Mizumizuのライフスタイル・ブログ
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2024年は手塚治虫『火の鳥』発表から70周年。それを記念する形で実現したのが、日本を代表する絵本作家、鈴木まもるとのコラボレーション。 火の鳥 いのちの物語/手塚治虫/鈴木まもる【3000円以上送料無料】 この絵本、あちこちのメディアで取り上げられてるので、内容については、そっちをお読みいただくとして。 Mizumizuは、あえてこの絵本の技法、そしてその画力の素晴らしさについて書きたい。絵本だから「絵」がキモになるはず。だが、不思議と絵本となると、絵そのものの魅力について語られることが少ないのはなぜなんだろう? まずは色彩構成が素晴らしい。表紙は黄色と赤色を配した、「非常に目立つ」構成。みんなが知ってるマクドナルドの配色もコレね。だから、本屋に並んでいても、パッと目立つはず。 そして、表紙に描かれた火の鳥(ニワトリじゃないよ)の線描の美しさ。特に首のたおやかな曲線が色っぽい。線描といいつつ、微妙に色が違い、しかも「パステル併用した?」と思わせるようなカスレに画力を感じる。サイン会で鈴木まもる先生に直接うかがったところ、画材はアクリルのみだという。 アクリル絵の具は使ったことのないMizumizu。水彩のような透明感は出ないが、水彩にはない力強さが出て、かつ、これだけ幅広い表現ができるのか。実は、スライドで制作過程を見たときは、遠目にはキャンバスに描いているように見えて、「え? もしかして油彩なの?」と思ったのだ。 答えはアクリルオンリーでしたとさ。 表紙は火の鳥の永遠の生命力を感じさせるような強い色彩構成だが、物語は漆黒の闇に浮かぶ青い地球から始まる。それから、海から山までを見開きに一挙に収めた、さまざまな生き物たち。 画面いっぱいに「その場所に住む生命」を描いて見せるのは、ちょっと「かこさとし」を思い出して懐かしくなった。図鑑的なかこさとしに対して鈴木まもるはもっと絵画的。個々の動物の表現を見ていくのも楽しいページ。 それから植物の発芽や動物の子育てをピックアップしたページが来て、次のページをめくると、バーンと飛び立つ火の鳥。ここから火の鳥の「再生」の物語が始まる。 「手塚先生は、幼鳥の火の鳥が炎の中から飛び立つ場面は描いても、そのあとを描いてなかった。だから、そのあとの物語を書こうと思った」と鈴木先生。 トークイベントでの発言だが、それを聞いて、「そーなのだ。描いてない物語をこちらが作れるようになってるのだ」と心の中で思いっきり頷く。萩尾望都は『新選組』を読んで、自分の中でいくつもの物語を作ったという。全部説明されていないからこそ、こちらの想像力をかきたてる。 単に「話が飛んでる。分からない」と思う読者もいるようで、浦沢直樹は、それを踏まえてなのだろう。「(手塚先生は)よくこんなに読者を信頼していると思う。普通ならもっと説明したくなる。この(手塚先生の)数コマで、普通の漫画家は20枚ぐらい描いちゃう」というようなことを言っていたが、描かれなかった物語を作れるか、作れないか。それが手塚マンガを好むか好まないかの分かれ目になるのかもしれない。 そして、手塚マンガの二次創作の難しさも実はここにある。自分で別のストーリーを作りたくなる。あるいは、複雑な手塚物語をもっとシンプルな展開にして分かりやすくしようとする。だが、たいていそれは(作り手が情熱をもって取り組んだとしても)凡庸なものになり、あげくガチ手塚から「つまらない。手塚作品の冒涜」などと酷評されるというオチになる。 絵についても、そう。それこそ漫画家でも浦沢直樹ぐらいの力量がなければ、「なにこの下手な絵」と言われ、お決まりの「手塚作品への冒涜」というレッテルが待っている。 鈴木まもるの『火の鳥』は、この2つのハードルを超えている。炎の中から再生した幼鳥の火の鳥(ここは手塚作品に描かれている)が、巣の中で憩い、成長し、周囲の動物たちに影響を与えていく。世界で唯一の(←自称)「鳥の巣研究家」鈴木まもるにしか描けないストーリーだ。 トークイベントで手塚るみ子氏が、「手塚(治虫)がこの絵本を見たら、『これ、アニメにしたいよね』と言い出しそう」と絶賛していたが、そう言われて、「確かに!」と思った。 巣の中で休む火の鳥の「静」と踊る火の鳥の「動」の描き分けも素晴らしい。 これは踊る火の鳥。 鳥の体のふくらみの柔らかなセクシーさ、脚の硬い質感と動きの自然さ――写実一辺倒ではないのに、よく感じが出てる。いや~、うまいな~。 だから、この『火の鳥』は、子供に買い与えるというだけのものではなく、絵の勉強をしたい人たちにも、強くオススメしたい本なのだ。 