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高橋大輔選手のアイスダンス転向でにわかにメディアの注目が集まったのが、去年。正直、昨季の段階では、小松原組とのレベル差が大きすぎて、注目が全日本優勝カップルにさっぱり集まらないことに腹立たしささえ感じた。 だが、今季の「かなだい」組には、心底驚かされた。なんといってもRDの「ソーラン節」の革新性。ひと昔前なら、「ダサい」と若者に敬遠されたであろう日本の伝統的な楽曲が、えらくカッコよく、オシャレなモダンダンス曲になったことに衝撃を受けた。 振付が斬新、だから見ていて面白い。衣装のデザインは、特にカラーリングが極めてハイセンス。You tubeに上がったかなだいの「ソーラン節」に、リピが止まらない。コメントを読んでも同じように感じた人が多いらしく、これで間違いなくアイスダンスを見るファンが増えるだろう。 これまでアイスダンスは、シングルと抱き合わせで売らないとチケットがさばけないようなお寒い状態だった。ヨーロッパでは「かつて」は人気があったのだが、その人気もある時期を境に急降下し、どん底まで来て、下げ止まったかどうか、という状況。 だが、アイスダンスのもつ「成熟したスケートの魅力」「氷上の舞踏藝術としてのポテンシャル」は、元来、他の追随を許さないものだったはずだ。稀代の名振付師もアイスダンス出身者が多い。 そこに登場したのが、世界を魅了する氷上のダンサー、高橋大輔。彼を強く勧誘したのは、小松原組以前にはリード氏と組んで全日本覇者だったアイスダンサー村元哉中。メディアの注目先行だった昨シーズンとはガラリと変わり、その急速な「進化」ぶりには驚きを通り越す衝撃があった。もともと村元選手はリード選手と組んで、小松原組以上の成績をワールドでおさめているし、実力はお墨付き。課題は高橋選手にあったのだが、なんというか、天才はやはり天才なのだな、そうとしか言えない。 かなだいの魅力は、きわめてフェミニンな身体のラインを持ちながら、どこかしら、ひどく「漢」なものをもっている村元選手と、この1年で肉体改造と言えるぐらいの筋肉をまとい、きわめて男性的なボディを手に入れながら、どこかしら、守ってあげたいようなかわいらしさを失わない高橋選手の個性の相乗効果にある。 村元選手は、「ソーラン節」の始めでは巫女的な神秘性を強く印象づける。「ラ・バヤデール」の始まりの彼女のポーズは極めてたおやかでうっとりするほど美麗。ところが、演技に入ると、古典的な性差の境界がぼやけてくる。その意味で、このカップルはとても先進的なのだ。 対照的なのが「ココ」こと小松原美里/小松原尊組。とてもオーソドックスでアイスダンスの王道をいく演技。フリーの「SAYURI」では、「美里を美しくみせたい」と力強く抱負を語るちょ~ハンサムな夫。アメリカ出身ながら、日本語を話し、さらにルーツを日本古来の伝説にまでさかのぼることのできる「尊(たける)」という名を選ぶという知性派。おまけに伝統的なアメリカの好青年の典型で、常に前向きで努力を怠らない。 メディアの注目が結成2年目のライバルにばかり向く中で、くさりもせずに自分たちの課題を見つけ、1つ1つそれを克服しようと研鑽を積む姿は本当に尊敬に値する。多くの日本の若者にも見習ってほしい。 全日本でココ組が着たフリーの紫の衣装は素晴らしく美しかった。演技もNHK杯より確実に良かった。ただ…もう少し…かなだい組を突き放す点をフリーで出せていれば、五輪代表は確実だっただろう。勝ったとは言っても、かなだいとの点差はわずか。昨季のワールドの実績も19位と、やや期待外れだった。 といって、かなだいにも今回のRDに見るような不安定さがつきまとう。2人の個性はそれぞれ際立って素晴らしいが、アイスダンスのキモであるエフォートレスな(に見せる)一体感という意味ではココ組には及ばない。 選考結果は間もなく発表になるが、日本中が、どちらも応援したい気持ちでいるのではないか。 地域猫にご飯を贈る 地域猫にたっぷりご飯を贈る ネットショッピングをして地域猫活動(TNR活動)を応援する お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.12.26 20:06:51
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