拙ブログでも紹介したテレビアニメ『鉄腕アトム』の「ミドロが沼の巻」(
こちら)。
有難いことに、現在、手塚プロダクションが期間限定で、この(今となっては)お宝動画を公開してくれている。
https://www.youtube.com/watch?v=9lu5yUKfByM
併せて、この回を担当した「スタジオゼロ」(1963年5月設立)の鈴木伸一氏が語る当時の様子が面白すぎる。
https://www.youtube.com/watch?v=yS4oAjTeSzw
藤子不二雄、石森章太郎、つのだじろう…漫画界のレジェンドが、どれだけアニメーターとしてダメダメだったか。それぞれが描いたアトムを紹介してくれているのが嬉しい。
「みんなキャラクターのモデルシートなんか見ないの。頭の中に入ってるアトムで描いちゃう」
って…笑っちゃう。
今となっては笑っちゃう話だが、顔もバラバラ、プロポーションもバラバラのアトムを見た当時の手塚先生のお気持ちはいかばかりかと…と、また笑ってしまう。
Mizumizuイチオシのひどすぎるアトム画は、これ↓
眉毛が濃すぎるし、左目のまつ毛が眉毛の上に飛び出しちゃってる。まつ毛も太すぎてヘン。腕も太すぎて丸太みたい。もうメチャクチャ。どなたの仕業ですか? つのだじろう先生かな?
それにしても、やはり「誰も歩いたことのない道」を行く手塚治虫の影響力はマグマ級だ。鈴木伸一のトークを聞くと、おとぎ話を専門に作るアニメプロダクション(おとぎプロ)をやめて、SFや未来の話をアニメでやってみたいと思ったのだって、手塚アトムの大成功を見たからだろう。鈴木氏はそこに「アニメの未来」そして「自分の未来」を見たのだろう。
スタジオゼロに売れっ子漫画家たちが参加したのも、手塚先生を追ってのことに間違いない。
やがて漫画家たちは漫画の道に戻り、スタジオゼロで唯一本格的なアニメーション修行をしていた鈴木伸一はアニメーション作家として羽ばたく。現在、トキワ荘で特別企画展『
鈴木伸一のアニメーションづくりは楽しい!!』が開催中だ。
https://www.kanko-toshima.jp/?p=we-page-event-entry&event=529563&cat=18037&type=event
『手塚治虫とトキワ荘』(中川右介)によれば、スタジオゼロに参加するより前、1950年代の終わりごろに石森章太郎も、赤塚不二夫、長谷邦夫とともにトキワ荘でアニメづくりに挑戦している。手塚の名代として東映動画に派遣されたことで動画用紙やセルをたくさんもらった石森は、町の大工に木製三段のマルチプレーン式撮影台を作ってもらい、カメラも買った。
本業の合間に、石森が犬の原動画を描き、赤塚がセルにトレース。長谷邦夫が白黒のポスターカラーで彩色した。ところが1秒を描くのに何日もかかり、20秒作ったところでやめてしまったという。
やめてよかったのだ。この3人は3人とも、漫画の世界でゆるぎない地位を築くことになるのだから。
鈴木伸一 アニメと漫画と楽しい仲間 [ 鈴木 伸一 ]