水彩画に近いにじみやカスレ、油彩に近いマットな重ね塗りなど、使われている技法は枚挙にいとまがない。 で、その鈴木まもる先生が手塚治虫原画を見ての感想が… http://blog.livedoor.jp/nestlabo4848/archives/58371708.html 会場には手塚先生の「火の鳥」の原画が展示されていました。 これが凄い! 今回手塚先生の生の原画を始めて見ましたが、ものすごく美しい。 ペンの線とか描き込みとか、「ウワ~~これが原画か!!!」と驚き、 舐めるように見てしまいました。 さすがの域を超えている。恐ろしい画力。 もっと見たい。 分かる分かる。Mizumizuも丸善丸ノ内本店の手塚治虫書店コーナーでアトムの原画を見たときは、びっくらしたのだ。ばらばらになったロボットの残骸を片膝をついて嘆くアトムがコマ割りなしで描かれているページで、V字になった背景の構図とか、凄すぎた。 こちらのエントリー https://plaza.rakuten.co.jp/mizumizu4329/diary/202404270000/ で書いたように、1950年代初頭に手塚をしのぐ人気を誇った福井英一は、手塚の画力の凄さに、おそらく最初に気づいた人間の一人なのだ。一流は一流を知る、ということ。 悪書追放運動が盛んになった時、やり玉にあがったのが手塚治虫で、それについて藤子不二雄A氏が、「読んでもいない人たちが非難していた」と、珍しく怒りをにじませて語っていたが、この稀代の才能を世の中がよってたかってつぶそうとしていた時代があったとは…。 ストーリーテラー手塚治虫についてはだいぶ理解が進んでるが、手塚治虫の画力評価については、まだまだだとMizumizuは思っている。パリのオークションで手塚原画に3500万の値段がついたと知って、「貴重な文化遺産の流出をどう食い止めるか」などと新聞に書かれ、慌てて動き出してるお上の姿は滑稽だ。 漫画同様、絵本の絵についても、まだまだ「子供向け」と思い込まれている風潮が強いが、現代美術がエログロや奇をてらった「わけの分からない」オブジェに流れている状況を見ると、絵本の中にこそ、正統派の「絵画の伝統」が受け継がれているのではないかと思うことも多い。 こちらは宝塚での鈴木まもるトークイベント会場の写真(始まる前)。 トークの前に、「落書き」と言って、手塚キャラを即興で描く鈴木まもる先生。たちまち人々が寄ってきてスマホをパチパチ。 だが…! ちょ…、これ、アトム? 描いてるの、このすんごい絵本を描いた鈴木まもる先生、本人だよね? 次に描いたヒョウタンツギも、なんか…(以下、自粛) 「昔はよく描いたんだけど、描けなくなっちゃった…」と、言い訳っぽいことを言いながら、いったん袖に引っ込み(資料を見に行ったか??)、三度目に描いた「オムカエデゴンス」のイラストはしっかりサマになっていた。 アトムはウォームアップでしたか? トークイベントは『火の鳥』のコンセプトから、制作過程のスケッチから、鳥の巣の話にまで及び、非常に面白かった。 COM連載当時の『火の鳥』を切って自家製の本にしている現物も見せていただいた。COM連載のって、アレですよね。浦沢直樹が、先を読みたくて読みたくて…でも、ある時から本屋に並ばなくなった…並ばない新刊を待って何度も本屋に通ったという… 手塚好きだった鈴木まもる少年は、『火の鳥』に登場する石舞台に触発されて、満天の星のもとの石舞台を想像して野宿覚悟で現地に足を運んだら、日が暮れてから雨が降りだしたという… いいエピソードだなあ。こういう知的好奇心を掻き立ててくれる漫画も減ってしまった。 「手塚先生と(鳥の)話をしたかったですね」という鈴木まもる先生の一言には実感がこもっていた。本当に…… 現在は、講演に展示イベントにと八面六臂の活躍の絵本作家・鈴木まもる。 東京の麻布台ヒルズでも5月19日にトーク&サイン会がある。 https://www.books-ogaki.co.jp/post/54455 このサインがまたアートなのだ。単に「xxxさんへ 鈴木まもる」とだけ書かれるのだろうと思っていたら、なんと! 初見の名前の文字を見て、すぐにそれを軽く図案化(茶色マーカーで塗りつぶした部分ね)。そこに文字と一体化した鳥や巣のイラストを細いペンでさらさらっと。えーー、あのしょーもない落書きアトムを描いたのと同じ人ですか? すごっ!
このサイン、いただく価値ありですよ。 明日の日曜日は麻布台ヒルズの大垣書店へGO!
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