リヨン(フランス)で出会った、ベネズエラ産カカオを使ったシンプルなチョコレートの魅惑については、過去何度か書いてきた(
こちらの記事参照)。
東京でもことあるごとに、極薄円形のベネズエラ産カカオを使ったチョコレートを探していたのだが、なんとなんと、東京では見つからなかったそれに非常に近いものを九州の湯布院で見つけたのだ。
Pロールを製造・販売しているMURATAのショップ。名前は茶葉ショコラ。ショコラティエの名前としては、TEOMURATAを名乗っている。
Pロールは、街中のB-speakという店でしか買えないが、このショコラは街外れの山の中腹にあるホテル近くのショップでも、B-speakでも、どちらでも買える。
500円玉をさらに薄く広げた伸ばしたようなこのカタチ、まさにリヨンの街角で出会った「あの」ショコラにそっくり。
碾茶(てんちゃ)、玉露、朝露の3種類があり、このうちホワイトチョコレートの碾茶と玉露にベネズエラ産のカカオが使われている。
小ぶりの抹茶棗の中に、1枚1枚和紙にくるんで売られている茶葉ショコラ。過剰包装にも見えるが、これならば、薄くて繊細なチョコレートも割れず、香りも逃げない。紙包を開いて、まずは、かぐわしい希少なベネズエラ産カカオの香りを楽しむ。
リヨンで食べたチョコレートはカカオそのものの香りと味を前面に出した、極限までシンプルなものだったが、MURATAの茶葉ショコラは、名前のとおり、星野村で獲れた最高級茶葉をそのままチョコレートに混ぜ込んだ、オリジナリティあふれる逸品。
Mizumizuがもっとも好きなのは、ホワイトチョコレートを使った「碾茶(てんちゃ)」。碾茶とは抹茶の原料の呼称だとか。芳醇な油脂の香りに甘い口当たり、パリッと細い茶葉のほろ苦い風味・・・ 絶妙のバランスだ。
名高い星野村の玉露茶葉とベネズエラ産カカオの奇跡的なマリアージュが楽しめる「玉露」も捨てがたい。
カカオにベネズエラ産を使っていること、形が極薄の円形であることから、リヨンのショコラティエの影響があることは、恐らく間違いない。
東京でもなかなか見つからなかった、幻のチョコレートに最も近い逸品を、九州で見つけることになるとは、思ってもみなかった。
さらに、ただのコピーではなく、その土地の名産品を見事に合体させたところが凄い。チョコレートに茶葉を入れるなど、東京の感覚ではちょっと思いつかないように思う。
恐るべし、MURATAの贅沢希求パワー。これだけ贅沢なものを作り、価格もかなり(というか、相当)高いのに、ちゃんと売れている。湯布院を九州でも屈指の一大観光地にのしあげたのは、
MURATAのような一流を知る商売人の力が大きいのだろうと、ひそかに納得した東京人だった。