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カテゴリ:手塚治虫
麻布台ヒルズの大垣書店で開催された、鈴木まもる 『火の鳥』原画展に行った(6/2で終了)。 アーチ形のおしゃれな入口の先に細長い展示スペース。広くはなかったが、その分至近距離で見られるのが嬉しい。 いや~、これはね、行って良かった。原画の色彩は想像以上に素晴らしい。最近は印刷技術が進んで、原画よりキレイに見えたりするのもあるのだが、鈴木まもるの微妙な色彩の美しさは、やはり印刷では再現しきれていない。 特に印象に残ったのは、上の写真の一番右の上に見えるブルーのページ。絵本はもっと暗めの色で、微妙なグラデーションが暗さの中に沈んでしまっている。原画はもう少しだけ全体的に明るく、動物たちの身体のラインがしっかりと見えた。 なにげに強烈だったのが、シンプルなこの作品。 絵本では裏表紙に使われてる絵。眠る火の鳥の羽と巣が一体化したかのよう。それがシンプルなで線で表現されているのだが、火の鳥の身体は簡略化されている分、生きている鳥のふくよかな量感がよく出ている。そして、巣の質感。一見すると短い線をラフに描いているようで、鳥の巣の「材料」の少し硬めの手触り、そして鳥の身体から出た熱を含んだ温かさが伝わってくるよう。 さらに、構図。鳥と巣以外は何もないのだが、上の空間が広いことで、広がっている空を想像させる。鳥と巣を包み込む。この絶妙な空気感…いやぁ、匠の技ですあ…。絵本ではこの空気感が出ていない。下に巻く帯と右上に印刷する定価などの文字とのバランスを考えて鳥を配置しているので、絵そのものは平面的になっている。 違いますねえ…絵本の絵と原画。 逆に原画を見て、印刷でもうまく再現できているなと思ったのが火の鳥の「目」の表情。表紙では人間の女性の蠱惑のまなざし…といった感じなのだが、飛び立つページの火の鳥の目は、野性的な鳥のそれ。こういう描き分けは、かなりの再現度だと再確認した。 いいなぁ、鈴木版火の鳥のお目目。手塚版火の鳥は、時にめちゃくちゃ「性悪な目」になるんですよ。ひっで~罰を人間に与えるときなんて、ね。 残念だったのは、展示されている原画数が少なかったこと。 麻布台ヒルズでの原画展は終了したが、次は6月26日~7月16日まで千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1Fのブックハウスで開催予定のよう。 7/5にトークショー(これは大人向け)、7/6にワークショップ(お子様とどうぞ)があるという。トークショーは前回のエントリーで書いたように宝塚で参加したが、面白かったですよ。最初は手塚るみ子氏との掛け合い(?)だが、ノってくると裸足で(なぜ? 手塚るみ子氏はちゃんと靴を履いていましたが)あっちこっち動きながら鳥の巣の話をする鈴木まもる画伯。 年代モノの自家製『火の鳥』(COM連載版)も見せてもらえるかも。 ちなみに、ボランティアで学校の子供たちに絵本の読み聞かせをやっている友人が、さっそく絵本『火の鳥』を購入して学校へ行ったところ、手塚治虫と聞いた先生のほうが食いついてきたとか。手塚治虫『火の鳥』、さすがに日本中に浸透している。 漫画『火の鳥』には早すぎる子供たちも、これからは絵本『火の鳥』がある。 いい時代です。 <『火の鳥 いのちの物語』原画展> 日時:2024年 6月 26日(水) ~ 7月 16日(火) +鈴木まもるさん&手塚るみ子さんトークショー (絵本「火の鳥 いのちの物語」とセットで3000円) +ワークショップ <火の鳥の巣をつくろう!> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.04 01:04:37
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