専門分野をもった学者でないことが、返ってこのエッセイを普遍的なものにしている。やや蔑視的な表現がないわけではないが、自分の中の差別意識を極力抑制して、曇りのない目で日本人を見つめ、温かい気持ちで理解しようと努めている。その姿勢がいい。

このエッセイを読むと、日本が失ってしまったものも数多いことに気づかされる。たとえば、子どもの養育に関するくだり。

赤ん坊が生まれてきて一番幸せな国は日本です。日本人は子どもをとても大切にしますから、子どもを虐待したり、子どもに対して罪を犯すということはめったにありません。

子どもはみんなから可愛がられ、あやされ、ほめられます。イギリスの赤ん坊のように早くから厳しくしつけられることはありません。

これを読むと、いったい「日本」とは、どこの国のことなのかと思う。確かに、Mizumizuの子どものころは、「子どもの虐待」などという言葉が聞かれることはなかった。実際に「なかった」のか、あるいは「隠されていた」部分が多いのかはわからないが、それにしたって、今のように親の酷い虐待が社会問題化することはなかった。「しつけ」と称して子どもを殺してしまうような親も(多分、ほとんど)いなかった。どちらかと言えば、子どもは確かに、みんな――他人も含めて――から可愛がられ、あやされていた。

これは日本人が失ってしまった最たるものの例だろう。今の日本が子どもにとって幸福な国だとは到底思えない。

だが、不思議と「変わっていない」と思える部分も多いのだ。

たとえば日本人の礼儀正しさと自己抑制に、関東大震災がからんだエピソード。

日本人の礼儀正しさは、優雅な話し方やマナーのよさばかりではなく、他人との交際において利己的にならないということだからです。外国人だったら自分のことを色々と話しますが、日本人は自分のつまらない話をしては相手に悪いと考え、どんなに悲しい時でもそれには一切触れず、一般的な世間話しかしません。以前、ある日本人の紳士が私に「どんな宝物をお持ちですか、ご主人は日本に長く住んでいらっしゃるから、美しい屏風を始め色々な美術品を収集なされたでしょう」と尋ねたことがありました。私は主人が収集したもののほとんどが、1923年の大震災でやけてしまったとこぼしました。私があれも、これも、それも・・・と嘆くのを紳士は同情しながら聞いてくれました。続いて私が、「その時は東京にいらっしゃいましたか、失われたものはありませんか」と尋ねました。紳士は微笑を浮かべながら「妻子をなくしました」と答えました。私は愕然とし、懸命に紳士を慰めようとしましたが、彼の方は、私たちが楽しい話をしているかのように微笑み続けていました。実際、紳士は悲しみに浸っているわけにはいかず、思いもかけぬ不幸を知って動揺した外国人女性の気持ちをなんとか鎮めなくてはならなかったのです。それで彼は日本人の例の微笑を続けていたのでした。

悪意をもった外国人なら、「妻子をなくした話を、薄笑いを浮かべながらする不気味な日本人」「悲しくないのか」などと言いそうなところだ。

もちろん、悲しいのだ。紳士の無念さは日本人にはよくわかる。彼はそれを自分自身で乗り越え、少なくとも乗り越えることを自分に課し、微笑を浮かべながらおだやかに話したのだろう。美術品を失うより、妻や子をなくすほうがよほど重大な悲劇だ。だが、彼は問われるまで、その話はしなかった。

そしてサンソムも、自分の個人的な感情よりも相手への配慮を優先させる日本人の行動を驚きとともに、一種の敬意をもって描写している。

2011年の未曾有の大災害のあと、世界を驚かせた被災者の忍耐強さや秩序正しさは、1920~30年代当時とまったく同じではないにせよ、日本人の美徳意識が、依然として受け継がれていることを示している。

そして、サンソムは日本人特有のやさしさと辛抱強さを形成したものは何かということについて、次のように考察している。

日本人は自然を愛するだけではなく、私たちとは違って、今でも自然の中に生きています。だからといって日本人の中に旺盛な精神の持ち主があまりいないというわけではありません。ここ半世紀の間に彼らのやりとげたことの一片でも知る人は、その逆が正しいということを知っています。

日本人はいつでも辛抱強く、しかも楽しそうにその時々の状況を受け容れています。それにはもちろん気候の影響もあるでしょう。(中略)冬を除くと湿度がとても高いということは、外国人だけでなく、日本人にとってもつらいことです。文字通り「天気にやられない」ためには、健康な人でも強い意志の力を持たなくてはなりません。ここで東洋人特有の強い忍耐力が役立つのです。また、辛ければ辛いほど逆に笑おうという驚くべき態度は、おそらく、神経を鎮め、大気の異常な重みが神経をいら立たせるのを少しでも和らげようとする日本人の生活の知恵なのでしょう。

さらには、多湿の空気だけでは不十分というかのように、地震がかなり頻繁に発生し、中には人々が外に逃げ出すような大きなものもあります。しかし何といっても腹立たしいのは台風で、夏の間いろいろな強度のものが日本の一部を襲います。(中略)

このように日本人が遭遇する空と地と海からのかなり頻繁な危険と不安を考えると、彼らが意識的にも無意識的にも、かなり独特な性格を作り出さなくてはならなかったことが理解できます。たとえ怒りっぽく興奮しやすい国民であったとしても、そういう性格をあまり露骨に出すことはおそらく許されないでしょう。台風の時に怒っていたらとんでもないことになりますから。優しい手が日本人の頭の上にかざされていると思うことがあります。このことが正に日本文化の真髄かもしれません。日本人も、意識的にせよ無意識的にせよ、そう望んでおり、またそう望まなくてはならないのです。


 【中古】文庫 東京に暮らす-1928~1936-【10p12Apr11】【画】






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最終更新日  2011.04.13 17:22:48



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