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アートオンアイス(チューリッヒ)の高橋大輔を見た。 You tubeで(爆)。 公式の映像ではないのでご紹介するのは差し控えるが、アップされて数日で再生回数が万単位で伸びている。大手の広告代理店が作った大手企業の宣伝動画でも、ヘタすると数か月で数百ぐらいの再生しかされないなんてこともあることを考えると、特にセンセーショナルな出来事でもなく、テレビで大々的に宣伝されているわけでもないショーの動画にこの再生回数は、なかなかたいしたものだ。 高橋大輔が出演するということで日本から追っかけツアーも組まれ、完売したという。さすがに高橋大輔、競技引退後の人気も関心も高いよう。 動画を見ると、今の若手中心の競技選手にはない、アーティスティックな技巧と表現がふんだんの演技で、ただただ見惚れてしまった。「高難度ジャンプ」の呪縛から解かれて氷上で踊る高橋大輔は、まさに日本の誇る不世出のスケーター。背が高いわけでもなく、スタイルが抜群にいいわけでもないのに、ひとたび滑り始めると衆目を一身に集める、抜群の輝きを放つ。 思えば、過去には町田選手も「高橋大輔のようにダンサブルな」演技をしていた時代があった。村上大介選手の今季のショートは、「フィギュアではこれアリですか?」と思わず突っ込みたくなるほど、まんま高橋大輔。羽生結弦を脅かすかもしれない才能をもった宇野昌磨選手も、上半身の動きなど、明らかに高橋大輔のゴーストに支配されている。 他の選手にこれほど多大な影響を与えながら、だが誰も高橋大輔にはなれない。彼に似ようとする選手は多くても、彼は誰にも似ていない。天才が天才たるゆえんだ。 これほど卓越した氷上のダンサーは、長いフィギュアスケートの歴史を紐解いても、そう簡単に見つからないだろう。いや、もしかしたら唯一無二と言っていいかもしれない。彼より華麗にスピンを回り、彼より伸びやかに滑り、彼より難しいステップを踏み、彼より美しいジャンプを跳ぶスケーターはいたかもしれない。だが、それらを総合して、さらに独特の個性を加味した「舞踏表現」にまで高め、競技から引退した今でも、何万円というチケット代や旅費を払ってもショーを見たいと多くのファンに思わせたスケーターはこれまでいなかったのではないか。 「ここでこんなに倒すか」と驚かされる深いエッジ遣いや、一陣のつむじ風のようにあっという間に過ぎていく華麗なステップといった、彼のもつ天才的なフィギュアスケートの技巧以外にも、人に見られることを好み、視線を浴びることでさらに生き生きとする生来の性質や、セクシーでありながらもどこか可愛らしく、コケティッシュなナルシズムを、ピタッと決まるカッコいいポーズと一緒に上手にふりまき、多くの人の心を虜にするエンターテイナーの素質は特筆すべきものだ。 衣装も挑戦的。流行のファッションスタイルをさりげなく取り入れながら、とことん派手で、時に奇抜な衣装を着てくれる。それがたまらなく似合っている。「プロ」になってさらに衣装は「自由」になったようだ。見ていて本当に楽しい。 そして、卓越した音楽性。「体の中から音楽が聞こえるような」とコーチに言わしめたこの特別な才能が、さらに高橋大輔を唯一無二のスケーターにしている。ショービジネスとしてのフィギュアスケートには、今やなくてはならない存在だ。高橋大輔の名前が載るのと載らないのでは、お客の入りが違うだろう、あまりにも。 そして、お客を惹きつけるためには、このキレのある華やいだパフォーマンスに加えて、パーティでの交流といったファンサービスも必要になってくるというわけだ。アートオンアイス(チューリッヒ)へのツアーはそうした「需要」をよく見込んだ企画になっていた。 こう見ていくと、やはり高橋大輔のこれからの道は、ビジネスとしてのアイスショーにこそあるように思う。エンターテイメントの世界は彼に向いているし、追っかけファンもちゃんといる。ダンスという肉体運動の芸術は、やはり肉体の衰えとともに滅びる運命で、その儚さも含めて、見るものを魅了する。 聞けば、語学習得のためにアメリカへわたるという高橋大輔。だが、それだけではなく、ニューヨークで華やかなショービジネスの世界にも触れてくるだろう。勉強も結構だが、彼には孤独は似合わないし、やはりこれだけの天才には、アイスショーを日本の新しいエンターテイメントとして根付かせ、花開かせる役を担ってほしいと思うのだ。天才だが近寄りがたい孤高の存在ではなく、見返りを期待せずに手を貸したくなるような雰囲気があるのも、彼の大きな強みだろう。 今の日本のアイスショーは、競技会で活躍している(あるいは過去に活躍した)スター選手を見に行くファンが多いといった印象がどうしても否めない。そうではなく、作品重視のエンターテイメントとしてのアイスショー。振付師の新作をアイスショーで見るような、その作品公開を楽しみに足を運ぶファンがいるような、他の舞踏芸術に匹敵するクオリティをもったアイスショー。もちろんそこには、作品を芸術に昇華できるスタースケーターが必要だ。 クリスマスにバレエ『くるみ割り人形』を観るのを恒例にしている人がいるように、あるいはお正月に『寅さん』を観に映画館に行くのが習慣だった人がいたように、「このシーズンはダイスケのショーを見に行く」というファンを増やして、日本のアイスショーをさらに上のレベルにまで引き上げる。 高橋大輔ならできるのではないか? 長いこと日本男子には手が届かなかったオリンピックのメダルを初めて手にし、数々のタイトルを携えて、日本のフィギュアスケートブームを浅田真央とともに牽引してきた「誰にも似ていない天才」になら。 【最大500円クーポン配布中!8日より利用開始!】2000days 過ごした日々が僕を進ませる/高橋大輔【後払いOK】【2500円以上送料無料】【05P08Feb15】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.02.10 03:52:22
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