子どものころ父親がよくドイツ菓子をお土産に買ってきてくれたせいか、一番初めに覚えた洋菓子の名前が「バウムクーヘン」だった気がする。
子どものころは周囲の砂糖層が好きで、生地の部分はさほどでもなかった。今は、違う。
バウムクーヘンは、日本のカステラのようなポジションのドイツ菓子というイメージがある。味も店によって、劇的にではないが、微妙に違う。
Mizumizuにとって、日本で一番、ドイツを感じさせてくれるバウムクーヘンを作っているのが、世田谷区桜新町にあるヴィヨン。
香料の使い方が「ドイツ」なのだ。ヴィヨンのバウムクーヘンの強めの香料を嗅ぐと、ドイツで食べたお菓子に記憶がつながっていく。特定のお菓子ではない。「ドイツ」と聞いて思い出すお菓子の香りというものがあり、それがヴィヨンのバウムクーヘンから漂ってくる。
生地のしっとりした口当たりも好みだ。素朴なお菓子ゆえ、生地の風合いや甘さの具合といった微妙なところで好みが決まってくるところも、カステラに似ている気がする。
ヴィヨンのバウムクーヘンの決め手は、なんといってもこの香料。たぶん、慣れない人には鼻につくかもしれない。だが、慣れるにしたがってやみつきになり、しばらくするとまた食べたくなる。そんな魅力がある。
「ヴィヨネット」という、立体的なデザインのバウムクーヘンに果物のゼリーを入れたオリジナル商品もあるが、Mizumizuはオーソドックスなバウムクーヘンを好んでいる。
桜新町はMizumizuの家から近くはないのだが、しばらくすると食べたくなって、わざわざクルマで出かけて行く。ドイツのお菓子の香りを嗅ぐために。