|
カテゴリ:Essay
<昨日のエントリーから続く> やっと山口のドラッグストアやスーパーの店頭にトイレットペーパーが売り切れずに夕方まで残るようになった。山積みにされたトイレットペーパーを見ると、きのうまでどこに行っても夕方には売り切れていた、カラの棚の風景は幻だったのかと思うほど。 さて、新型コロナについて様々な論説が飛び交っているが、「はて?」と首をかしげたくなる記事が、天下のブルームバーグから出た。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-06/Q6R7BQT0AFB501 日本語でのタイトルは、「新型コロナ、致死率は季節性インフルエンザの10倍」というもの。分かりやすい棒グラフで他の感染症との致死率の比較が出ており、非常に客観的な分析という感じがする。 これがその棒グラフ。 今のところ新型コロナでの致死率は3.4%、推定で1%というのは、WHOが発表した数字(全体の致死率は3.8%、武漢5.8%、その他の地域では0.7%)と整合性もある。だからのこの棒グラフはとても客観的で(今のところ)正確だと言えるだろう。 このデータからルームバーグ・オピニオンのジャスティン・フォックス氏は、次のように警告している。「推計では、実際の致死率は1%。それでも季節性インフルエンザの10倍だ。17-18年の流行時に米国でインフルエンザで死亡した人は6万1099人。これを10倍してみれば、新型ウイルスの封じ込めがいかに重要かが分かってくる」。 一見とても論理的な結論のようだが、ちょっとおかしい。直感的にMizumizuはそう思った。特に赤文字にした部分。その「直感」は、これまで新型コロナ(COVID-19)で、どれくらいの死者が出たか、その実数が頭にあったからだ。 中国の数字は信頼できないかもしれないが、一応の目安として、新型コロナで亡くなった人がこれまでのところ(3月5日現在)中国で3042人、中国以外で333人。日本は検査態勢の不十分さが指摘されているのでこれまた正確とは言い切れないかもしれないが、それでも3月6日現在でクルーズ船6人、それ以外で6人。 案外「数」としては急激に増えているわけではない。ブルームバーグの記事は17-18年の最悪ともいえるインフルエンザ流行時の米国での死者数を挙げているが、そこまで酷い流行ではない年であっても、日本でも毎年インフルエンザ関連で約1万人が亡くなっている。 対して、コロナではまだクルーズ船という特殊環境での死者数を足しても12人だ。あるいは隠れたコロナ死者(たとえば死因は「肺炎」とされたが実際にはコロナだった人)がいるとしても、それなら院内感染が起こり、もっと騒ぎになっているはずだ。 「まだ」死者12人。なのに、この数字がこれから年間のインフルエンザ関連の死者数1万人を超えるだろうか? 何も対策しなければあり得るかもしれないが、何もしなくても新型コロナはそもそもがインフルよりは感染力が弱い。 毎日毎日、どこどこで感染者が確認されました、と報道するから、すごく感染しやすいような印象になっているが、実際には新型コロナはインフルエンザよりは感染しにくい。 https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%80%8C%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%81%BB%E3%81%A9%E4%BC%9D%E6%9F%93%E5%8A%9B%E9%AB%98%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8D-who%E8%A6%8B%E8%A7%A3/ar-BB10HDy0 テドロス氏は、インフルエンザも新型コロナウイルスも、呼吸器系の症状が出て飛沫(ひまつ)感染をする点が共通していると説明。そのうえで重要な違いとして、新型コロナウイルスについて「これまで得たデータからみると、インフルエンザほど効率よく感染はしない」と述べた。また、中国からWHOへ報告があったデータでは、症状のまったく出ない感染者は1%だと指摘した。 一方、季節性インフルエンザに比べ、新型コロナウイルスに感染すると「症状が重症化する患者がより多い」とし、新しいウイルスのため免疫を持つ人が少ないと説明した。世界的にみると、死亡率は感染者の3・4%に達するとした。季節性インフルエンザの死亡率は一般的に1%に遠く及ばないとし、新型コロナウイルスの致死率はより高いという。 テドロス氏は、こうした状況に加え、新型コロナウイルスの予防接種は開発途上にあるため、隔離などによる封じ込めに全力を注ぐべきだと訴えた。 テドロス氏も封じ込めの大切さを訴えている。ブルームバーグのフォックス氏もだ。だが、その理由は違う。フォックス氏の「17-18年の流行時に米国でインフルエンザで死亡した人は6万1099人。これを10倍してみれば」の言い方は、「封じ込めないと60万人死ぬかもしれないから」ということだ。 日本なら、1万人インフルエンザで死ぬ→コロナの致死率はインフルの10倍→10万人死ぬぞ! ということになる。「まだ」6人なのに? フォックス氏の結論は、インフルエンザの感染力と新型コロナの感染力が同じなら成り立つが、そもそも感染力が違うのだから、成り立ちようがない。 あるデータを出し、その客観性だけで、他のファクターを無視した結論を導き出した悪い例だ。 例えば、通称「スペイン風邪(風邪ではなくインフルエンザだが)」の死者数は、新型コロナの比ではない。ウィキによれば1918年から1919年にかけて全世界での死者数は5,000万~1億人。日本では人口5,500万人に対し39万人が死亡。 新型コロナは、「まだ」3000人台。最凶のインフルエンザ「スペイン風邪」とは、比較にすらならない。まさに「桁違い」だ。 しかも新型コロナの感染力には明らかな地域差があり、武漢のように感染爆発が起こる地域とそうでない地域の差がはっきりしている。 いっそのこと、1日にインフルエンザ関連で亡くなっている人が何人、新型コロナで亡くなってる人が何人、と比較して報道されれば、案外新型コロナが一部で言われているほど致命的な流行病でないことが逆にハッキリするかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.03.07 01:05:50
[Essay] カテゴリの最新記事
|